↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
時越想 〜時を越える想い〜  作者: はらぺこワンコ。
第八章 魔物の出現
PR
63/89

闇に包まれた村

-Main story- 8-1

月明かりのない空を閤央が南の村を目指して飛んでいた。

肌に触れる空気は冷たく、これからとんでもないことが起こる予兆のようだ。


「ゴウちゃん、魔物が出たってどんな状況なの。結界が破られた気配もないのに。」


『それが我々にもわからんのだ。村の何処からか突然姿を表してくるのだ。今、陸と狼鷲が村を見回っている。海にも宮中へ知らせをやるよう伝えてある。』


聖獣でもわからないことがあるのかと、私は恐怖を覚え身震いする。


『何、心配することはないぞ時雨。我々聖獣は、過酷な戦を経験している。みなと手を合わせればきっとなんとかなる。』


私の気持ちは閤央に筒抜けのようだった。


「ゴウちゃんに隠し事はできなさそうね。」


『そんな事はない。ただお前の反応がわかりやすいだけだ。まるで制時(せいじ)を見てるようだ。』


そう話す閤央の声はとても愉しげだった。


「制時って始祖様の?」


『あぁ、そうだ。お前は本当に奴とよく似ている。違うのは性別ぐらいだな。』


私には卓越した思考などないのに、神となった人物と私が似ているとはあまりにも恐れ多い事だった。


「さぁ、少し手前で降りるぞ。あとは地上を走っていく。」


前回と同じように少し開けた場所へと閤央は降り立った。

閤央はパッと狼の姿に変化すると、再び私を背に乗せ村めがけて走りだす。

閤央の背から辺りの様子をうかがうが、なんだか前に来た時と雰囲気が違っていた。


「ゴウちゃん、この辺りなんだか前と違う気がしない?」


私の言葉を受け、閤央は走りながら不思議そうに辺りを見渡していた。


『いや、私には前と同じに見えるが。そういえば、制時も戦の中でそんな事をたまに言ってた気もするな。その直感は大事にしろよ時雨。聖獣も万能ではないからな。我々が感じぬことが意外と手がかりになることがあるのだ。』


そう言うと閤央は徐々に走るスピードを緩めていく。


『さぁ、もう着くぞ。』


「えっ、着くてどこに?」


『何を言っている。村に決まっているだろう。』


「?」


どこに村が見えるのか?

辺りはまだ薄暗く、私には木々がぼんやりと見えているだけだった。


「ちょっと止まって、ゴウちゃん。」


『突然、どうした。』


閤央が走るのをやめ、その場で立ち止まった。

私は閤央の背から降りると周りをじっくりと見渡す。


「ねぇ、ゴウちゃん。ここから村は見えているの?」


『何を言っている。あそこに灯りが見えるだろう。』


閤央は、何もない暗闇の方を見ていた。


「ゴウちゃんが指している場所に灯りなんてない。私には暗闇にしか見えないの。私の目がおかしいのかな。」


閤央もどういう事だと頭を捻らせていた。


『何か引っかかるな。』


閤央は、前にもこんなことがあった気がするとぶつぶつ呟きながら、昔の記憶を辿っているようだった。

すると、木の葉がカサカサと擦れる音が聞こえてきた。

魔物かもしれないと呪札を手に持ち、音のする方へ眼を凝らし警戒する。

しかし、暗闇の中から現れたのは陸だった。


「へ?陸⁉︎驚かさないでよ。」


現れたのが魔物でなかった事にホッとする。


「なんだよ、こっち見てたんだから気づいてたんだろう?なんでそんなに驚くんだ。」


呪札まで構えている私の様子に陸は不思議そうにしていた。


「それよりそんな所で突っ立ってないで、早く村に入って魔物が出る原因を探してくれ。急に現れるんだ。何がどうなってるんだか、さっぱりわかんねぇ。」


どうやら陸にも村が見えているらしい。

閤央も村を認識できているのだからやはり私の眼がおかしいのだろうか。

いや、私はおかしくない。

根拠はないが、私の勘がそう言っている。


「ねぇ、陸。確認するけど、あなたは今村から出てきたのよね?」


陸は本格的に私がおかしくなってしまったのかと心配していた。


「おい、頭大丈夫か。ここからでも村の入り口が見えているだろう。」


村があるであろう暗闇を陸は指を指していた。


「陸、私にはこの辺り一帯闇に包まれているようにしか見えないのよ。」


私の言葉に陸も驚いているようだった。

すると今度は閤央が大きな唸り声をあげていた。


『そうだ。思いだしたぞ。』


急に吠えた閤央に陸はビクッと驚いていた。


「なんだよ、閤央。急にデカい声で吠えるなよ。びっくりしたぞ。んで、時雨、閤央はなんて言ってるよ?」


私は閤央が話す事を復唱していく。


『かつて制時が同じことを言っていたことがあったと思ってな。思い出していた所だ。辺りが闇に包まれていて見えにくい現象を制時は〝幻覚術”がかかっているとよく言っていた。』


幻覚術。初めて聞く言葉だった。

私にその術がかけられているというのだろうか。


「あぁーなんかそんな事、制時が言ってた気がすんなぁ。俺が発見して俺が命名したんだとかなんとか。魔人が使う技だとか言ってたような⁇」


陸も大昔の記憶を辿っているようだった。


「あいつの自慢話は長かったからな。テキトーに聞いてたからよく覚えてないな。閤央なんか思いだせるか?戦の時は、結構それで苦戦したって聞いたぜ。」


なにせ千年以上の前の話だ、閤央もなかなか思い出せないらしい。


『あぁ、確かに苦戦はしていた事は覚えている。なんせ、敵の姿が近くまでこないと認識できなかったからな。』


閤央は苦戦した時の事をおもいだし、苦虫を噛み潰したような表情をしていた。


「制時も闇が見えるっといっていたんだよな?まさか俺達の方が術をかけられてるってことか?でもなんで俺達は村が認識できて、時雨には村が見えないんだ?」


「それはおそらく時雨に半分魔族の血が流れているからだろう。」


背後から急に声が聞こえて驚く。

声の主を確かめる為に振り向くと、そこには想輝様がいたのだ。

私の驚いた顔を見て想輝様は困惑した表情を浮べていた。


「驚かせてしまったか。悪かった。」


「なんで想輝様がここに?」


突然現れた事にも驚いたが、夜も遅いというのに皇子という立場の想輝様がここにいる事にも驚きを隠せなかった。


「海斗から魔物が出たと連絡をもらってな。人間の地で起こった事だ。他人ごとではないから様子を見にきたのだ。」


想輝様は、様子を見にくるのは当たり前だという感じだった。


「んで、時雨の血と何が関係あるんだよ。」


陸が話を戻すために、想輝様に問いかけていた。


「昔、書物で読んだことがあるんだ。魔人が使う技の中には、我々人間や聖獣にさえ認識できない術が存在すると。」


想輝様がそう答えると、今後は考え込んでいた閤央が口を開いた。


『そうだ。思い出した。真眼(しんがん)だ。でかした想輝。時雨、呪札で真眼を作りだせ。真実を見抜く能力だ。』


また私の知らない言葉が出てきた。

あれだけ書物を読み漁っていたのに私の知らない事がまだあったことに少し劣等感が刺激される。


「真実を見通す能力を付与すればいいのね。」


その劣等感を振り払うように呪札を手に取り、閤央に言われた通りに念じようと構える。


「おいおい、ちょっと待て。2人だけで話を進めんなよ。俺たちにもわかりやすく説明をって、うわぁ。」


呪札を使う前に説明を求めてきた陸の方を見ると、遠くに動く影が見えた。


(魔物だ‼︎)


周りは暗闇だというのに、魔物はハッキリと捉える事が出来たのだ。

とても不思議な感覚だった。

私は呪札を構え直し、陸のいる方へ呪札を飛ばす。


「陸、しゃがんで!」


(魔物を燃やせ。)


念をこめた呪札は、魔物へと飛んでいくと、その体を炎で覆っていく。

魔物は苦しそうに一声なくと、動かなくなった。

どうやら力尽きたようだ。


「なんだ、何の声だ。何を燃やした!?なんで何もないところに呪札を投げたんだよ!?」


陸は若干パニックっていた。

彼には遠くで息絶えている魔物の姿が見えないらしい。


「遠くに魔物がいたの。想輝様のいう通り、私には魔族の血も流れているからみんなとは見える物が違うのかも。」


私が魔物を仕留めた事で、閤央が抱いていた推測が確信に変わったようだった。


『急げ時雨。我々に早く真眼を。』


「わかった。」


私は頷くと、3枚の呪札へと念を送る。


(真実を見抜く能力を与えよ!)


ピラピラっと動き出した呪札は、陸と閤央、そして想輝様の左目を隠すように張り付いた。


「なんだこれ。真っ暗じゃないか。村はどこいったよ。」


状況を理解できていない陸が慌てていた。

そんな陸を落ち着かせるため、想輝様が陸に声をかける。


「陸斗、落ち着け。一度左目を隠しみろ。そうすれば、ちゃんと村が見えるぞ。」


想輝様の言う通りに陸は左目をさっと隠した。


「はっ、なんだこれ。意味わかんねぇ。どっちがどっちなんだよ!」


閤央も陸をなだめようとしていた。


『落ちつけ陸。』


しかし陸は落ち着くどころか、閤央の唸りに再び魔物が出たと思い、戦闘体勢をとっていた。


『うーむ、私の言葉が通じないのは不便だな。時雨同士に呪札を扱えるか。』


「えぇ、できるわ。何をすればいい?」


呪札を取り出し構えの姿勢をとる。


「なら呪札に〝聖獣の耳“と念じろ。そうすれば奴らにも私の声がわかるようになるはずだ。」


閤央に言われた通りに念ずると、今度は陸と想輝様の左耳に呪札が張り付いた。


『説明をするから、落ち着け陸。どうだ。私の言ってる事がわかるだろう。』


閤央が再び陸に語りかけると、やっと陸は落ち着きを取り戻したようだ。


「すげー、なんだこれ。閤央の言ってることが理解できる。」


落ち着いたかと思えば、今度は閤央の言葉がわかるようになって陸は興奮していた。

この非常事態に陸はそうとう滅入っているのかもしれない。

先程からテンションがおかしくなっていて、いつもの陸とは様子が違っていた。


「ふむ、呪札というものは便利道具みたいなものなのか。」


私たちのやりとりを見ていた想輝様は、1人で納得したように呟いていた。


『想輝、誰でもポンポンと念じたものが扱えるわけではないぞ。時雨だから簡単に出来てるようにみえるだけだ。』


閤央に褒められ、私はむず痒さを感じてしまった。


「そうなのか。さすがは長様だな。この戦では時雨の術だよりになるな。さて、これからどうする閤央。」


意思疎通もスムーズにできるようになったので、今の状況説明とこの後の方針を決める事になった。


『今我々が見えている暗闇の方が現実の姿だ。魔物が急に出てきたように見えたのは、幻覚を見せる事で気配や姿を隠しているからだ。時雨が暗闇から人が急に出てくるように見えたのもそれが原因だろう。まずは狼鷲を見つて奴にも真眼もつけてやろう。そうすれば遠くの魔物も認識できるようになる。』


幻覚を見せられていても、村の建物や道は現実と変わらないようで、移動するには真眼を使わない方が進みやすいらしい。


「じぁ、いきましょうか。とは言っても、私は近寄らないと周りがよく見えないのよね。」


「なら私が誘導しよう。手を出すといい。」


そう言うと、想輝様はスッと私の前に手を差し出してきた。

差し出された手を見ていたら、ふっと市場での出来事を思い出してしまった。

あの時もはぐれないようにと手を繋いでくれていた。

色々と思い出していたら、自分の顔が赤くなっていくのを感じた。


(なんでこんな状況で思い出しちゃうの⁉︎)


落ち着きを取り戻す為、深呼吸をして気持ちを切り替える。


「ありがとうございます。でもこんな状況では手が塞がっていては動きにくいのでは?」


想輝様と手を繋がなくてもいいようにと最もそうな返事をする。

が、それは甘い考えだったようだ。


「片手が空いていれば何も問題ない。」


想輝様は、ほらっと自分の手をとるようにと促してきた。


「では、お言葉に甘えさせていただきます。」


私は観念し、おずおずと想輝様の手に自分の手を重ねた。

すると私の手はスッポリと想輝様の大きな手に包まれてしまった。

大きさの違いに、異性なのだと認識してしまい思わず心臓が高鳴った。


(落ちけ私、今は非常事態だ。目の前の事に集中するんだ。)


私の様子を知ってか知らずか、閤央は、〝準備は良いな。“と私の方を微笑ましく見ているようだった。


『では、行こう。』


閤央の合図で想輝様に手を引かれながら、私は村に足を踏み入れた。

変わらず遠くの方は闇に包まれ何があるかはわからなかったが、近くに行けば家屋が建っていたりと周りの様子がぼんやりとだか認識することができた。

私達は、狼鷲と魔物の発生源を探しながら町の中を歩いていく。

すると、私は少し先に一層濃い闇に包まれている場所を見つけた。


「ねぇ、あそこ。あそこだけ周りよりも闇が濃いわ。」


指を指してみんなへと知らせるが、濃さの違いはみんなには認識できていないようだった。

様子を見るために近くまで行くと、そこには狼鷲がいた。


『狼鷲、ここにいたか。時雨を連れてきた。これは、どうも幻覚術の可能性がある。』


閤央は狼鷲に状況を説明していた。


『幻覚術?はて、何処かできいたことがあるような、ないような。』


狼鷲は首を傾げていた。


『かつて私達が魔人との戦いで苦労させられたものだ。』


『おぉーそうだった。して、なぜそれがわかった。』


狼鷲はまだ状況を飲み込めていないようだ。


『時雨だ。時雨にはここが闇に包まれているように見えるらしい。』


『闇?こんなにはっきり周りが見えているのにか。』


狼鷲は周りをぐるりと見渡している。

夜でも明かりを灯してあるので見えないわけないだろうと狼鷲も不思議がっていた。


『時雨。やつにも真眼を。』


閤央の指示を受け、私は呪札を構える。

狼鷲は自分に向かって、呪札を構える私の姿を見て慌てていた。


『まて、何をする娘。また私の力を封印する気か。』


『封印などせんから大人しくしていろ。』


閤央が狼鷲をなだめている間に私は呪札に念を込めると、呪札は狼鷲の左目向けて飛んでいった。


『娘、私にいったい何をした‼︎』


狼鷲は驚いて瞑った眼を開くと驚いた表情をみせていた。


『…‼︎ これはなんと。お前にはこの闇が普通に見えたというのか。』


「えぇ。しかもここだけ、闇が酷く濃いの。」


私は頷き、ここに原因がありそうだと狼鷲に伝えた。


『やはりか。なんとなくだが、私もここが気になってはいてな。しばらくここを見張っていたのだ。しかし闇が見えるようになったとはいえ、私には娘ほど違いがよくわからんぞ。』


狼鷲はこの場所が怪しいと勘付いていたらしい。

さすがこの土地を守る聖獣だ。


「ちゃんと見えるかどうかわからないけど、呪札を中まで飛ばして様子を見てみるわ。」


新たな呪札を取り出し念を込める。


(私の目となり飛べ。)


呪札が映し出す光景が頭に流れ込んでくる。

辺りは闇に包まれている様子もなく、屋敷と綺麗に手入れされた庭の様子が確認できた。

呪札越しに見たからだろうか?

たぶんこの景色がみんなにみえてる光景なんだろう。

どうやら直接自分の目で確認しないとちゃんとした様子はわからなそうだった。


「普通のお屋敷のようね。闇に包まれた様子はなかった。陸、ここは誰の屋敷かわかる?」


「いやっ、知らないな。夜も遅いし、明日、向かいの家のやつに聞いて見るか。」


とりあえず行動をおこすなら明日だ。

私達は、狼鷲と陸、閤央と私と想輝様のグループにわかれ、交代で村を見回りながら明日に備えて休む事にしたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。