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募る思い

-Main story- 6-5

by Souki

俺が成人を迎えたころから、婚約の話がよく話題にのぼるようになっていた。

今までも婚約話はいくつかあったが、それとは比べものにならない量だ。

家臣の娘なんかが特に多い。

下心があけすけだ。

私利私欲にまみれた婚姻などまっぴらごめんだ。

そんな結婚をするぐらいなら独身でいる方がまだマシだ。

いい加減、自分の意見を持たない娘達に貴重な時間を取られるのが嫌になってきた。

お陰で雑務が溜まってきている。

執務室で溜まってる仕事を遅くまで片付ける日々が続き睡眠もまともに取れていなかった。


母上からは顔をあわせる度に早く婚約者を決めろといわれ、父上からは、なかなか決められないのは好いている娘がいるのかと詮索をうけている。


好きな女…。

疲れている時、何かあった時に会いたいと思うのは時雨だ。

宝珠を授けられた時の時雨の顔がいつまでも忘れられない。


(はぁ、どうしたものか。)


いっそ時雨を婚約者に選べば全て丸く収まるのだろうか。

だがあいつは今、里の復興で手一杯なはずだ。

俺と婚姻を結んだとして、その後あの里はどうなってしまうのだろうか。

そもそも時雨が俺のことを好いてくれているとは限らない。

煮え切らない気持ちを抱えながら、日々だけがすぎていく。


ある晩、越志が俺の自室を訪ねてきた。


「想輝ちょっといいか。相談事だ。」


越志が自室に、しかも、夜遅くに訪ねてくるなんて珍しい。


「あぁ、いいぞ。はいれ。」


「遠慮なく、おっじゃましまーす。」


陽気な越志が入ってくる。

たまに越志の陽気な部分が羨ましくなる時がある。


(今はとてもうっとうしく思うが。)


越志は楽しいそうに、紙をヒラヒラさせて、俺に見せつけながら部屋に入ってきた。


「昼間にな時雨から手紙が届いたぞ。」


時雨の名前に思わず反応してしまう。


「北の方に移動した住民達が困っているんだとよ。なんでも、野生の動物達に畑を荒らされて、収穫量が減って困ってるらしい。獲物の仕留め方と獣の捌きかたを知っている人物がいるなら紹介して欲しいって俺を頼ってきた。」


それを言いに来る為にわざわざ夜遅くにきたというのか。


「でな、山に慣れてる年頃の颯真くんを時雨の元に行かせようかと思ってるんだが、いいかなぁ?」


いつものおどけた調子で、俺の顔を覗きこんでくる。


「あぁ、別に構わない。用はそれだけか。それならさっさと出ていけ。そのニヤついた顔が不愉快だ。」


越志を睨みつける。


「あれっ?怒ってる?もしかして、俺嫉妬されてるのかなぁ⁇」


ヒラヒラさせていた紙を広げ、〝時雨から越志宛の手紙だぞー。想輝宛じゃないぞー。”っと俺に見せつけてくる。


「うっとおしいぞ、越志。」


きっと俺のケツを叩きに、わざとみせつけるようなことをしにきたんだろう。


「もう、素直じゃないぞ、想輝。いい加減気づいてんだろ自分の気持ち。時雨だって成人を迎えたんだ。そのうち結婚話も出てくるぞ。ウダウダしてると、ぽっと出の男にとられちまうぞ。」


越志は越志なりに俺を心配してくれているんだろう。

だが、今の俺に必要なのは、干渉ではない。

ゆっくりと考える為の時間が必要なのだ。


「そんなことは、わかってる。俺だって色々考えてるんだ。ほっといてくれ。」


思わず口調がキツくなる。


「へいへい、邪魔して悪かったよ。」


っと呆れた顔で越志は部屋から出て行った。


ドサっとベッドに横になる。


(なんで時雨は越志に手紙をだしたんだ。頼るなら俺でもよかったはずだ。)


この気持ちが嫉妬ってやつだろうか。

天井を眺めながら思考を巡らす。


(いや、ちがうか。俺だから手紙を出せないんだな。俺の手を煩わせないための時雨の気遣いなんだろう。)


時雨のそういった気遣いが今の俺には必要なのだ。

時雨と話がしたい。顔がみたい。

そう思うってことは、やはり、俺は時雨に惚れているんだろう。

きっと、子ども頃からずっとだ。

思わずため息が出てしまう。


(この歳になるまで気がつかないなんてな。)


でも今更だ。

あいつには、冷たく当たっていた時期もあったのだ。

最後にあった時はいい感じだったが、まだ俺に嫌われていると思っているかもしれない。

今でも目をつぶれば、時雨の顔が浮かんでくる。

首飾りにした宝珠に触れる。


(あいつが隣にいてくるたらどれだけ幸せだろうか。)


考えるだけで胸が苦しくなる。


(時雨にベタ惚れじゃないか。)


女々しい自分を嘲笑う。

越志のいう通り二の足を踏んでいては、他の男と結婚してしまうかもしれない。

それだけは、嫌だと俺は心の底から感じていた。

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