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私にできること。

Main story 6-3

翌朝、奈々美さんは、里を去っていった。

街で食料を買ってから村に戻るようだ。

荷物を持って山を登るのは大変だからと、陸を一緒に連れていかせようとしたが、


「街に友達がいるから大丈夫です。」


っと言って一人で行ってしまった。

彼女を見送ってから、私は執務室で越志さん宛の手紙を書く。


『越志さんへ

手紙を書くなんて初めてかもしれないですね。

越志さんにお願いがあり、今筆をとっています。

狩りや獣の処理を指南してくれるような人を知りませんでしょうか。私事なのですが、北の村の者達が獣に畑を荒らされて困っているようなのです。色々といざこざがありまして、私達が教えに行くよりも、第三者の方が良いと考えています。誰か心あたりがありましたら、教えていただけると幸いです。 時雨』


「こんな感じかな。空、よろしくね。」


一緒にいた空に手紙を預ける。


「連絡用の鳥に括り付けて送ってきますね。」


空は手紙を受けとると、執務室から出て行った。

執務室に1人になった私は、村人達の役にたつことは他にないだろうかと、並べられた本を眺めていた。

すると、ふっと薬草学の本が目にとまった。


(薬草なら知識があれば、女手も仕事としてやれるだろうか。)


本を手にとり、パラパラとページをめくる。

山の中で採れそうな薬草がいくつかあった。

これはいいかもしれないと思い、村人達が知識を得られるように、必要な情報を紙に書き写していくことにした。


「しぐれーお昼ごはんできたよー。」


微かに海の声が聞こえてきた。

かなり集中していたようで、いつの間にか昼になっていた。


(ずっと同じ姿勢をしてたから、身体が固まっちゃった。)


私は伸びをして、固まった身体をほぐし、ダイニングへと向かう。

書き写すのも大変な作業だ。

そんな事をぼんやりと思いながら昼食を食べていると、陸が話かけてきた。


「午前中、執務室にこもってたようだが、何か急ぎの事でもあったのか?」


陸がわざわざ聞いてくるのは珍しい事だった。

なぜそんな事をわざわざ聞いてきたのだろうか。


「急ぎの用ではないわ。村人達の役に立ちそうなことはないかなって考えてて。山の中だし、薬草の知識なんかあれば役に立つかと思って、詳細を紙に書き写していたの。」


そういえば、何も相談せずに突っ走った行動をしていたと気がついた。


(もしかしたら反対されるだろうか?)


「そうか。いやぁな、倉庫の片付けしてたら呪札が少なくてな。作らなくちゃいけないんだが、インクがないから作って欲しい。」


急ぎの用件でなければ呪札を作るのを手伝って欲しいと言う事だった。

呪札に使うインクは特殊な工程がある。

呪札を悪用されない為に、代々、長から長へと口頭で受け継がれている秘密事項だ。

札に陣を書きこむ時は、長が書くか、長の立ち合いの場でしかインクを使う事が許されていない。それは、仕斗も例外ではない。


「わかった。午後から作るよ。」


こちらも大事な仕事だ。

一つのことばかりに集中してはいられない。


「よろしく頼む。」


陸の用件が済むと、今度は空が口を開いた。


「時雨様、薬草とはまた良い所に着目しましたね。山の中には貴重な薬草も生えていますから、摘んで売りに出せば、いい値段で取引できるでしょう。」


空はそう微笑み、私の考えに賛同をしてくれた。


「そう?いい考えだと思ってくれる⁇よかった‼︎思いつきで書き写していたから、余計なことをしたのかと思ったところだったの。」


空がそう言ってくれるなら、心配は杞憂だったようだ。


「私も手が空いてる時に書き写すのを手伝います。」


空のその言葉を聞き、私はハッとした。


(そうだ、1人で全部やらなくてもいいんだった。)


「ありがとう。空。」


心強い仲間がいるのを思い出し、心が暖かくなるのを感じる。


「時雨、長の立場が様になってきたね♪」


やり取りを見ていた海が会話に入ってきた。

改めてそう言われると、なんだか気恥ずかしくなってくる。


「ぐるぅー」 『私の知っている薬草の知識も授けるぞ。』


「ゴウちゃんも手伝ってくれるの?ありがとう。」


みんなの支えがあれば、なんとか村の問題は解決できそうな気がしていた。

あとは、越志さんからの良い返事が届くのを願うのだった。

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