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お金の工面

Main story 6-2

私は、彼女を案内するため廊下を歩いていた。

ダイニングは、応接室とは反対側にあるので、玄関を横切って行かなければならない。

一旦、ダイニングの前を通り過ぎ、廊下の先にある炊事場へ向かう。


炊事場への扉は開け放たれていた。

炊事場の片隅には、閤央が狩ってきたシカの肉が並んでいた。

海が捌き、肉は食用に、皮は売るためになめしてあり、角は加工してから売る予定なのか隅に置かれていた。

頂いた命に感謝し、その死を無駄にせずに使えるところは全て使うのが私達のモットーだ。


「海、お客様用にもう1人分用意してくれる?」


廊下から炊事場を覗き込み、夕飯の準備をしている海に声をかける。


「ん?お客さん⁇」


海は料理の手を止め、私の方へ振り向く。


「えぇ、北の村から来た子なの。話の途中だったけどお腹が空いてしまったから、先に夕飯を頂こうかと思って。」


海に事情を話し、食事の追加分をお願いをする。


「んーわかった。準備するね。」


海は私から視線を移動させ、隣にいる彼女をじっとみていた。

彼女は海の視線に息を呑み、戸惑っていた。


「夕飯前にその子お風呂入らせてあげたら?山から来たなら土埃で汚れているだろうし。」


確かに、歩き通しなら汗もかいて気持ち悪いだろう。


「そうね、まだお湯も暖かいだろうし。さっこちらへ。」


海の言う通りだと思い、彼女を先に風呂場へ案内することにした。


「えっ、あの、そこまでは。悪いです。そうだ、汚れが気になる様でしたら、お食事の間、私は外で待っていますから‼︎お風呂までお借りするなんんて、滅相もない。」


と、奈々美さんはブンブンと頭を振りながら後退りしてしまった。


「なに言ってるの、お腹空いているのでしょう?とりあえず、体をさっぱりさせて、お腹を満たしてから話の続きをしましょう。」


それでも彼女はたじろいだままだった。


「私達もすぐに、〝はい、どうぞ。“っと、お金はだせないの。だから、話し合う時間をちょうだい。」


そう促すと、やっと彼女は渋々、頭を縦に振ってくれた。

私は、籠にタオルや着替えなどを揃へて、彼女へと手渡す。


「汚れた服は帰るときに着られるように洗うから、まとめてこの籠にいれておいてね。じぁ、ごゆっくり。」


彼女を風呂場へと案内した後、私はダイニングに集まっていた空と陸に、この件について相談することにした。


「村の畑が動物に荒らされて収穫量が少ないみたい。食べる物がなくて困っているそうよ。」


そこまでいうと、空が察し言葉を繋ぐ。


「お金の工面に来たと言う事ですね。」


私は頷くと、今度は陸が口を開く。


「はぁ?都合よくないか⁇あいつらお前に石を投げつけて、話もろくに聞かず、村から追い出したんだぞ‼︎」


「そうなんだけど…。でもこのまま追い返すのも違う気がして。」


陸の意見はごもっともだった。

どうしたものかと私は首を捻る。


「そうですねぇ。とりあえず今夜は遅いですし、一晩ここへ泊まって頂いて、明日ゆっくり考えましょうか。」


っと、空が案を出してくれた。

あれやこれ話をしていると、襖の向こうから遠慮気味な声が聞こえてきた。


「あっ、あのお風呂ありがとうございました。」


どうやら彼女がお風呂から出てきたようだ。


「どうぞ、入って。ご飯を頂きましょう。」


襖を開けて彼女を中へ通す。


「失礼します。うわぁ。」


すると、食事を前に彼女は目をキラキラとさせ、感嘆の声をあげていた。

彼女を交え食卓を囲み、手を合わせる。


「いただきます。」


彼女は〝美味しい、美味しい。”っと言いながらどんどん食べていく。

その様子をみて、村での食料事情がひっ迫していることが仕斗も理解できたようだった。


「ごちそうさまでした。ご馳走にになりましたし、ご迷惑でなければ、片付けのお手伝いさせてもらえませんか?」


その発言を聞き、海が私にどうするのかと視線を送ってきた。

彼女からの提案だを、無下にするのも野暮な気がして、私は頭を縦に振る。


「うん、わかった♪じぁ、お皿を下げて、こっちに持ってきてくれる?」


彼女が海の手伝いをしている間に、陸が応接室の方へ布団を敷きに行ってくれた。

時間ができたので、お茶を飲みながら、空と今後の話をして、片付けが終わるのを待つ。


「彼女の様子からみて、村での食料問題はひっ迫した状況の様ですね。」


片付けを手伝っている彼女をみながら、空が口を開く。


「うん、そうみたいね。今回は、何も言わずにお金を渡して帰らせた方がいいのかも。」


根本的な解決策にはなっていないが、体調が整わなければ、解決策を提示した所で意味はないだろう。


「布団敷き終わったぞ。」


布団を敷き終えた陸が戻ってきて、私の横に腰を下ろす。


「で、あの子どうすんだ。泊まらせるのはいいけど、何もなしに金渡すのもよくないだろ。」


陸は、頬杖をつきながら会話に入る。


「うん、そうなんだけどね。」


〝状況も状況だし、とりあえずお金を渡して帰らせようかと思う。“と、陸に伝える。


「んなもん、畑を荒らす動物を狩ればいいだけの話だろう。」


陸がさらりと解決策を提示する。


「最近まで彼らは、この土地で生活してたのです。狩りや獣の処理の仕方がわからないのですよ。」


空が陸を諭すが、


「じゃあ、狩りのやり方教えてやればいいじゃんかよ。」


陸が空に食い下がっていた。


「でも、私達が村に行った所でまた門前払いされそうなだけじゃない?」


私も会話に加わるが、


「焦ったいな。じぁ、どうすんだよ。」


と陸は苛立っていた。


「狩人を村に向かわせましょうか?こちらでやとった狩人に、指南をしてもらうのです。」


空が提案するが、


「どいつを雇うんだよ。そんなことしてくれる奇特なやつがいんのかよ。」


と、陸が再び空の発言に反論していた。


「じぁ、越志さんに聞いてみましょうか。」


私が、仲裁をしながら話を進めていると、海と奈々美さんが片付けを終えて戻ってきた。


「さっ、片付け終わったよ。人手があるとすぐ終わるねー。」


海の無邪気な明るさが、険悪な雰囲気をサッと和らげた。


「じぁ、奈々美さん、そちらに座ってください。話の続きをしましょうか。」


奈々美さんを対面に座らせる。

海はすでに陸の横へ腰を下ろしていた。


「奈々美さん。とりあえず今回は、お金を渡そうと思うの。」


それを聞き、彼女はホッと安堵した表情をみせた。


「でも、それは一時的に貸すだけよ。今後は、畑を荒らされないように対策を取ったり、お金を稼ぐ方法を考えて自分達でなんとかしなさい。」


あえて突き放すような言い方をする。

あくまで、私達は関与しないという態度の方が彼らは素直に聞くだろう。


「どれだけ、遅くなってもいいから、生活に余裕ができたら、必ずこのお金は返すこと。これでいいかしら?」


そう問えば、彼女は床に頭をつけ礼をした。


「ありがとうございます。必ず返します。これで食い繋ぐ事ができます。本当にありがとうございます。」


涙声で礼をする彼女をみて胸が苦しくなる。

なんとかして、彼からがお金を稼げるように対策をしなければならない。


「今日はもう遅いから、泊まって行って。先程通した部屋に布団を敷いておいたから。」


それを聞いた彼女は、再び頭を下げていた。


「何から何までありがとうございます。私達は貴方に酷いことをしたのに、こんなに親切にしてくださり、ありがとうの言葉では足りないくらい感謝しています。」


そして、彼女は頭をあげると、私に真剣な眼差しを向けた。


「村では、時雨様のお気持ちを疑ってしまい本当に申し訳ありませんでした。」


今度は、謝罪の言葉を告げると再び頭を下げた。


しんみりとした雰囲気を変える為、私は、パンっと手を叩き口を開く。


「さっ、今日は疲れたでしょう。ゆっくりおやすみください。」


話の区切りがついた所で、空が彼女を応接室へと連れていった。

部屋から出る際に彼女は私の方を向き、再び頭を下げていた。


とりあえずこの場はこれで上手く収めれただろうか。

襖が閉まるのを確認してから、私は、机へと突っ伏す。


「き、緊張したー。これでよかったのかな。」


思わず本音が漏れてしまう。


「お疲れ様でした。立派でしたよ、時雨様。」


戻ってきた空が微笑み、私を労ってくれた。


「時雨がそうするって決めたんなら、俺も文句は言わねーよ。」


陸の口は悪いが、私の決めた事に同意を示してくれたのは嬉しかった。


「いい娘みたいでよかったね♪さっ、僕達も寝よう。」


海の発言を最後に、皆、各々の部屋へと戻っていったのだった。


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