15
次に目を覚ましたのは、夏のお盆の時期だった。
どうやら、一ヶ月以上眠っていたらしい。
ショーケースの中から見渡してみると、一つだけ風景が変わっていた。
向かいにあった洋菓子店が、跡形もなく消えていたのだ。
不思議に思って他の和菓子たちに尋ねてみると、
私が意識を失った日の夜、店は突然閉められ、
翌朝には、もぬけの殻になっていたという。
夜遅く、黒いパーカーを着たフードの者たちが何人も出入りしていたという話も聞いた。
おそらく──お団子教の関係者だろう。
それ以上のことは、私には関係ない。
彼らがもう問題を起こさず、食べ物を粗末にしないのなら、それでいい。
……ただ一つ願うとすれば、
「邪神」などという歪んだ歴史は、そっと風化してくれるとありがたい。
そんなことを考えていると、お客さんが店にやってきた。
主人がいつものように、柔らかく応対している。
お客さんは、ゆっくりと和菓子を見渡しながら三色団子を指を差し、話を始めた。
──『去年亡くなった友達の日記に、ここの三色団子が好きだったって書いてあって……
お盆のお供えに、どうしても買っていきたかったんです』
その言葉に、主人は静かに頷いた。
少しだけ目を細め、嬉しそうな顔で団子を包む。
そして、一、二本おまけで多めに詰めると、お客さんに笑顔で手渡した。
「今後ともごひいきに」と言って。




