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私は団子の形から、黒く、禍々しい姿へと変貌した。
鋭く尖った爪、ぎらつく歯、うねる尻尾──
人間の二倍はあるだろうか。
……だが、それを見た教祖は恐れるどころか、
信者たちと共に満面の笑みを浮かべていた。
もう、呆れて頭が痛い。
『邪神様……よくぞお目覚めになられた!!』
教祖がそう叫ぶと、教団の全員が一斉に地面にひれ伏した。
こちらの意図など関係なく、自分たちの理想の存在に私を重ねている。
……返事次第では、もっと信仰を強めてしまいそうだ。
武力を使えば使ったで、またどこかで大げさに伝承され、
“恐怖の邪神”として祀られてしまう。
そうなればまた面倒なことになるのは目に見えている。
──どうしたものか、と考えていたその時。
『さぁ! 邪神様の力で、この世界を浄化を!!』
教祖が叫んだ。
──もう駄目だ。こいつら、話にならない。
少し乱暴になるが……やるしかない。
私は低く唸り声をあげると、
教祖の体を両手で掴み、そのまま壁に叩きつけた。
ぐうっ、と息を詰まらせる教祖。
それでも彼の顔には、驚きと喜びが入り混じっていた。
まったくもう……。
私は教祖の頭を掴み、耳元で囁く。
「……まずね、
食べ物を、粗末にするのは……やめてくれないかな。」
人間の言葉を喋る私に、教祖は一瞬固まった。
「それに、君たちが思ってるような“邪神”じゃないんだよ、私は。
争いなんて興味ない。私は人の幸福を、ただ願ってるだけなんだ。」
私は教祖をゆっくりと手放し、床に崩れ落ちた彼に目線を合わせて語りかけた。
「身体、痛くなかった? ごめんね。
本当は穏便に話すつもりだったんだけど……こうでもしないと聞いてくれなさそうだったから。」
教祖は頭を抱えながらも、私の話を真剣に聞いていた。
「君には……前を向いて生きてほしい。
邪神なんかに頼らなくても、君ならできるよ。
それと──
二度と、食べ物を粗末にしないこと。
……今後は、“良き神様”として語り継いでおくれ。」
教祖はしばらく黙っていたが、やがて小さく頷き、
信者たちに向き直ると、これからの在り方を説き始めた。
ようやく……通じたか。
安心とともに、私は静かにその場で力尽きた。
具現化していた黒き姿は溶けるように消え、
依代である三色団子へと戻っていく──




