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3番目の婚約解消 52 変わりゆく情勢

いつもありがとうございます!

話はまだまだ続きます!



 コン、コン…


「おや? 珍しい来客だね? 暫くは大人しくしているかと思ったけれど…」


 アンジェリアの王城の部屋に誰が来たのか、サスティアル王族のルルドは扉も開けずとも分かる。飄々とお茶を飲みながら、アンジェリアの様子を見ている。


【アンジェリア様、アマリア様が面会にいらっしゃいました…】


 ーーーーアマリア様? 予定には面会はなかったけれど…


 扉の向こうから、ロイターの戸惑う声が聞こえる。急な訪問とあって、どう対応すれば良いか、判断しかねているのが伝わる。


 エステリア国の公女であるアマリアと会うべきかどうか…、と、アンジェリアがチラリとルルドを見遣れば、ルルドはウンウンと賑やかに頷いている。


 ーーーールルドがいるし、安全よね…?


 面会を要請しているアマリアは、カイルの立太子の披露パーティ以降、アンジェリアとの接触を見るからに避けていた。

 パーティでの圧倒的なサスティアル王族の力を見せつけられて、数日間寝込んでいたらしい。


 ーーーーあのコーナー王女の捕縛劇をアマリア様が覗き見ていたなんて、ね


 あの時、レイモンドやシャーナ公爵はレオン派に属する派閥の人間を中心に避難をさせていた。もちろん、レオンの側妃候補のアマリアも、レイモンドからパーティ会場からの避難指示を受けていたはずなのだ。


 ーーーー勝手に、戻ってくるなんて、何を考えているの?


「ーアンジェリア様? いかがなされます?」


 アマリアの面会要請の返事をせず、考え込み出したアンジェリアの様子に、不安そうな顔でアンナが声をかけた。


「ーーそうだったわね。今回は、、この後、セライア姉様と会う予定なの。だから、日を改めてもらって」


「仰せのままに」


 アンジェリアが、アンナに指示を出すと、アンナは頭を下げ素直に部屋の外へ伝達に向かった。


 ーーーー初めて会ったときのように、従順な侍女に戻ったわね。それにしても、アマリア様の行動がよめないわ…。何故、レオンからも退避の指示があったのに、パーティ会場に戻ったのかしら…?


「リア? アマリア公女と何かあったのかい?」


 アンナの様子をじっと観察しながら、考え込んでいるアンジェリアに、ルルドは不思議そうに問いかけてきた。


「確かに、セシーはもうすぐガーランド王国に戻るけれど、、って、リア聞いてる?」


「ーーへ?」


 一向にルルドに返事を返さないアンジェリアの目の前で、ルルドが手を振って視線を遮った。


「もう! やっぱり聞いてなかったね? セシーに、面会するのかい? ギルは先にガーランド王国に大使用の馬車で戻ったから、僕がぱっぱと、転移魔法でセシーをガーランド王国まで送ろうか?」


 ルルドは少し呆れた顔でアンジェリアを見つめながら、とんでもない提案をしてきた。


「えっ? お姉さまを、転移魔法で送れるの? 前は、国の威厳がどうこう言っていたじゃない、」


「確かに、あの時は、ね? でも、コーナー王女の捕縛劇で威厳とか、そんなものは他の国々は気にしていないよ。それに、既に大使であるギルバートは重要書類を持って帰国しているし。セシーの御付きの人間は馬車で帰らせて、セシーは転移魔法で送るよ。そうすれば、コーションにもう少し長くいれるだろう?」


 ーーーーもしかして、私のためにセライアお姉さまを少しでも長くコーション国に居させてくれるの?


 ルルドの瞳はとても優しくアンジェリアを見ていて、アンジェリアの心は温かい気持ちが広がった。


「うん、ありがとう、ルルド。セライアお姉さまにも、提案してみるね? マリー、セライアお姉さまとの面会をお願いできる?」


「もちろん、承りました」


 アンジェリアが微笑みながらマリアナにセシリアへの伝達をお願いすると、マリアナは早速、約束を取り付けるために部屋を後にした。


「ーーで、リアは何を心配していたんだい?」


 マリアナとアンナが部屋から離れたタイミングで、ルルドが心配そうにアンジェリアに話しかけた。

 きっと、アンジェリアの事になると心配性なサスティアル王族のルルドは、アンジェリアの悩みを聞くまで諦めないだろう。


「ーー心配、と言うよりは…。漠然とね、今後のコーション国の事とか、アマリア様との関係とか…。考えても、キリがないのだけれど」


「ーーうーん、そうだね…。今は、サスティアル王国とフォーガス国とのコーナー王女の捕縛が大陸を騒がせているから、何となく落ち着かないかも知れないけれど。ーーーー結局の所、コーション国とベイガザード王国との関係は変わっていないーーーーまぁ、サスティアル王国の魔力を見せつける良い機会にはなったから、今はベイガザード王国側が様子を見ているのだろう」


 アンジェリアのもやもやした気持ちを汲み取ったのか、ルルドには珍しく真面目に返答を返してくれた。そんなルルドの態度に、アンジェリアはもう少しだけ、情勢を聞いてみようかと期待を持った。


「あのパーティの後、ベイガザード王国側に付いていた、コーション国内の一部の貴族が、オルソン公爵側に寝返ったでしょ? とりあえず、一定の効果はあったの?」


「そうだね。カイルの立太子で、劣勢だったオルソン公爵派は盛り返したと、言って良い。ベイガザード王国寄りだった周辺国も、コーション国との関係を立て直そうとする動きもあるーーおそらく、先程のアマリア公女は、エステリア国からの伝令をリアに伝えたかったのだろうね」


「えっ? じゃぁ、さっきアマリア様を追い返さない方が良かった?! どうしよう…」


 ルルドの言葉に、アマリア公女を避けてしまったアンジェリアはヒヤッとした。国の情勢を伝えに来てくれたのであれば、アンジェリアの行動はあまりにも失礼である。


「大丈夫、心配は要らないよ? そんなものは僕がさっさっと、調べれば直ぐに分かることさーー今回の件では、リアを兄上が酷く心配をしていてね。くれぐれもリアに負担をかけないよう、指示を出されているから」


 ルルドはそう言うと、アンジェリアの頭をポンポンと撫でた。

 コーナー王女の捕縛は、アランが予定になく駆けつけたため、あっさり終了した。けれども、本来はルルドと補佐役のシャーナ公爵とでコーナー王女を焚き付け、魔力を放出させた段階で現行犯逮捕を目指していたらしい。

 しかし、予想外のコーナー王女の暴れようーーパーティ会場の床やら天井やらを破壊し、多数の被害を出したためにーー会場外にいたレイモンドが瞬時にサスティアル国王へ思念を送り、念のために待機したアランが駆けつけたという。


『ちょうど、手が空いていたんだ。リアに怪我がなくて良かったよ』


 コーナー王女をサスティアル王国に連行する時に、アンジェリアがアランに礼を告げると、散歩のついでかのような気軽さで、アランは笑いながら帰って行った。


「僕は、兄上にしっかりリアを護衛するよう、絞られたし、ルカも、コーナー王女の愛称を、あの場で呟いたから、かなり絞られたみたいだよ? 魔術はお互いの親密さに紐付けられることもある。だから、愛称を口に出すなんて、暴れ狂う相手を前にして、なんて愚の骨頂だってね」


「そ、そうなんだ…。ルカ、大丈夫かな…?」


 あれから、フォーガス国はサスティアル王国の監視下の元、国の建て直しを行っている。もしかしたら、アランがルカに辛く当たってはいないかと、アンジェリアは心配になった。


「あぁ、僕はリアに、また心配事を増やしたみたいだねーールカの事なら大丈夫さ。あれでも、兄上はルカの事を大変気に入っている(ーーリアの将来を任せても良いとお考えなくらいにーー)」


 アンジェリアの座るソファから離れた部屋の窓から外の様子を見ながら、ルルドが話していたためか、最後の言葉はアンジェリアの耳に届かなかった。


「ルカが、大丈夫なら、良いけれどーー」


「それよりも、リアは、ガーランド王国のライアルトが気にならないのかい?」


 アンジェリアが、ルカについて話を続けるのを気に入らなくて避けるように、ルルドはアンジェリアの言葉を遮る。そして、ガーランド王国の念願であった第一王子の容態についてルルドが話題をふってきた。

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