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3番目の婚約解消 【閑話】 フォーガス国王太后

いつもありがとうございます!

話はまだまだ続きます!



 コーナー=フォーガスは類い稀な魔力を持って産まれた。

 フォーガス国の建国の祖である魔術師と同じく、呪詛を操れる力を産まれながらに持っていたのだ。

 初めて気がついたのは、コーナーがまだ5歳の頃。マナーにうるさい教師に、お説教を受けたときだ。

 コーナーはあまりに説教臭い教師の死を願ってしまったのだ。そう、子供心に【死んじゃえば良いのに】と。すると、教師は授業の後、帰宅の途で馬車の事故に遭い、即死してしまった。

 コーナーは神様が願いを聞いてくれたのだと思った。だから、もう一度叶うのか、確かめようと思ってしまったのだ。誰かの死を願うと、本当に叶うのかと。そして、今度はマナーや勉強をいつも比べられて、コーナーにとっては目障りだったフォーガス国の公爵令嬢や伯爵令嬢の死を願った。すると、彼女達も不自然に突然死をした。

 コーナーはようやく自分の呪詛に自信をつけたが、公爵令嬢らの死は、社交界で大変な噂になった。病気も特になく、健康で将来有望な令嬢が2人も同日に突然死したのだ。

 貴族間では呪いにより殺されたのではないかと囁かれ始めた。

 フォーガス国は元々魔術師が建国した国だ。そして、その疑いの目は自然と王家に向けられたのである。


 当時、まだ分別のつかない幼いコーナーは、気にくわない侍女や護衛騎士らに手当たり次第呪詛をかけていた。コーナー王女の側に遣えると死に追いやられるーーそんな噂が大きくなり、呪詛の疑いを向けられていると気がついた時には、既に幽閉という処分が決定されていた。


【気にくわない!!】


 フォーガス国の王女としてちやほやされて育ったコーナー王女は、この幽閉に対してかなりの抵抗をした。コーナー王女を連行しようとした騎士達を一人残らず呪い殺してしまったのだ。

 困ったフォーガス国の王太子は、己の力のほとんどを注ぎ込んで娘の呪詛の力を封じ込めた。ただ、元々体が弱い王太子は、コーナー王女の力が成長と共に強くなればなるほど、その力を抑制するために段々と弱っていくことになる。


 何とかコーナー王女の呪詛を押さえ付ける事が出来たフォーガス国王は、事の収拾を謀るために、王太子の娘は病弱体質だと風潮した。そして、自身の義母、ガーラ王太后の静養先の離宮にコーナー王女を送り込んだ。


 しばらくコーナー王女は、呪詛の力を押さえ付けられたため、渋々淑女教育を受けていた。そして、ガーラ王太后から、国民の人気を得るためにと医療の道に進むように諭される。コーナー王女も、国民の人気を得て、ルカとの婚約の弾みにしようと考えて積極的に勉学に励んだ。

 フォーガス国の医療研究施設に頻繁に通い、医療の向上に力を注いだ。そして、一定以上の成果も上げて、フォーガス国内にコーナー王女の医療への熱意が浸透していった。



 しかし、事は起きてしまう。


 コーナー王女は、ガーラ王太后の監視のもと毎日を過ごしていた。そしてその頃、ガーラ王太后から、コーナー王女の恋敵と言えるアンジェリア=コーディルが隣国のガーライド王国の王太子妃に選ばれたと聞かされていた。それは、コーナー王女が呪詛を使わないための嘘であり、コーナー王女の父である王太子からの命令でもあった。

 フォーガス王太子は、すでにこの頃から、コーナー王女の呪詛の力を押さえ付けるのが困難であると悟っていたのだ。そして、コーナー王女がルカとアンジェリアの婚約を知ってしまえば、今まで何とか押さえ付けていた呪詛が解放されてしまうことも。


【アンジェリア=コーディルは、ガーライド王国の第一王子と婚約するの。

 時を見計らって、王太子であるお父様からルカにもう一度婚約の打診をして貰えるばずよ】


 しかしそれが、コーナー王女を押さえ付けるための戯れ事だと、コーナー王女は知ってしまった。



 それは、コーナー王女がいつもは通らない離宮の裏庭を散策していた時だった。コーナー王女はその日、昼食後珍しく1人で離宮を散策していた。天気も良くて柔らかな暖かい日差しに、コーナー王女は、己の過去の過ちが酷く後ろめたく感じ、居心地の悪さを感じた。


【慣れない散歩なんか、するものではないわ…】


 コーナー王女は、気分が悪く、重くなった胸を抑え、来た道を戻ろうと引き返した。


 そんな時、数人の離宮の侍女が庭で昼食をとりながら、談笑しているのを聞いてしまった。



『ーー、ねぇ? 聞いた? ガーライド王国のセーシェル公爵様のご子息はそこの国の公爵家のアンジェ何とか様が大好きなんだって。それで、コーナー王女との婚約打診を一蹴したそうよ?』


『知ってるー! アンジェリア様でしょ? アンジェリア様か誰と結ばれようとも、ルカ様はそのお方以外とは結婚しないって!』


『私は、すでにルカ様は、その噂のアンジェリア様と婚約したって聞いたわよ?』


『え!! 嘘?! じゃぁ、ルカ様がフォーガス国の、国王になる気はないってこと??』


『そう! コーナー様はお気の毒にも、相手にもされなかったってこと!!』


『あはは…! 当たり前よ! あの人殺しが、王妃なんてあり得ないじゃん!』


『ぶはっ! ほんと、そうよね!!』



【!! なんですって!!】


 コーナー王女は怒りに任せて、その場にいた侍女へ向けて呪詛を放った。

 数年前なら、呪詛の力を押さえ付けられ、何の怪我もさせられなかった。それが、今回はコーナー王女の望むまま、あっという間に叶った。


 すぐに離宮の裏庭には、傷ひとつない、侍女達の遺体が発見された。

 誰もが、コーナー王女の仕業を疑ったが、口にすることは出来なかった。

 ガーラ王太后は、さすがに自分でもコーナー王女を押さえきれないと悟った。そして、全てが計画通りであることに満足を得ていた。次なる計画を進めるため、ガーラ王太后は、直ちに国王に事の次第を報告した。

 しかし、国王は既にコーナー王女の抑制が壊された事を知っていた。王太子が突然倒れ、魔力が底をついたのだ。


『娘、コーナーが呪詛を使ったようですーー私では、これ以上、押さえ付けられません!!』


 フォーガス国王は直ぐにコーナー王女の力を押さえるため、侯爵家に嫁いでいた妹を呼びつけた。そして、その場凌ぎではあるが、コーナー王女の呪詛を一時的に押さえた。

 けれど、それも長くは続かなかった。その女性の力も、直ぐに底をついてしまったのだ。


『コーナーの力を意図的に使わせ、他に目を向かないように仕向けるのです』


 フォーガス国がコーナー王女の所業の数々に頭を悩ませていると、ガーラ王太后が面会にやって来て、そう意見した。

 フォーガス国の王族の魔力は、空間が離れれば離れるほどに魔力を奪う。これを利用して、コーナー王女の魔力を少しでも落とそうと考えての事だった。


『ガーライド王国のルカを利用するのです』


『ガーライド王国のコーディルの娘がルカを弄んだと信じ込ませるのです』


『フォーガス国からガーライド王国間で呪詛を使わせて、コーナーの力を削ぎ、その間に策を練るのです』


 ガーライド王国のコーディル公爵家はサスティアル王国の縁戚だ。フォーガス国王は、国内の医療研究に協力的な、魔法大国のサスティエル王国に盾を突きたくはなかった。

 けれども、度重なるコーナー王女の呪詛から国内を守るためには、ガーラ王太后の説得に、フォーガス国王は頷く以外に道は残っていなかった。


 コーナー王女は、ガーラ王太后の嘘の話をあっさり信じた。元より、人付き合いの少なかった王女は、小さい頃からただ一人、優しく接してくれていたガーラ王太后を信じたかったのだ。『アンジェリアに棄てられた傷ついたルカ』という話を鵜呑みにし、疑いもなく遠く離れたガーライド王国にいるアンジェリアに呪詛を放ってしまうほどに。

 幼い頃から、呪詛を操るコーナー王女は、周りからすれば常に恐怖の対象であった。仕えた侍女は常にコーナー王女に対して恐れを隠そうともしなかった。王女という立場から護衛が複数ついて当たり前なはずなのに、最小限の人数に留められていた。

 そんな環境の中、コーナー王女は、家族の温かさに飢えていたのかも知れない。

 だからガーラ王太后の話を簡単に信じ、己の呪詛の力に負担がかかるにも関わらず、アンジェリアに呪詛をかけ続けた。

 けれども、どんなにコーナー王女の成し得る力を使っても、待てど暮らせど、ガーライド王国からアンジェリアの訃報の知らせはやってこない。


【どうして?! 私の力は絶対なのに!!】


 怒りに任せて、コーナー王女は側近として遣えていた侯爵令嬢に呪詛を遣ってしまう。幸い侯爵家は当主が事故で亡くなったばかりで、混乱の中にあった。そのため侯爵令嬢の死も、王家は無理な理由をでっち上げて何とか遣り過ごした。


 けれども、さらに呪詛による死者が出ては堪らないとフォーガス国王は焦った。コーナー王女は何処か思慮が浅く、衝動的に呪詛を放ってしまう傾向があるのだ。このままでは、いつ他の王族に呪詛を遣ってしまうかもしれない。

 そこで、フォーガス国王とガーラ王太后は、今度はアンジェリアの大切な人間ーー嘘ででっち上げたアンジェリアの婚約者、ライアルトを呪うようにコーナー王女に話を持ちかけた。

 もちろん、アンジェリアは第1王子のライアルトとは婚約などしていない。全ては、コーナー王女の呪詛の相手が必要、フォーガス国王にとっては、ただそれだけだった。


 その裏で、ガーラ王太后は祖国エステリアと連絡を取っていた。


 コーナー王女に嘘の話を伝えて信じ混ませ、ガーライド王国の第1王子のライアルトに呪いをかけた。それは、ガーラ王太后の計画通り、エステリア国の姫がガーライド王国の第2王子に嫁いだタイミングと上手く重なった。

 この時をガーラ王太后は首を長くして長年待っていた。とうとう、可愛い姪の敵を打てるときがやって来たのだ。



 ガーラ王太后の甥はエステリア国王だった。今は亡き弟が、必死に貧しかった国を建て直し、遺した弟の息子と姪。

 そのエステリア前国王だった弟は、ガーラ王太后がフォーガス国王に嫁ぐのを躊躇った唯一の存在だった。ガーラ王太后との婚姻の話が出たときには、夫となるフォーガス前国王には、妾や側妃が複数人いたのだ。そして、エステリア国から正妃を受け入れる前には、既に、王太子と定めた子供までいた。

 けれど、若かったガーラ王太后は弟の制止を振り切り、エステリア国のために、少しでも大国フォーガス国の助力を得ようと、フォーガス国に嫁いだ。


 ガーラ王太后は、フォーガス国に嫁ぐ際、フォーガス前国王に姪の嫁ぎ先を相談していた。エステリア国とコーション国の婚姻は何度も繰り返されていたが、ガーラ王太后はこれを良く思っていなかった。近すぎる血縁関係の婚姻にも、コーション国の国力にも不満を持っていたのだ。

 可愛い姪には、もっと姫を大切にしてくれる豊かな国があるのではないかと信じていたのだ。


 しかし、コーション前国王の出した答えは、エステリア国の姫をコーション国のターチルに嫁がせるというものだった。

 ガーラ王太后はコーション国のターチルの人間性に不安を感じていた。だから、2人の婚姻に猛反対をした。けれども、権力のない王妃には、大国のフォーガス国王の決定は覆すことが出来なかった。

 程なくして、エステリア国の王女は、コーション国のターチルの元に嫁いだ。そして、嫁いだ時には、既にターチルに想い人がいた。ターチルは表面上、エステリア国の王女を歓迎したが、心は報われなかった恋人に捧げていた。

 エステリア国から嫁いだ王女は、コーション国王との婚姻が原因で徐々に心を病み、失意の中に亡くなってしまう。



 ガーラ王太后はフォーガス国のやり方をずっと憎んでいた。自分がフォーガス国王に嫁いだのは、エステリア国の繁栄のためだったはず。けれども、少しの支援も得られないばかりか、可愛い姪まで失うことになってしまったのだ。

 ガーラ王太后は長年フォーガス国に対して復讐の機会をうかがっていた。いつの日にか、チャンスが来ると信じて。

 そんな中、自身とは血の繋がりのない曾孫のコーナー王女が、呪詛を遣うと判った。ガーラ王太后は、心から神に感謝した。ようやく念願が叶い、フォーガス国とコーション国に復讐を始めることができる。

 先ずはコーナー王女を自身の手元に置き、信頼を勝ち得るべく動き出した。


 そして、コーナー王女は、ガーラ王太后の期待通りにたくさんの過ちを犯し、フォーガス国を苦しめていった。


【今なら、フォーガスとコーションに積年の恨みを返せる!!】


 王太子の力も底をついた、それはコーナー王女を止めることがフォーガス国内にはいないということを意味する。

 ガーラ王太后は歓喜した。エステリア国の貴族から養子に招いた姫は、すでに第2王子に嫁いだ。後は、コーナー王女がガーライド王国の第1王子のライアルトに呪詛を放ち、エステリア国の姫が毒を盛るだけだと。



 そして、作戦は成功した。ガーライド王国の第1王子は倒れ、その死を逃れるためにガーライド王国は、コーション国の魔法石を欲した。

 時を同じくして、ガーライド王国の国教会には、コーディアル家の他の娘が、アンジェリアの加護の情報を流したらしい。

 ガーラ王太后にとっては、正に渡りに船だった。


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