3番目の婚約解消 45 宝珠を取り返しに
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コーナー王女のアンジェリアに対する憎悪は積もり積もっていき、遂には直接の暗殺計画を模索しているらしい。コーナー王女の父親であるフォーガス国王が娘をどうにか更正させようと努力はしたらしいが全ては無駄に終わったのだ。
フォーガス国王がコーナー王女に対して誤った点は、いつまでもコーナー王女の更正を信じた事である。コーナー王女がガーランド王国の第一王子に呪詛をかけたと判明した時点で、事を明るみにしてコーナー王女に然るべき処罰をすべきだったのだ。
それを、娘可愛さにみすみす今まで見逃してきた。その代償は、国際社会で批難される事はもはや避けられないだろう。
やっと、王太子候補として、フォーガス国へルカがやって来たのに、ルカの宝珠はすでにアンジェリアに渡っていた。コーナー王女はそれを知って、悲しみに暮れるのならまだしも、他国の人間をさらに暗殺しようとするなんて、救い様のない愚か者だ。
「ルカは、どうやってコーナー王女をコーション国に連れ出したのです? フォーガス国王が許すとは思えないのですが……」
アンジェリアは、ずっと気にかかっていた質問をシャーナ公爵に問いかけた。
ルカはコーナー王女を手離したくないフォーガス国王をどうやって説得したのだろう。サスティアル王国の関係者に捕まれば、国際法に乗っ取り、コーナー王女が魔力を取り上げた後に幽閉されると、フォーガス国王も分かっていたはずなのに。
不思議そうな顔をしたアンジェリアの顔を見つめながら、シャーナ公爵は優しく微笑むと、柔らかなアンジェリアの髪の毛を手でといた。
「アンジェリアの髪は、昔から触りたくなるほど綺麗だわーーフォーガスの小僧に渡すのが惜しくなるほど……」
「……叔母様?」
「あぁ、ごめんね。ルカ殿には、フォーガス国王に、ルカ殿の宝珠を手元に取り返したい、と伝えるように頼んだの」
「なんですって?!」
「おや?! そうだったのか?」
急に悪い顔でニヤニヤしたシャーナ公爵は、アンジェリアにとっては、とんでもない発言を投下してきた。アンジェリアは驚き目を丸くしたが、今まで静かに2人の話を聞いていたルルドも、シャーナ公爵の言葉に驚いた。
「僕は、ルカがリアに会いたいがために、コーション国へ出掛けると、コーナー王女に伝えたとばかり思っていたよ」
「それでは、何かスパイスが足りないじゃないの の。宝珠を取り返す、即ち、アンジェリアを取り返すとなれば、フォーガス次期王妃はアンジェリアとなるわ。それを阻止するにコーナー王女は必死にならはずよ」
「うわあ! 叔母上、お人が悪い! まぁ、フォーガス国王も娘のコーナー王女の責任を取ることになるから、退陣は止むなしだからね? 騙しても問題ないだろう」
シャーナ公爵とルルド2人のやり取りを聞いていると、アンジェリアは頭がずきずきと痛くなってきた。
「ーーでも、フォーガス国王がコーナー王女に、ルカの外遊の話を伝えたと言うことなのでしょうか? そんな、フォーガス王国内での揉め事を、他国で晒すことに繋がる恐れが大いにあるのに……」
アンジェリアが痛む頭に手をやりながら、シャーナ公爵に質問を投げ掛けると、ルルドが代わりに答えた。
「リア、叔母上はフォーガス国王に引導を渡したのさ。コーション国にサスティアル王族が集められる。そこにコーナー王女を寄越せと言うことは、すでに全ての悪事はサスティアル王国にバレているという最終通告。フォーガス国の王太子を急いで決定したのも、後継者を急ぎ決めておく必要が出てきたと悟ったんだろう」
「まぁ、甥っ子は少しは考えるようになったのね? これからは、もう少し王太子の業務に励むシャルムを手伝うようにしてちょうだいな」
「げっ!」
ルルドが得意気にアンジェリアに説明するのを見ていたシャーナ公爵は、甥の成長を関心しながらも、国政への協力をせよと苦言も忘れなかった。
『ご歓談中、失礼します。アンジェリア様、レオン殿下がいらっしゃいましたーー』
シャーナ公爵とルルドと話し込んでいたせいなのか、いつの間にか時間が経っていたらしい。
廊下からマリアナの声が聞こえ、レオンが部屋に迎えに来たと伝えられた。
カイルの立太子の儀の前に、王族は控え室に集まるのだ。予定より少し早いが、レオンがアンジェリアを迎えに来たようだ。
「ーーアンジェ! フォーガス王国の王女から面会要請があったと聞いたけれど?! ーーっ! こ、これは失礼を! サスティアル王国のシャーナ公爵閣下がいらっしゃるとは……」
アンジェリアの了承の返事も待たないで、いきなり扉が開いたと思えば、息を切らしたレオンが駆け込んできた。そして、アンジェリアと共にいたシャーナ公爵とルルドを目にし、自身の礼儀を欠いた登場にレオンは慌てて謝罪した。
「これは、これは、コーション国のレオン殿下ではない? いくら婚約をしたといえども、淑女の部屋に返事も待たないで開くとはーーましてや、アンジェリアはサスティアル王族。今後は2度とせぬようにね?」
「も、も、もちろん、でございます!! 申し訳ありませんでした!!」
シャーナ公爵が猫のような瞳でレオンを睨みつければ、レオンは顔を顔を青くして、アンジェリアにすぐに謝罪をした。
ーーーーもう、サスティアル王族を引き合いに出したら、コーション国側は萎縮すると分かっていながら脅すなんて……
アンジェリアの不満が顔に出ていたのか、シャーナ公爵は片眉を上げてとぼけた表情をした。アンジェリアの機嫌が悪いのを見て、みぬ振りに決め込んだらしい。
「大丈夫よ、レオン。コーナー王女の面会要請は、シャーナ公爵が心配して部屋に来てくれたから、おかげで、回避出来たわ」
「そ、そっか、良かった…。フォーガス王国の王女は、ルカ殿の関係上、アンジェに妬みのような感情があると思うんだ。だから、アンジェに何かあったらと思って…。少し早いんだけれど、慌ててやって来たんだ」
「ほう? アンジェリアはレオン殿下にも想われているのね?」
「ーー! もう! 叔母様! からかうのも、程々にしてくださいませ!」
「ーーぷっ!」
レオンとアンジェリアの会話に茶々を入れてふざけるシャーナ公爵を、アンジェリアがビシッと注意した。すると横で様子を見ていたルルドが、堪らず吹き出した。
「ーーごほん……、すまない……。レオンはルカに、コーナー王女の事を聞いたの?」
咳払いをして、笑いを押さえるとルルドは真面目な表情を作ってレオンに聞いた。
「ーー! あぁ、ルカ殿が慌てて、打ち合わせの部屋にやって来て、俺の胸ぐらを掴んで、アンジェを助けろって……」
ルルドの言葉に、レオンは驚いた顔をして、アンジェリアをチラリと伺った。そして、アンジェリアの落ち着いた様子を見て、ルカがコーション国に来ている事が、すでにアンジェリアにバレているとレオンは察した。本当は、レオンはアンジェリアにルカの話をしたくない。けれども、これ以上秘密にしておくこともできないと、渋々といった様子で、ルルドの質問に短く答えた。
「ふーん? サスティアル王国の公爵と第2王子が助けに向かっても、ルカ殿は、アンジェリアが心配でたまらなかったのねぇ?」
シャーナ公爵はアンジェリアに注意されても、からかうのを止める気はないらしい。アンジェリアが軽くシャーナ公爵を睨んでも全く効かない。
「もう…! ルルドとレイモンド叔父様が仰っていた、コーナー王女のパートナーってルカの事だったんでしょ? 立太子の儀のお披露目のパーティーでダンスをするように、って話だったけれど?」
からかい続けるシャーナ公爵とルルドにほとほと疲れながら、アンジェリアが指示を受けていた内容を確認すると、少しだけ態度を改めたルルドが頷いた。
「あぁ。ルカの事だーーリアには、コーナー王女を煽るために、感動の再会を演じて欲しかったんだけれど……」
「そんな簡単な事で、コーナー王女側が何かを仕掛けるとは、思えないんだけれど?」
カイルの立太子の儀には、ベイガザード王国やエステリア国、周辺諸国の代表も参列しているのだ。いくら、今まで我儘が通って来たとはいえ、コーナー王女も変な行動は起こさないだろう。
「ーーリア? 僕らはサスティアル王族だ。どんな事も可能に変えなくてはならないんだよ?」
雑な作戦だと批難するアンジェリアにルルドは笑って意味深な言葉を返した。
「ルルド殿? まさか、何かパーティーで魔術を?」
ルルドの言葉に、今まで黙っていたレオンも堪らず心配そうに問いかけた。
「なぁに、怪我人は出さないさ。その為にも伯母上にも御足労頂いているんだ」
「ふふ…、アンジェリアが癒しの力を使わなくても良いように事を運ぶ予定よ。そなた達は高見の見物をしていてね」
『アンジェリア様、レオン殿下。そろそろお時間でございますーー』
シャーナ公爵の言葉に、未だ不安が拭えないアンジェリアとレオンだったが、もうすぐ控え室に移動する時間だと連絡が入ってしまった。
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