3番目の婚約解消 46 コーナー王女と王太子ルカ
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王宮内にある教会の聖堂で、大陸の各国のトップが見守るなか、第1王子カイルの立太子の儀が執り行われた。
にやついた顔を隠しもしないベイガザード王国派と、悔しそうな表情のオルソン公爵派が睨み会う一触即発の異様な空気の中、立太子の儀は短時間で呆気なく終了した。
「ルーファス様は、お披露目のパーティーには参加されないのね……」
直前まで、コーション国の王族は全員、カイル王太子のお披露目パーティーに参加する予定だった。
けれども、アンジェリアがレオンと共にパーティー会場へ来てみれば、王座は空席になっている。
ーーーー何か、良からぬ事が起きていなければ良いけれど……
アンジェリアは不安で堪らなくなり、知らず知らずぎゅっとレオンの腕に掴まると、アンジェリアの不安が伝染したのか、レオンも心配そうに王座を見詰めた。
「ーー父上に何かあったのだろうか……、このパーティーが落ち着いた頃合いを見て、様子を見てくるよ。それまで、ルルド殿の所で大人しく待っていて」
「もちろんよ。聖堂では、ルーファス様の元気なご様子を見て安心していたのに……。まさか!! 王太子に指名された日に、暗殺を企てるなんて事は……!!」
「ー!! っし! 誰に聞かれているかも分からない。詳しくは、パーティーの後で相談しよう」
レオンも顔色が良くない中、コーション国の王族として、来賓に挨拶をこなさなくてはならない。
ルーファスの妹のオルソン公爵夫人ダイアナも、不安そうに王座とこちらを交互に見ている。
ーーーーダイアナ様もルーファス様に何が起きたのか、ご存知ないのだわ……
オルソン公爵派がルーファスの不在に不安を隠せない中、カイル王太子やベイガザード王国の招待客は満面の笑みを浮かべていた。
ーーーーベイガザード王国派の嬉しそうな表情を見ると、胸がムカムカしてくるわね……
「アンジェ、眉間に皺が寄っているよ? どんな事が起きようと、計画通りに進めていくからね? 僕らとしては、ゆるゆるで油断だらけなベイガザード派は、大変有難いくらいだよ」
アンジェリアが何回目かの溜め息をついた時、レオンとアンジェリアの疲れた顔を見ていられなくなったルルドが、2人をテラスに連れ出した。
「ルーファス殿に何か起きたのは、しょうがない。今は、計画を成功させること。これに集中しておくれーー今日を逃すと、コーナー王女はフォーガス王国に帰ってしまう。守りの加護を持つ叔母上ーーシャーナ公爵もサスティアル王国に帰ってしまうから、この機会を逃すことは出来ないんだ」
「申し訳ありません、ルルド殿。少し、決意が足りなかったのかもしれませんーーアンジェ、僕はフロアに戻るけれど、君はもう少しだけ、ここでルルド殿と休んでいて」
レオンはルルドにそう言うと、笑顔を顔に張り付けてタンスフロアに戻って行った。
ダンスフロアでは、ひっきりなしに周辺諸国からの賓客の到着をフットマンが伝えている。
「アンジェ、もうすぐガーランド王国の使者として、ギルやセライアが到着する。もちろん、その後には、フォーガス王国の使者としてコーナー王女、ルカもやって来るだろうーー失敗は許されない。気を抜くな」
ルルドはいつもより強い口調でアンジェリアに注意をした。アンジェリアは、国王ルーファスの姿が見えないことでかなり動揺し過ぎていた。フロアでは、敵対するベイガザード派が粗捜しをしていると言うのに、アンジェリアは目に見えて集中していなかったらしい。
「ごめんなさい、ルルド。どうしてもルーファス様に何かあったんじゃないかと不安で、心配で……」
「それは、こちらの落ち度でもある。すでに救援班をルーファス殿につけている。これ以上は心配無用だ」
ルルドに反省を述べるアンジェリアの背後から、静かにレイモンドが現れた。レイモンドの言葉からも、ルーファスの身に何か起きたのは間違いない。
「今、ガーライドのコーディル公爵家が会場入りした。すぐに、お待ちかねのメインディッシュがやって来るだろうーーさぁ、アンジェリア、気合いを入れろ」
レイモンドはそう言って、アンジェリアの手を掴んだ。ルルドと共に2人に挟まれエスコートされる形で、アンジェリアはダンスフロアに戻ることになる。
ーーーー2人が側にいると、本当に心強いわ
さっきこらずっと視線が床を見つめていたアンジェリアも、これ以上足を引っ張ってはならないと、前を見据えて歩き出した。
ダンスフロアでは、会場入りしたギルバードやセライアがシャーナ公爵と談笑をしているのも確認できた。兄姉達の笑顔に、アンジェリアはどうにか落ち着きを取り戻す。
『フォーガス王国より、王太子ルカ=フォーガス=セーシル殿下、並びに第1王女コーナー殿下!!』
ーーーー来たわね!!
いよいよ、呪詛の黒幕の登場である。フォーガス王国の2人の登場に、アンジェリアをエスコートしている2人の手にもぎゅっと力が篭った。
「ーー全ては計画通りに。アンジェ、コーナー王女は嫉妬深く、我慢が利かない。出来るだけ、王女を煽り、焦らすんだ」
ーーーー私、とんだ悪女になるって、事よね
改めて作戦を思い返せば、アンジェリアはとんだあばずれ女ではないかと思えてくる。それでも、国の明暗が懸かっている大舞台の第1段階だ。アンジェリアはお腹に力を入れて一歩踏み出した。
入り口のステップには赤を基調にした、少し毒々しい色合いのドレスに身を包んだコーナー王女が、真っ赤な唇をひどく歪ませてアンジェリアをじっと見ていた。
ーーーー初対面の時も、物凄い睨みを利かせていたっけ……
思い返せばフォーガス国の庭園で初めて出会った時、アンジェリアは軽い頭痛に襲われた。あれは、もしかしたらコーナー王女の呪詛の仕業のような気もしてくる。
アンジェリアがチラリとシャーナ公爵を確認すれば、優雅に微笑むシャーナ公爵がゆっくりと頷いた。それはまるで、現在進行形で守護の加護を放っていると合図をしているようだった。
ーーーーやっぱり、コーナー王女は即座に呪詛を放ち、相手を傷付けることが出来るんだわ!
アンジェリアが美しい容貌のルルドと美の加護を持つレイモンドに挟まれて、エスコートされているのも気に入らないのか、コーナー王女の目付きが緩むことはない。
それを見咎めてか、コーナー王女の横にいたルカが彼女に何か語りかけた。すると、コーナー王女の表情が、ぱあっと華が咲いたような笑顔に変わる。
ーーーーコーナー王女も、恋をしているだけなら、とても綺麗な姫君なのに……
天使の風貌のルカと、従姉にあたるコーナー王女は並び立つと、フロア内で異様に目立つ。まるで、女王様が、天使を引き連れているようだ。
ーーーーいけない! 馬鹿な妄想してる場合じゃない!
アンジェリアが邪念を払うように軽く頭を振ると、心配そうな顔をしたレオンがアンジェリアの所へ足早に戻ってきた。
「アンジェ、大丈夫? 招待客もだいぶ揃ったらしいよ。兄上ーーカイル王太子夫妻のダンスの後、僕らのダンスだ。その後は……」
「えぇ、計画通りに、フォーガス王国の使者、ルカとのダンスをするのよね?」
言い淀んだレオンに、レイモンドが片眉を上げのを見て、慌ててアンジェリアが言葉を繋いだ。
ルルドは、ルカとアンジェリアがダンスをするだけでも不服そうなレオンに呆れて、苦笑いをしている。
「さぁ、2度目はないからね! アンジェ、頼んだよ」
ルルドの言葉に、アンジェリアは分かったと答えると、レオンの腕を掴んだ。レオンも緊張しているのか、少し手が震えている。
ーーーー一発本番、失敗はしないわ!
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