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3番目の婚約解消 44 アンジェリアの暗殺計画

いつもありがとうございます!


「ーー私の暗殺計画…。ルルドが以前話してくれた、コーナー王女の呪詛を私が跳ね返した、と…」


「あぁ、その他にも度重なるコーナーの悪行に、とうとうフォーガス国王が、王女へ反省を促すことにしたの。かなり、遅いくらいよね? それで、高齢でで療養中だった前王太后の離宮へと追いやった。ちょうど、フォーガス国では流感も流行っていたし、表向き王女の療養を理由として、ねーーまぁ、暗殺者を何度もアンジェリアに放ったとしても、サーシャ姉上が全て簡単に返り討ちにしていたと思うわよ?」


 昔、アンジェリアの母、コーディル公爵夫人サーシャも、叔父のレイモンドまでとはいかないが、なかなかの魔導剣士だったと聞いたことがある。


 ーーーーお母様、本当にお強いのね……


 アンジェリアの頬が軽く引き吊ったのを見て、シャーナ公爵は面白そうに笑った。


「ーー面白いことに、コーナー王女の住まいを離宮に移す案は、前から出ていたと報告書にはあっての。 是非とも、体調の優れない当時の前王太后ガーラの傍に、曾孫の娘を置いて欲しいと、前フォーガス国王に要望したそうだ」


「それって、まさか、前王太后ガーラ様が、孫のコーナー王女を使って、何か良くないことを考えていたということなのでは…」


「アンジェリアは勘が良いわ。そう、そのガーラとやらが、裏で手を回し、コーナーを意のままに操っていたと、私は推測したわ」


「ガーラ様は一体、何故そのような?」


「ガーラ前王太后は、コーナー王女の幼い頃からの情報を入手していたとみられるの。そして、幼き時から、侍女や周りの者を呪詛により、闇に葬るコーナー王女を、自分の復讐の駒にしたのよ」


「ーー復讐、とは……」


「ガーラはエステリアの出身で、コーション国とエステリア国の婚姻を勧めた当時のフォーガス国王、自身の夫に長年の不満を抱いたみたいね。それで、血の繋がりのないコーナー王女を使って、フォーガス国を失墜させようとしたの」


 確かにガーラ前王太后は子供を産まず、現国王は当時の国王の側妃筋の血統だ。


「いくらコーナー王女と血の繋がりがないからって、ガーラ様もフォーガス国の一員なのに……」


 シャーナ公爵の説明を受けながら、アンジェリアはそんなに酷く自国を恨むことになった原因は何だろうかと思った。

 そんなアンジェリアの思案顔さえも愛おしむようにシャーナ公爵は微笑むと、話を続けた。

 アンジェリアも、途中で話を遮ってはならないような気がしてシャーナ公爵の話に集中した。


「当初は、コーナー王女を離宮に留めるために、フォーガス王家の力で、いつかルカと縁を結ばせるとコーナー王女に説いたそうよ。そして、王妃になった際には、国民の人気を得るのも必要だというガーラの話を真に受けて、コーナー王女は医療の道へ進んだの」


「コーナー王女様は、人々を助けるために、医療を志した訳ではないのね……」


 シャーナ公爵の言葉にアンジェリアが呟くと、恋は盲目と言うからね?、と笑った。


 ーーーーなんだか、意味が違うようですが……


 アンジェリアが少しばかりふざけたシャーナ公爵を目で非難すると、シャーナ公爵はこほん、と咳払いをして、説明を続けた。


「ーーしばらくは平和だったそうよ。けれど、ある時、コーナー王女がいた離宮で大人数の不審死があったらしいわ。これには、前フォーガス国王も、事を揉み消すのにひどく苦労したそうよ。なんせ、離宮とは言え、当時の前王太后の療養先だもの。側近は良家の人間で固めていたところ、気に食わないとコーナー王女に殺されてしまったのだから、ね」


 更正のために送られた離宮でも、遂にコーナー王女は侍女や騎士に呪詛をかけてしまう。

 流石にガーラも、コーナー王女の呪詛が明るみになることを恐れたそうだ。


 シャーナ公爵の説明に、アンジェリアはコーナー王女の底知れぬ恐ろしさを感じた。


 ーーーー恋する乙女の盲目、なんて可愛らしいものじゃないわ……


「コーナー王女は人助けの心をすっかり無くし、今では研究所で、人体実験を好んで繰り返しているとも噂されているわ。アンジェリアはルルドの護衛無しで近づかない方が良いわね」


 シャーナ公爵の更なる恐ろしい言葉に、アンジェリアはブンブンと凄い勢いで頷いた。


 離宮で人を呪詛にかけたコーナー王女に、嘘の情報を更に流したのもガーラだった。ルカの思い人であるアンジェリアが、ガーランド王国のライアルト殿下の婚約者に内定したと、コーナー王女に嘘を伝えた。

 ルカの想いを袖にし、アンジェリアだけ幸せになるとコーナー王女は思い込み、酷く妬んだ。そして、ガーラ王太后の言うままにライアルト殿下に呪詛をかけた。

 そうすれば、魔法石欲しさに、ガーランド王国がアンジェリアをコーション国に人質に出すとの言葉を信じたのだ。


 後に、アンジェリアとライアルト殿下の婚約云々は全てが、ガーラ王太后の嘘だとコーナー王女は気がついた。けれども、コーナー王女の願い通りにアンジェリアがコーション国へ人質に出された事で溜飲を下げ、少し落ち着いていたらしい。



 ーーアンジェリアが転移魔法を間違って使い、宝珠を頼りに、フォーガス国のルカの前に現れるまではーー



「それまで、ルカ殿の宝珠がアンジェリアに渡っているとは、コーナー王女は思いもよらなかったらしいわ。アンジェリアも知っての通り、宝珠の相手は生涯でただ一人。完全にルカとは結ばれないと、コーナー王女は逆上したの」


「ぎゃ、逆上ですか?!」


 これまでの話も恐ろしかったが、コーナー王女がアンジェリアに逆上していると聞き、アンジェリアは恐れを通り越して泣きたくなってきた。


「アンジェリアには、全く呪詛が効かないのよ? だから、アンジェリアの周りの人間にまで、手当たり次第に呪詛を繰り返したみたい」


「えぇ!! で、でも! 私の周りで亡くなった人間はおりません!」


 アンジェリアの言葉にシャーナ公爵はまぶしい物を見るように、目を細めた。


「アンジェリアが無意識に跳ね返したコーナー王女の呪詛は、魔力のパターンが謂わば単一なのーー」


 コーナー王女がアンジェリアに掛けた呪詛を、無意識に難なくアンジェリアは跳ね返した。そして、同じ波長の魔力を持った呪詛が、アンジェリアの周りにかけられた時、アンジェリアはまた、呪詛で攻撃されたと無意識に捉え、跳ね返しを繰り返していたらしい。


「気がつかない内に、コーナー王女の魔力に対抗していたと?」


「アンジェリアの人を大切に想う心が働いてのかもね? ーー結果、アンジェリアを全く害することが出来ないまま、時が流れて現在に至るわ」


 コーナー王女とっては、今回のカイル立太子の儀は、アンジェリアを殺める絶好の機会だ。

 サスティアル王国の面々が揃っていなければ、呼ばれなくても何かと理由をつけてコーション国に来たに違いない。


 現フォーガス国王も自身の娘の恐ろしさを認識しており、国外へ出すことを躊躇った。コーナー王女が国外に出て、要人に次々と呪詛をかけたとなればフォーガス王族の管理責任が問われる。また、これまでにもフォーガス王族が、コーナー王女の犯した罪を揉み消してきた事が明るみになるのも不味いのだ。

読んで頂きありがとうございます!

まだまだ話は続きます。

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