3番目の婚約解消 41 シャーナ公爵との再会
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コーション国第一王子カイルの立太子の儀は、お世辞にも良い天気に恵まれたとは言い難い、薄暗く小雨の降る1日となった。
ーーーーまるで、オルソン公爵派の心を映したようだわ……
「ーーこれで、雷でも鳴れば、天がお怒りになっていると言えそうね」
アンジェリアは窓から分厚い雲を眺めながら、独り言を呟いた。カイルの立太子の儀にあたって、朝早くから入浴だの、マッサージだの、化粧だの…、ほとほとアンジェリアは疲れきっていた。半日かかった身支度も準備が整った今、レオンの迎えを待ちながら、侍女達から解放されたアンジェリアはようやく小休憩を許された。
「ーーアンジェ、誰が聞いてるか分からないんだから、式典やパーティーでは大人しくしているのよ?」
アンジェリアの独り言を聞き取り、マリアナが横から口を挟んだ。アンジェリアの部屋には、アンジェリアとマリアナ以外は外しており、侍女ではあるが、マリアナとの気が置けない乳姉妹同士で、束の間のティータイムを過ごしていた。
「そうね、今日は周辺諸国からも来賓が来てるし……、大人しく遣り過ごすわ」
ーーーーコーナー王女は昨日の内に、コーション国の来賓用の離宮に到着したのよね……
いよいよガーランド王国の第一王子ライアルトの呪詛を解けるのだ。ルルドやギルバードの達の作戦の足を引っ張ってはならないと、アンジェリアはすでに緊張でいっぱいだった。
「ーーシャーナ公爵様は、到着されたのよね?」
「サスティアル王国の? えぇ、今朝早く王宮に入られたと聞いているわ」
サスティアル王国内では、王位継承権を持つ3人をコーション国に派遣するなど、もっての外だと最後まで反対派が騒いでいたらしい。
確かにコーション国はサスティアル王国にとっては、とるに足りない小国であり、滅びようがサスティアル王国には全く影響が出ない。サスティアル王国内で、魔力が膨大な王族を易々と外国へ派遣するなど国益がなく、反対に後々の国害になるのではないかとの意見が続出したようだ。
「伯母様にも、前もって挨拶できないなんて。会場で、なんとか挨拶出来れば良いけれど……」
「フォーガス国のコーナー王女がライアルト殿下の毒殺未遂の犯人として怪しいって、レイモンド殿下がレオン殿下達に簡単に説明していたけれど……。彼女もすでに、コーション国にいるんだから、アンジェリアはもっと気をつけるべきよ。ーー立太子の儀では、ルルド殿下がアンジェリアの護衛役でしょ? いくらシャーナ公爵が伯母とは言え、挨拶は後日に回した方が良いのではない?」
「そう、ね……」
サスティアル王国から反対する貴族を説得し、ようやくコーション国に入ったシャーナ公爵がゆっくり滞在をするとは思えない。ましてや、コーナー王女の罪を暴くのだ、問題が発生した場所にシャーナ公爵を長居させるとは考えられない。
ーーーー久しぶりに、ゆっくりお話したかったなぁ……
マリアナはアンジェリア同様、今日起きるコーナー王女の捕縛の計画を詳しく聞かされていない。2人は除け者にされてなんとなく面白くないが、流れに身を任せるしかなかった。
2人はそのまま、窓から見える庭園を眺めていた。何処からともなく、楽団の演奏も聞こえてくる。後少ししたら、レオンがアンジェリアを迎えにやって来るだろう。
『ーーアンジェリア様に、御面会の願いが、来ております』
ちょうどマリアナがアンジェリアのお茶を片付けだした頃、廊下から少し強ばったアンナの声で、面会の要請が入った。
ーーーー誰かしら? ギルバードお兄様もセライアお姉様も、ガーランド王国の使者として、今頃はカイル殿下に面会しているはずだし……
「ーー誰なのかしら?」
『コーション国の第一王女、コーナー殿下で、ございます』
「なっ!?」
《ガシャーン》
マリアナは驚きのあまりに、手にしていたティーカップを床に落としてしまった。アンジェリアもまさかの訪問客に呆然としたが、カップの割れる音で、はっと我に返った。
ーーーーコ、コーナー王女ですって?!
「ど、ど、どうする? とりあえず、庭園にでも隠れる?!」
マリアナは割れた食器を拾いながらも、アンジェリアをどうにか逃がそうと必死に頭をひねった。
『アンジェリア様?! いかがいたしましたました? 失礼しますーー』
部屋から聞こえた大きな音に驚いたアンナは、アンジェリアの答えを聞くまでもなく、静かに部屋に入ると、廊下を注意深く確認した。
「ーーアンジェリア様は、お静かに……」
アンナは扉を静かに閉めると、廊下の離れた所にコーナー王女側の人間が、こちらの様子を伺っているとアンジェリアに伝えた。
「アンジェリア様、如何されます? 扉から出れば、コーナー王女側の人間に見つかってしまいますが……」
「アンジェは部屋にいないってことは、駄目なの? ーーあぁ、レオン殿下が後から来たら、在室がバレちゃうか…! あぁ、もう!!」
アンナとマリアナは頭を抱え込んで、コーナー王女との面会を回避しようと策を練り始めた。アンジェリアも出来ることなら、ルルドのコーナー王女捕縛作戦の前に、当本人に会いたくは絶対ない。
ーーーーどうしよう!!
コーナー王女が何を思ってアンジェリアに面会を希望しているのか、アンジェリアには全く想像もつかない。しかも、相手は呪詛で殺人まで起こしている人間だ。
面会回避はしたいが、妙案が思い付かなくマリアナとアンナも顔色が悪くなってきた。
アンジェリアも、まさかカイルの立太子の儀を前に、こんな頭を悩ます事態になるとは思ってもいなかった。
そのため、今回ばかりは無意識に宝珠のブレスレットをきつく握りしめていた。コーション国にやってきたときと比べて、宝珠に頼ることがないように、感情の起伏には気を付けていたのに…
「ーー何、かしら……?」
アンジェリアは宝珠を強く握りしめ、顔を青くしながらも、部屋に温かな風が吹いたように思えた。
アンジェリアの横では、大パニックに陥っていたマリアナ達も、部屋に何らかの力が加わったと感じ、お互いに顔を見合わせた。すると、部屋の中心が、雪でも降ってきたかのように静かにキラキラと耀き出した。
『ーーアンジェリアと会うのは、だいぶ久しぶりになるわねーー』
ーーーーシャーナ伯母様だわ!!
光と共に神々しく、ゆっくりと転移魔法で現れたのは、アンジェリアがさっきまで会いたがっていたシャーナ公爵だった。シャーナ公爵の側には、パニックになっているアンジェリア達の様子を見て苦笑するルルドも一緒だ。
「ルルドの転移魔法? えっ? どうして、伯母様がこちらに?」
「あぁ、今、リアがパニックになっていると、そこの宝珠の相手が騒いでいてね? けれど、本人を寄越すとかなり厄介だ。だから、代わりに僕らでここに来たのさ」
ルルドの思いもよらない回答に、アンジェリアは驚いた。ルルドの言うことが本当ならば、さっきまで、ルルドとシャーナ公爵はルカと一緒にいたという事になる。
ーーーー、フォーガス国の使者って、ルカのこのなの?!
「ルルドや? そんなルカ殿やアンジェリアをからかうような言い方、私は好かないわよ?」
シャーナ公爵はニヤニヤ笑うルルドに、チクリと苦言を呈すると、アンジェリアを心配そうに振り返った。
「ルルドのいう通り、その宝珠がルカ殿へアンジェリアの危険を知らせたのよーーアンジェリア、何かあったのかしら?」
「ーーコーナー、王女様が、私に今、面会を希望されて……」
アンジェリアはルカがコーション国に来ているのか聞きたくて堪らなかったが、グッと我慢し、パニックの原因について答えた。
「なるほど、コーナー王女は、よほどルカ殿にご執心のようね……」
「ーーえ? 伯母様……?」
シャーナ公爵は疑問でいっぱいのアンジェリアには答えず、てきぱきと周りの人間に指示を出し始めた。
「まずは、コーナー王女との面会は出来ぬとそこの侍女は連絡をしなさい。理由は、このサスティアル王国の公爵であるシャーナと面会中ということで、問題ないでしょう? もう1人の侍女は、この部屋の警備の人数を増やすよう、近衛に連絡を取り付けなさい」
「「かしこまりました!」」
マリアナとアンナはシャーナ公爵の指示で直ぐに
動き出した。そして、部屋にはアンジェリアとルルド、シャーナ公爵だけとなった。
「とりあえずは、これでコーナー王女との面会は避けられたでしょう。ーーで、アンジェリアには、ルカ殿の事がバレてしまったかしら?」
シャーナ公爵は苦笑いを浮かべると、マリアナの片付け途中だった割れた食器を見つけた。慌てたマリアナは食器の片付けを失念してしまったのだ。そんな慌てん坊の侍女にクスッと笑いを漏らすと、シャーナ公爵は、パッと一瞬にして魔法で片付けてしまった。
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まだまだ話は続きます。
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