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3番目の婚約解消 37 カイルの婚約式を前にして

 コーション国第1王子カイルとベイガザード王国の姫との婚約式までは、ルルドの心配を余所に何も問題が起こらず、時間だけが過ぎていった。

 と言うのも、大方の予想に反して、ベイガザード王国の姫が内向的な性格のため、王宮庭園の散歩はおろか、簡単な茶会なども催されなかったのだ。これには、ベイガザード王国寄りの貴族達は、イライラを募らせた。王宮内では、ベイガザード王国派の貴族がオルソン公爵派に難癖をつけるなど、小さな争いが毎日のようにあちらこちらで起きていた。

 けれども、サスティアル王国の王族自ら、護衛についているアンジェリアの元は平和そのもので、毎日飽きる程、セシリアとギルバードと兄弟でゆっくりとした時間を過ごすことができた。




「ーーいよいよ、兄上の婚約式になった。アンジェには、いつも通り振る舞ってくれれば良いから。僕がアンジェから離れる時は、ルルド殿下に側にいて貰う事だけは徹底してね」


「わかったわーーところで、フォーガス国からは使者は来ているの?」


 婚約式の当日、アンジェリアの部屋にレオンが最終チェックをしにやってきた。アンナとマリアナにも細かく指示を出して、抜けのないよう細心の注意が払われている。

 カイルの婚約式には、ベイガザード王国からのたくさんの使者と王族、親戚関係にあるエステリア国の使者、アンジェリアの祖国から使者としてギルバードとセシリアが参加する予定だ。

 後は、周辺諸国も何ヵ国か式典に参列するらしいが、アンジェリアには詳細は伝えられていなかった。


「兄上の婚約式は何も起こらないように、オルソン公爵派にいる反抗的な貴族を抑えているんだ。だから、出来るだけ、僕らの派閥の貴族は参加をしない予定だよ。ベイガザード王国派を少しでも油断させて、立太子の儀で一泡吹かせたいからねーーフォーガス国の使者は……、たしか、婚約式には不参加だった、と思うよ? フォーガス国内でも、立太子の儀を決める重要な決議があるらしくて……、国を離れられないって」


「フォーガス国の、立太子の儀…? 王太子が決まるの……?」


 フォーガス国の事になるとレオンは歯切れが悪くなる。ボソボソと答えるレオンに少しだけイライラしながらアンジェリアがさらに質問を投げ掛けると、あからさまにレオンは嫌そうな顔をした。


「僕も、自国の対立で手が一杯なんだ。だから、余所の国の情勢を逐一把握している暇はない。そんなに、フォーガス国の詳しいことを知りたければ、ルルド殿下やレイモンド閣下に聞けば良いだろう?」


「ーーっ! べ、別に急ぎではないから、また今度にするわ。ーーレオン、ごめんなさい。余計なことを言ったみたいね」


 機嫌の悪くなったレオンにアンジェリア直ぐにが謝罪を申し出ると、歩が悪そうにレオンは頭を掻いた。側に控えたマリアナは怒りの形相でレオンを睨んでいる。


「ーーいや、こちらこそ、ごめん。兄上の婚約式で頭が一杯なんだ。とりあえずは、アンジェには、午後からの婚約式に注意を払って欲しい」


「ーーええ」


 明らかにフォーガス国についての質問によって、機嫌を悪くしたレオンに、アンジェリアは気分が優れない。

 レオンはそんなアンジェリアを心配しながらも、自身も打ち合わせがあるからと、侍女達にアンジェリア任せてそそくさと部屋を後にしてしまった。


「ーーきっと、フォーガス国の王太子は、ルカ様よ……」


「ーーえ?」


 マリアナがアンジェリアのティーカップを取り替えるついでに、アンジェリアの耳にそう囁くと、様子を眺めていたアンナが鋭い視線を2人に寄越してきた。

 マリアナはアンジェリアへの耳打ちが無かったかのように、ティーカップを下げ、アンナの横に控えた。


 ーーーーたしかに、コーナー王女の隠されてきた力は呪詛だし、ルカの他に魔力を宿した王族はいないわ……


 アンナの痛い程の視線を感じながらも、アンジェリアはマリアナの考えに1人納得をした。

 フォーガス国王は王太子だった頃から、体が弱かったと聞いている。今回、国王の一人娘であるコーナー王女の過去の犯罪やライアルトの呪詛の件が明るみになれば、責任を追及されるに違いない。元々体が弱い国王だ。これ幸いと、国王の座から離れ隠居しようとしているのではないか。そうなれば、時期国王を指定しておく必要がある。国王の一人息子は、魔力が全くなく研究づくめだと、シャルが以前アンジェリアへの手紙に綴っていた。だとすれば、残すはセーシル公爵夫人、又は、息子のルカに王太子としての役割が回ってきても不思議ではない。

 現に、ルカは王太子候補として、フォーガス国の執務に携わっている。


「ーーアンジェリア様、カイル殿下の婚約式の準備に入らせて頂きます。どうぞこちらへーー」


 考えに耽るアンジェリアにアンナは業務的にそう告げると、身支度を整えるため他の侍女達にも指示をだし始めた。


 ーーーーとりあえず、今日の式典を無事に乗り越えることに集中しなくては……


 窓の外の王宮庭園では、ベイガザード王国からやってきた貴賓達が、まるで自国いるかのように傍若無人に振る舞っている声が、アンジェリアの耳にも届いてきた。


 ーーーーベイガザード王国は国王も好戦的な人間だと聞いていたけれど、国王に使える貴族達も最低な人間が多いみたいね!!


 窓から聞こえてくる、王宮侍女を叱りつける怒鳴り声にアンジェリアは気分が最悪になるのを感じた。


「窓をお閉めしましょう……」


 アンジェリアが窓の外に気を取られていると、アンナも外の声が聞こえて不快に感じたのか、窓を閉めようと動き出した。


『……! すぐに、謝罪しなさい!!』


 ーーーーっへ?


 窓の外から聞こえてきた、細くか弱い女性の声は、誰かを叱咤するものだった。アンジェリアは気になって、窓のそばへ行くと、護衛のためかどこからかユーグが現れた。


「ーー姫様、窓の側は危険です」


「誰が、ベイガザード王国の貴賓を咎めたのか、確認したいの」


 ユーグに咎められ、アンジェリアは窓に近寄るのをやめた。代わりにユーグとアンナがそおっと、窓の外を確認し、ひどく驚いた顔をした。


「これは……! ベイガザード王国の姫のようです」


「?! カイル殿下の婚約者の?」


「はい、確かにベイガザード王国の騎士を従えておりますゆえ」


 ユーグはそのまま、王宮庭園の中に身を潜めて様子を伺うため、外へ出ていった。アンナとマリアナは、ベイガザード王国の姫が、意外にも至極真っ当な注意を自身の国の貴族にしていたことに動揺をしている。


「ーーカイル殿下の婚約者って、コーション国を乗っ取るために、ベイガザード王国から来たのよ、ね?」


「ーーさように、聞いておりますが……」


 アンジェリアの呟きをアンナが拾って答えだが、アンナもベイガザード王国の姫の対応を理解出来ないようだ。


 ーーーー自国の貴族を敵に回すような振る舞い……


「ベイガザード王国の姫は何を考えていらっしゃるのかしら……?」

読んで頂きありがとうございます!

まだまだ話は続きます。

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