3番目の婚約解消 33 呪詛の犯人Ⅱ ーフォーガス王女ー
ーーーーっ! コーナー様って、まさか!!
アンジェリアは1年前にルルドと転移魔法に失敗し、フォーガス国へと逃れた事を思い出した。
ーーーーフォーガス国の王族専用の庭園で、出会った、あの王女様だわ!
ルルドから呪詛の犯人の名前を聞いてアンジェリアは驚き、みるみる内に顔色が悪くなった。
「その様子だと、リアは会ったことがあるみたいだね。ルカの従姉にあたる王女だーー兄上の話では、なかなか気の強そうな女だと言っていたな」
「ーーシャルは会ったことがあるのね?」
「あぁ。兄上はルカを気に入っているらしくて、王太子にさせようと画策しているからね。ちょくちょくお忍びで、フォーガスへ出向いて、何かと様子を見ているようだよ。それで、犯人に遭遇したらしい」
「じゃぁ、犯人を見つけたのって、シャルなの?」
ライアルト殿下に呪詛をかけた人間捜しを始めてから、5年以上の月日を経ている。サスティアル王国から間者を、大陸にある疑わしい国々に放って、大捜索をしていた。それを、偶然フォーガス国へ出向いていたアランが見つけたらしい。
「そう、兄上は本当にもっているよね! もちろん、サスティアル王国からもフォーガス国に何人かの魔導士を放ったんだよ? でも、サスティアル王国に帰ってきた人間は誰もいなかった。初めから、フォーガス国とエステリア国が特に怪しいとは分かっていたけれど、それでも魔導士が殺られたのは想定外過ぎて驚いたよ」
「なっ! では、その、コーナー様に、サスティアル王国の魔導士が殺されたと?」
「恐らく間違いないだろうね。古の魔法使いがサスティアル王国の人間だったことから、先祖帰りして、加護のついた王女が産まれたのだろうと考えている。そして、その加護が運悪く呪詛だったと言うことさ。兄上がその王女に目星を着けて、バレないように、殺されないように魔導士に、慎重に周囲を探らせたんだけれど、山のような殺害歴だったよ」
「ーー!!」
コーナー王女と言えば、コーション国の研究所を任され、医術の革新的な技術を発表をした事もある。そんな人間を癒す研究を担っていたコーナー王女に、まさか殺害歴があり、しかも複数だとはアンジェリアは信じられなかった。
「リア、彼女はね、幼いときから呪詛を使っていたようなんだ。初めの頃は、気に入らない侍女達、王宮に出入りしていた商人達が狙われたようだ。皆、原因不明の病や事故で命を落としている。死亡した人間は爵位と関係のない人間が多くて、たいした捜査もしないで、片付けられている。」
「なっ! そんな!」
人間の命を爵位に関連づけるなんて、あまりに酷いとアンジェリアは怒りを覚えた。
「影にコーナー王女の呪詛の始末をしていた身内がいる。サスティアルの魔導士の調査では前王太后が黒幕だ。コーナー王女は幼少期に流感にかかり、同じく病床にあった前王太后のいる離宮で、長期間過ごしている。その際、前王太后は曾孫の加護が呪詛と知って、隠すように手を回していたらしい。先祖帰りした曾孫の加護が呪詛となれば、王家とってはマイナスなイメージだからね。そして、前王太后はエステリア国の人間と言うことも分かった」
フォーガス国の王族にエステリア国に関係の深い人間がいたということだ。そして、コーション国の前国王の前王妃に対する裏切りに、エステリア国がフォーガス国の前王太后を頼った。
「ーーもしかして、エステリア国に呪詛を使えると話したのって、フォーガス国の前王太后?」
「あぁ、曾孫に呪詛の加護がある事をエステリアにばらしたんだろうな。それまで、フォーガス国の前国王も、息子の現国王さえ、コーナー王女の加護持ちを必死に周囲に隠し続けていたというのに。まぁ、コーナー王女の呪詛は、止めようとした人間を呪詛で殺めるかも知れないけれどね」
コーナー王女の誕生時に、加護持ちであること、そして残虐性を知っていれば、サスティアル王国として、直ぐに保護と隔離が出来たのだとルルドは悔しそうに呟いた。
ーーーー確かに、産まれて直ぐならば、魔術を封印して呪詛も使わずに生きれたのかもしれない……
「前王太后や国王達がコーナー王女の呪詛を長年隠したせいで、罪のない人間の屍が山のように積み上げられた。今後、全てが明らかになれば前王太后や国王には重い処罰、コーナー王女には処刑は免れぬ。いや、必ずそう、させる」
ルルドからはコーナー王女の罪を暴き、償わせるという強い決意をアンジェリアは感じた。そのためには、ライアルト王子に呪詛をかけたのがコーナー王女だと証明しなくてはならない。
「でも、どうして? コーナー王女はライアルト殿下に呪詛をかけたのかしら? いくらエステリア国の頼みでも、他国の第1王子に呪詛をかける? 王族に手を出すなんて、リスクが大き過ぎるわ」
ルルドの説明では、コーナー王女は爵位と関係のない人間ばかりを呪詛で排除してきたと言っていた。ならば、祖母に言いくるめられたとしても、他国の王子を狙うとは考えられない。
「でも、コーナー王女は、ライアルトに呪詛をかけたーーそれは、リア、君がガーランド王国の第一王子の婚約者に選ばれたとの嘘を信じたからなんだ。ルカ=フォーガス=セシールの想い人で、ガーランド王国の時期王太子の婚約者だと、真っ赤な嘘を吹き込まれたらしい」
「えっ?! 私がライアルト殿下の婚約者? そんな話はこれまで1度も!! それに、私がライアルト殿下の婚約者だとしても、何故殿下に呪詛を?!」
ルルドの言葉にアンジェリアは驚いて目を見開いた。アンジェリアは今まで1度もライアルトの婚約者候補に上がったことはないのだ。
「うん。だから、嘘なんだーーでも、コーナー王女はそれを信じた。そして、コーナー王女は、従弟のルカが心底好きだったのさ。ルカと結ばれて、フォーガス国の統治者になろうと思うくらいなんだ。なのに、ルカはリア、君に想いを寄せていた。ライアルトの婚約者だと聞いていた、君にね」
「そんな! では、嫉妬で呪詛を使ったということ?! じゃぁ、なんで私を呪わなかったのよ?!」
ルカの事が好きならば、アンジェリアに呪詛をかけて、排除を企めば良かったのてはないか、とアンジェリアは思った。第一王子のライアルトに呪詛をかけるよりも、公爵令嬢のアンジェリアに呪詛をかけた方がリスクは少ない。それに、ガーランド王国にいた時は、アンジェリアはまだサスティアル王国の王位継承権を持っていなかったのだ。
「そうだね。リアに呪詛をかけた方が、確実にルカとリアを引き裂く事ができる。実際、コーナー王女はリア、君に呪詛をかけたんだよ? 魔導士の調べでは、呪詛が効かなくて、コーナー王女は大層な怒りで暴れたらしい」
「えっ? 私に呪詛がかけられた?!」
コーナー王女が呪詛をアンジェリアにかけたとすれば、時期は姉のタチアナがライアルトの婚約者候補に上がった頃だ。しかし、その頃、アンジェリアに体の不調は全く見られなかった。
ーーーーどういう事?! 何人も人を殺めたコーナー王女の呪詛が効かないなんて……まさか?!
アンジェリアが頭に浮かんだ考えにハッとして、ルルドの顔を見つめた。
「リア、気がついた? そう、リアの加護は癒し。癒しの加護がついた人間を呪ったとしても、自然に自分自身を癒してしまう。リアに危害を加えるには、リアが魔力を大量消費した時に、致命的な暴力を加えるしかない。だから、サスティアル王国でも上位の魔力を有するリアに、コーナー王女の呪詛では全く効かなかったんだ」
「では、私に呪詛が効かなくて、婚約者相手と誤解した、ライアルト殿下に、呪詛を?」
アンジェリアはあまりの事実に、血の気が引いて指先が冷たくなっていくように感じた。
「うん。ライアルトに軽めの呪詛をかければ、延命のために魔宝石が必要になる。婚約者のリアなら、ライアルトのために、魔宝石を得るためコーション国に人質になるのも厭わないと、前王太后が嘘を吹き込んだのさ」
「でも、そんな嘘、いつまでも真実がバレないはずないわ!」
コーナー王女はフォーガス国の研究所に勤務しており、外部の情報も入手しやすいだろう。いくら前王太后が言い張っても、嘘はいずれ明かされてしまう。
「リアの言う通り。すでにコーナー王女はリアがライアルト殿下の婚約者ではなかったと知った。騙されたコーナー王女は、前王太后の側近を全て呪詛にかけたようだ。この6年近くで相次いで、側近達が不審死を遂げている。さらに、魔導士の調べでは、前王太后の住む離宮へは、コーナー王女の足が遠退いている。今は、高齢であるはずの前王太后の体調も呪詛か病かで危ういらしいよ。もしかしたら、今この時にも亡くなっているかもしれないほどにね」
ーーーーえ、? では前王太后は罰せられなくこの世を去るの?? そして、コーナー王女は、それ程簡単に人の命を奪うというの……?
最大の黒幕であるフォーガス国の前王太后が、何のおとがめも受けずにこの世を去る理不尽さをアンジェリアは堪らなく憎たらしかった。
一方で、制御の効かないコーナー王女の呪詛の力が強力だと分かり、アンジェリアはフォーガス国の関係者が今後も次々と殺されてしまうのではないかと心配になった。
ーーーールカは、大丈夫なの?
読んで頂きありがとうございます!
まだまだ話は続きます。
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