3番目の婚約解消 29 ガーランド王国の内情
3番目の婚約解消が長くなっています。
もうしばらく、お話にお付き合いくださいませm(_ _)m
アンジェリアの兄のギルバードと姉のセライアがコーション国に来てからというもの、アンジェリアは僅かでも時間があれば、2人の元に顔を出して一緒の時を過ごすようにした。
と言っても、ギルバードはガーランド王国の使者代表として、コーション国の王都に行ったり来たりしており、オルソン公爵家の屋敷にいないことも多い。
反対にセライアは、後日コーション国の代表と謁見の予定があるくらいで、のんびりとした時間をアンジェリアと過ごしていた。
「いよいよ明後日は婚約式ね! 準備とかは忙しくないの?」
アンジェリアがセライアの部屋を尋ねると、アンジェリアが来るのを予測してかお菓子の準備もバッチリにセライアが出迎えた。
「婚約って言っても、勢力争いが目玉の、形だけの儀式なのよ? それに3回目の婚約だもの、期待もしていないわ」
「ふーん、そんなもんかしら?」
レオンはアンジェリアの事が好きだと言うことを、アンジェリアは誰にも口外していない。マリアナにも箝口令を強いている。
だから、セライアも知るはずもなく、からかわれないことにアンジェリアは安堵していた。
ーーーーこんな、国内の反乱が起きそうなときに、余計なことを考えたくない……
「ねぇ? セライアお姉様、セシル様との婚約式はいつになるの?」
セライアは侯爵家の嗣子と幼い時から婚約を約束していた。2人の仮の婚約式は、幼いながらも、教会で壮大に開かれたのをアンジェリアは覚えている。
「ラークブルグ侯爵家はコーディル公爵家の予定に合わせてくれるわ。私は、妹が大変なときに、能天気に婚約式なんてしたくないのーータチアナお姉様とは、違ってね」
アンジェリアの質問にセライアはため息をつきながらこたえた。アンジェリアは、聞いてはいけないことを質問したのかと不安になって、セライアの侍女に視線を向けた。
「セライア様、アンジェリア様が困っておいでですよ」
「ーーあぁ、ごめんなさいね。アンジェリアは知らないのよね……。先日、タチアナお姉様がライアルト殿下の婚約者に指名をしてほしいと王妃陛下に直談判なさったのよ……もう、王妃陛下のお茶会で嘆願したものだから、コーディル公爵家はお笑い者よ!!」
「ーーえっ?!」
タチアナの思いもがけない行動にアンジェリアも開いた口が閉まらない。タチアナはライアルト殿下の婚約者候補筆頭だ。そんなに慌てなくても、ライアルト殿下の体調が回復さえすれば、タチアナが婚約者に指名されるはずである。
「ーー第2王子の件は知ってるわよね? 婚約者がライアルト殿下に毒を盛った件。あの件で、第2王子マティアス殿下は失脚して、今は国教会の改革に乗り出しているわ。元々、マティアス殿下は国政に野心もない方だったから、問題なかったんだけれどーー兄の第1、2の王子がいなくなったものだから、カーディス殿下派が力をつけてきてね……」
「カーディス殿下が、まさか、王太子になると?」
第2王子のマティアス殿下は側妃陛下のお子だから、失脚は国内安定のためにも歓迎されているはずだ。対して、第3王子のカーディス殿下はライアルト殿下と同じ母親、王妃陛下から生まれた王子である。
アンジェリアがガーランド王国にいるときは、カーディス殿下はライアルト殿下の国政補佐を望まれていたはずだった。
「ライアルト殿下の容態が思わしくないからね。最近じゃ、国民も第1王子が毒を飲まされたことを知っているくらいなの。で、健康に不安がある第1王子よりも、第3王子が王太子に相応しいとの声が増えているの。カーディス殿下も甘やかされて育った方だから、その気になっているみたいで……」
「それで、カーディス殿下が野心を膨らました、と?」
「えぇ、周りにそそのかされて、王太子に相応しいのは自分だとか言っちゃってるらしいわ」
ーーーーなんということ……それでは、ガーランド王国内が分裂してしまうわ
カーディス殿下の指南役は、好戦的な性格のルーガラ侯爵家がついていた。ルーガラ侯爵家といえば、現当主は争いを好むとして有名で、国内の小競り合いがあれば、すぐに挙兵する困り者として迷惑がられていた。しかも、そのルーガラ侯爵家は武器の調達の関係で、ベイガザード王国と繋がっていると、前々から噂まであるのだ。
「ならば、タチアナお姉様は、ベイガザード王国を牽制して、ライアルト殿下との婚約を急いだのでは?」
第1王子の後ろ楯にコーディル公爵家がいることを他の貴族に示したかったのではないかと、アンジェリアが口にすると、セライアは目を伏せて首を振った。
「でもね、ライアルト殿下のバックにコーディル公爵家があるのは、国内外に知れ渡っているのよ? それに、最近のタチアナお姉様の様子は何だか変なの。きっとお姉様は、ライアルト殿下の立場を固持して、自分の王太子妃の立場を確立したいのよーーっ、アンジェの婚約式前に変な話を聞かせたしまったわね。難しい話は、ギル兄様にお任せして、さぁ、お茶でも飲んで気を休めましょ」
タチアナの様子が変というのは、どういう事だろうとアンジェリアがセライアを見つめると、はっと我に返ったセライアが一方的に話を終えてしまった。
アンジェリアはガーランド王国の内情を詳しく知りたがったが、セライアの侍女に目配せしても今度はセライアに取り持ってくれる気配は全くなかった。
ーーーーコーション国のカイル殿下の立太子の儀もあるのに、なんで問題が山積みなのかしら……
もし、ガーランド王国のカーディス殿下が王太子になるとすれば、ベイガザード王国寄りに切り替わるとも限らない。さらに、コーション国の内乱が起きた時、ガーランド王国がカイル派につくとなれば、オルソン公爵派の敗北は目に見えていた。
ーーーーセライアお姉様が、カーディス殿下の動向を知っているのだから、ギルバードお兄様からオルソン公爵にも話は伝わっているはず……
今、コーディル公爵家は、アンジェリアがコーション国に人質になっているためにオルソン公爵家に協力する体制をとっていた。
そのため、ガーランド王国がカイル派につくとなれば、コーディル公爵家はガーランド王家と対立することになる。そうすれば、タチアナの婚約の話は消滅するかもしれないし、コーディル公爵自体も国賊と見られ兼ねない。
アンジェリアはレオンと自身の婚約式が、コーディル公爵家にとって凶となるのではないかと不安でいっぱいになった。
読んで頂きありがとうございます!
まだまだ話は続きます。
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