3番目の婚約解消 27 レオンの告白
ゴールデンウィークが終わってしまいました……
なんだか淋しいですね(>_<)
アンジェリアとレオンの婚約発表は、カイルの立太子が決まったニュースに対抗するように、すぐにコーション国中に伝えられた。
正式な婚約式は、カイルとベイガザード王国の姫との婚約式より前ということで、オルソン公爵派が巻き返しを狙うものだと誰が見ても明らかだった。
3週間後に急遽予定された、オルソン公爵領の教会で行われるアンジェリアの婚約式は、簡素で形式的なものになる。カイルの婚約式にアンジェリアがレオンの正式な婚約者として参加するためには、急がなくてはならない。
ーーーーこれで、婚約の回数が3回になってしまったわ……
婚約式についても、回数を重ねる内、段々と規模が小さなものになってきている。
実際、自身の婚約式よりも、カイルの婚約式に着ていくドレスの方が断然豪華絢爛である。
「そう言えば、ガーランド王国からの使者って、誰がやって来るのかしら? たしか……、明日ご到着よね?」
やっぱり、セーシル公爵あたり? なんて、朝食後の紅茶タイムにマリアナに話しかけると、マリアナは呆れた顔をした。アンナも苦笑をして、アンジェリアに答える。
「ガーランド王国からの使者は、本日午後にご到着予定です。昨日もお伝えしたのですが……、使者の方は政務長官補佐の方だと聞いております」
「ーー、ごめんなさい。毎日目まぐるしくて、聞いてなかったみたいーーそう、政務長官補佐の方、ね……」
ガーランド王国の政務長官補佐は分野ごとに5人程度任命されており、かなりの人数がその責務を担っている。
ーーーーおそらく、伯爵家以上の爵位の方が来るのよね……
会ったことのない、知らない人間だと嫌だなと思いアンジェリアは憂鬱になった。
「まぁ、最悪は、昔会ったことがあるのに、名前が分からないとかよね? 大丈夫? アンジェ?」
マリアナがアンジェリアをからかって言うと、アンジェリアはさらに頭を項垂れた。
「ガーランド王国にいた頃は、お茶会はセライア姉様に任せていたから、自信ないのよ……。アンナは貴族名鑑に悔しい?」
幼い頃から女官になるべく訓練されたアンナならば、貴族に詳しいのではないかと尋ねると、アンナは首を傾けた。
「一応は、貴族名鑑の内容を暗記させられましたが……。もう、ガーランド王国を離れて7年。有力な貴族の顔触れも変わっておりましょう……」
「大丈夫よ! 上位貴族ならそうそう家門は変わらないと思うわ! アンナが昔覚えていたななら、私が覚えていなかったり、知らなくても大丈夫そうね!」
アンナの言葉にアンジェリアが喜ぶと、マリアナは喜びすぎだと笑った。
コンコンコン!
「ーーアンジェリア様、伝令がありまして、使者の方が昼頃にご到着されるそうでございますーー」
アンジェリアの部屋の扉が執事によってノックされると、ちょうど話をしていたガーランド王国からの使者の訪問を知らせるものだった。
「少し、早めに着くのね? ダイアナ様はご存知なの?」
屋敷の主人であるダイアナへの確認をすれば、執事は肯定の返事を返した。
「ーー先程、ルルド殿下、レイモンド閣下にも連絡に向かっておりますゆえ、ご心配ないかと」
「そう、ありがとう。念のため、アマリア様にもお伝えしてね」
「承りました」
執事が静かに退室すると、マリアナとアンナが急いで、アンジェリアの着替えの準備に入った。
「自国の人間に会うんだから、そこまで張り切らなくても……」
「アンジェは、コーディル公爵令嬢なのよ? 万が一敵対する派閥の人間が使者なら、コーディル公爵家に泥を塗ることになるわ!」
アンジェリアの言葉にマリアナはパシッと叱り、準備を急ぐ。
ーーーー結局、ガーランド王国内も、一枚岩ではないのよね……
どの国も派閥の権力争いばかりだと、アンジェリアは頭が痛くなった。
「ーー、アンジェ? ちょっと良いかな?」
使者を迎える準備も整いつつある頃、アンジェリアの元にレオンがやって来た。
レオンも既に正装に着替えて、THE! 正統派の王子様に見える。
ーーーー黙っていたら、ちゃんとした王子様なのよね……、どっか抜けてるけれど
「ーーアンジェ、今、失礼な事考えただろう?」
「うっ……」
アンジェリアの頭の中を見透かしたようなレオンの言葉に、アンジェリアは気まずさを覚えてレオンから視線を外した。
「少し、アンジェと話があるんだ。人払いできる?」
「マリアナは残ってもらうわよ?」
「……わかった……」
レオンはため息をつくと、アンジェリアの部屋から侍女や護衛を締め出した。アンナも不服そうにしながら、部屋を出ていく。
「なに? 人払いなんかして。ガーランド王国の使者に関わること?」
もうすぐ、ガーランド王国からの使者が屋敷に到着する。レオンはコーション国側の代表として、忙しくなるはすだ。
「使者殿が来ると、アンジェとのこうした時間も取りにくくなるだろう? その前に、アンジェと話がしたかったんだ」
改まったレオンの様子にアンジェリアは不思議に思いなからも、お茶を勧めた。
レオンが知らなくて、アンジェリアが知っているとなれば、サスティアル王国の動きについて把握したいのだろう。アンジェリアはそう考え付いて、申し訳なさそうにレオンに切り出した。
「もしかして、サスティアル王国の出方を知りたかった? カイル殿下の婚約式に向けて、ルルドがやけに張り切っているから、何かしら起こるんだろうけれどーーごめんね、私、何も教えられていないーー」
「違うんだ。僕は、アンジェとの婚約式で話があるんだ」
ーーーー? 私との婚約式?
レオンがアンジェリアの予想と反することを口にしたので、アンジェリアは思わずポカーンとした表情になった。
レオンとアンジェリアの婚約式は、参加者も限定的で短時間で終わる予定になっている。変更についての連絡はアンジェリアの元に届いていなかったはずだ。
ーーーーレオンとの婚約式は、レオンの派閥に勢いを持たせるためだけのもの……
「まさか、何か、問題が発生したとか?」
今さら、エステリア国の反対が起きたのではないかとアンジェリアは不安になる。ガーランド王国の使者はあと少しで到着するのだ。どんな火種も避けておきたい。
「違うんだ! あの……」
いつも以上に歯切れの悪いレオンにマリアナの表情がだんだん死んでいく。使者の出迎えにあたって、無駄な時間は使いたくないと、マリアナの顔が訴えている。
「大丈夫、ガーランド王国も婚約式には反対していないわ。それに、形式的なものでしょう? 何も心配などーー」
「違うんだ! だから!! ーーっ! 僕は、アンジェとの婚約が心から、嬉しくて。その、あの!! 僕は、アンジェが好きなんだ!」
ーーーーへ? 何を言い出すんだ、この王子は……
アンジェリアは呆気にとられて、真っ赤に染まったレオンの顔を眺めた。レオンは首まで真っ赤にして、涙目でアンジェリアを見つめている。
「ーー、ありがとう、ございます??」
「なぜ、疑問系、なんだ……」
とりあえず、何か返事をしなければと、アンジェリアがお礼を述べると、レオンはガックリと肩を落とした。
「僕は、アンジェとの婚約をずっと続けていきたい。アンジェを守っていきたいんだーーだから、あぁ、もう!! アンジェさえ良ければ、婚約の、その先の、僕との婚姻も、考えてほしいってこと!!」
ーーーー?!
幼馴染みのような、友人のようなレオンの告白にアンジェリアは、驚いて目をパチパチさせた。マリアナも驚いてレオンを凝視している。
「ーーつまりは、レオンは、私が、好きなの?」
「そう言っている!!」
ーーーーわぁ!!
間抜けなアンジェリアの質問にレオンは顔を赤く染めて断言した。
「ーーガーランド王国から使者が来て、僕たちの婚約式、兄上の婚約式、それから兄上の立太子の儀……。これから、どんな事が起きるかわからない。だから、僕の気持ちを、アンジェに知ってほしかった」
「ーーーー」
「すぐに、どうのこうのって言う事じゃない。アンジェには、一生、一緒にいてほしいって僕は考えている。ただそれだけ、知っていて欲しくて」
「でも!」
「今すぐ、答えは出さないで。コーション国の未来が見えてきてから、答えを教えてほしいんだ」
いつも以上に饒舌に切り替わったレオンに対して、アンジェリアは返す言葉が見つからなかった。今すぐ答えをしなくても良いと重ねて言うレオンにアンジェリアが頷くと、レオンは顔を赤くしながらも、満足げに部屋を後にした。
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