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3番目の婚約解消 26 基盤を盤石に

「レイ叔父様も、カイル殿下が王太子になることを予測しておられましたの?」


 落ち着き払った様子のレイモンドにアンジェリアが問うと、静かに微笑んだ。


「あれれ? アンジェリア、レイっと呼ぶように言っているではないかーーまぁ、良いーーそうだね、状況がどう転ぶか、判断がつかなかったからね? これでも大人なんだ。いろんな場合を想定していたよ? アンジェリア、そんな不安な顔をしないで。大丈夫、まだまだ想定内。ガーランドにしても、とりあえず、アンジェリアをレオンの婚約者にできて一安心だろう」


 レイモンドは心配で強ばったアンジェリアの頬を撫でると、訓練で疲れたからと、アンナにお茶を用意するよう指示を出した。マリアナを残し、アンナは渋々と部屋から出ていった。


 ーーーーアンナに聞かせたくはない、話……?


「叔父上は、何かお考えがあるのですか?」


 いつもとは異なる雰囲気のレイモンドにルルドが問いかけると、いつもの悪い笑みを浮かべた。


「おや? ルルドは分からないのかい? ガーランドは国の面子を保ちたいからと、アンジェリアにコーション国の次期国王を宛がいたいのだろう? そして、王太子を逃したレオンはカイルを倒したい。共闘としては問題なかろう? エステリアは、他国の王子に毒を盛った責で、レオンに人質としてアマリアを宛がわされたとでも思えば良い」


「ですが、それでは、リアの将来が!!」


「なぁに、婚約ならば何回でも繰り返すことが出来る。リアの将来への心配は不要だ。兄上も保証しておるーーとりあえずは、ガーランドとコーションの盟約をアピールするんだ。そして、ベイガザードを倒す、その時を待てば良い」


 ーーーー婚約を繰り返す? 何を考えているの?


 アンジェリアの不安などお構いなしに、好戦的なレイモンドが黒い笑顔で微笑めば、それまでも顔色の悪かったマリアナが恐怖でガタガタと震え出した。


 それまで会話の内容を黙って聞いていたレオンは、先程からのレイモンドの話でサスティアル王国も計画を了承済みだと感じた。軍事国家のベイガザード王国をバックにしたカイル派と戦うためには頼もしい。


「では、共にベイガザード王国派を倒すためーー」


「違う、ベイガザード王国そのものを倒すんだ」


「「「ーー!!」」」


 レオンの言葉を遮り、レイモンドが発した言葉に、部屋の中は凍りついた。ルルドまでも、ぎょっとしてレイモンドを凝視している。


「ーー兄上、サスティアル国王も同じお考えだ。ベイガザード王族が大陸に存在する限り、場所を変え、国を変えて侵略を繰り返すだろう。ならば、今回限で国そのものを無くす他あるまい」


「でも、ベイガザード王国自体を相手にするとなると、我がコーション国だけでは倒せません!! かの国は今や、軍事最強国家と言えます。いくら、ガーランド王国やエステリア国がコーション国の支持をしようとも、コーション国からベイガザード王国を排除するだけで精一杯。それ以上は難しいかと」


 ーーーー確かに、ガーランド王国がベイガザード王国を倒すまでの力を、貸してくれる保証もない……


 レイモンドの話に、レオンも顔色を悪くして訴えた。アンジェリアは口を閉ざし、しばらく思案をしていた。


「ガーランドは参加せざるを得ないよ? そう仕向けるのさーーまぁ、もう1ヶ国に加勢してもらうことにも、なるかな?」


 これ以上はヒントは上げないよ? 自分で考えるんだと、レイモンドが言うので、日頃から考えが浅いと言われ続けていたレオンは押し黙ってしまう。

 反対にルルドは思う所があるのか、レイモンドの話に深く頷いており、何だか楽しそうだ。


 ーーーーものすごく、嫌な、予感がする……


「さしあたっては、カイルの婚約式と立太子の儀だな。それまでに、こちら側もレオンとアンジェリアの婚約を発表しよう! ガーランド王国からも良いタイミングで使者がやって来るしな。準備で忙しくなるぞ!!」


「ーー!! まさか、ガーランド王国から使者が来るのって、この自体を予測して?!」


 レイモンドの言葉にアンジェリアが反応すると、ルルドがレイモンドの言葉を補足するため、口を開いた。


「もしかすると、ガーランド王国はカイルが立太子の儀に進むことも予測していたかもね。でも、あくまでもカイルの婚約式への参加を理由に、リアの様子を見に来ることが目的なはずさ。まぁ、おまけとして、ライアルトに呪術を使った黒幕を罠にかけるためでもあるんだけれど」


「?! 呪術を使った者が判明したのですか?!」


 アンジェリアが驚いて声をあげれば、側にいたレオンも身を乗り出して目を丸くしている。


「ふふ……、これは、カイルの婚約式でのお楽しみさ。コーションのカイル、ガーランド王国の使者、エステリアのアマリア……が揃うんだ。犯人を挙げるにはもってこいのステージだろう?」


 レイモンドが驚く2人を見て楽しそうに笑うと、ルルドが気の毒そうにアンジェリアを見て言った。


「大丈夫、リアには怪我は絶対にさせないよ? リアは自然体で、レオンと一緒にカイルの婚約式に参加すれば良いから。でも、不本意だけれど、その前にレオンとの婚約を発表しないとね? 準備はダイアナさんに任せても良いのかな?」


 ルルドがレオンに尋ねるとレオンは大丈夫だと答えた。


「レオンにリア、急な婚約で2人には申し訳ないが、これも政略の一貫だと思って堪えてくれ。まぁ、上手く事が運んで落ち着いたら、状況を見て相談し、婚約解消するか考えれば良い」


 ーー賭けても良い、解消させられるだろうなーーとレイモンドが囁くと、ルルドはガンとレイモンドの脛を蹴り飛ばした。


「痛てぇ!!」


「叔父様は、少し真面目になさってください。これからは、叔父上の得意分野の争い事が増えるんですから!」


「何を言っているんだ?! 俺の得意分野はいつだって“美“だって言っているだろう?!」


 ルルドが頭が痛いとばかりに額に手をやり、天井を見上げてため息をついた。レイモンドはそんなルルドを可笑しそうに笑っており、今度こそ、部屋の中は少し落ち着きを取り戻した。

読んで頂きありがとうございます!

まだまだ話は続きます。

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