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3番目の婚約解消 21 サスティアルの公女

 アンジェリアにもうすぐ公女到着の知らせを持ってきたのは、ロイターと部屋を出ていったアンナだった。

 手には新しいが目立たない色合いのドレスを持った侍女も後ろに控えている。


「公女様をお迎えするため、こちらのドレスにーー! あっ!! ル、ルルド殿下!!」


 アンナはアンジェリアの目を見ずに部屋に入ってきたため、ルルドが部屋にいることに気づくのが遅れた。そして、アンジェリア、マリアナ、ルルドの盛装した姿に唖然とした表情を浮かべた。


「まさか…、君は、こんな地味なドレスをリアに着せようとしていたの? エステリアの公女を迎えるのに?」


 はっ! っとルルドは馬鹿にしたような笑い方をすると、一瞬で侍女の持っていたドレスを灰にしてしまった。アンナに付き従ってきた侍女は、可愛そうにも目の前の出来事に腰を抜かして、座り込んでしまっている。


「ーーも、申し訳ありません。ドレスはオルソン公爵閣下から、アンジェリア様へと用意された品でございました……。私どもも、色味について抗議をいたしましたが、聞き入れてもらえずーー」


「ーーわかった。オルソンの考えは、サスティアルを敵にしても構わないと言うことだな?」


 アンナが慌てて、灰にしたドレスの経緯をルルドに伝えると、報告の途中でルルドはアンナの話を遮った。アンナの後ろで座んで元ドレスの灰の塊を持った侍女は、恐怖にガクガクと震え泣き出している。


「ルルド、そんなにアンナを責めないで。アンナはガーランド国王の使いだし、後ろの侍女もオルソン公爵閣下に指示を出されただけなのよ? 自ら反意を示せない立場の人間に怒りをぶつけるなんて」


 アンジェリアは顔を青くしたアンナの前に立ち、ルルドに怒りを収めるよう諭した。


「リアの言う通りにしていたら、サスティアル王族としての威厳が蔑ろにされてしまうよ? 現に、オルソンはリアに対して舐めた態度を示している。エステリア国とレオンを結びつけるなんて」


「それを言うなら、サスティアル王国も同じじゃない! レオンとの婚約をずっと保留したままだし。私は、レオンと一緒にはなならないから、結果的には破棄をするのよ?」


 ルルドの折れない態度にアンジェリアもついつい頭に血が上り、売り言葉に買い言葉のようになってしまった。アンナやマリアナはサスティアル王族同士の喧嘩に益々顔色を悪くしていく。


 オルソン公爵家の侍女が耐えられず、助けを呼びに行こうと部屋の扉に手を掛けたが、開かない。泣き腫らした顔でも、必死にドアノブを見ると鍵穴が凍りついていた。


「はい、はーい!! 2人とも、喧嘩しないよー!! やっぱり、ルルドだけじゃ心もとないだろう? 来て良かったー! やぁ! アンジェリア、そのドレス、すごーく似合ってるよ~」


 緊迫した空気を、変な方向へぶち壊す間延びした声がした。アンジェリアが溜め息をしつつ、顔を向けると、こちらもきらびやかなサスティアル王族の礼服を纏ったレイモンドがヒラヒラと手を振っていた。


「叔父上、何故ここに?!」


 ルルドはレイモンドの登場を予測していなかったのか驚いて目を丸くした。ふざけたような話し方のレイモンドが現れたことで、部屋の雰囲気が幾分、落ち着きを取り戻す。


「あー、驚いた? いや、エステリア国の公女の件をサーシャ姉上がひどく心配してねぇ……出来る限りの箔をつけろってゆーから、(オドシニ)来ちゃった」


 きゃは! っと可愛らしくレイモンドは笑ったが、アンジェリアには小さく、"脅し"という言葉が聞こえたような気がした。


「お母様が、ご心配を? そう……」


「リア?」


 コーディル公爵家はガーランド国王に近い存在だ。公爵の娘であるアンジェリアが、ガーランド国王の命を遂行出来ない可能性を予測して、母であるサーシャ=コーディル公爵夫人がレイモンドを遣わせたのではないかと、アンジェリアは勘ぐってしまう。

 ルルドはレイモンドのふざけた態度よりもアンジェリアの気落ちした雰囲気が不安だったが、レイモンドの登場で時間を使いすぎたらしい。

 アンジェリアの私室の扉をノックする音があり、エステリア国公女の到着を知らせてきた。



 ◇◇◇◇◇



「皆様、お揃いですな? 今、屋敷の表門より連絡が入り、もうしばらくでこちらに公女様がご到着されます」


 アンジェリアがオルソン公爵の屋敷の正面玄関口に差し掛かると、向こうから筆頭執事の声が聞こえてきた。とうとう、もうすぐエステリア国公女が到着するらしい。

 チラッと見えた限りては、屋敷に使えている人間や、ダイアナ=オルソン公爵夫人、ルーシーらの集団も見えた。


「ーーへぇ、アンジェリアが来てもいないのに、揃ったと言うんだねぇーー」


 玄関まで聞こえない声量でボソッと溢したのは、悪い顔をしたレイモンド。ルルドに至っては、ドス黒いオーラが体にまとわりついている。


「……きっと、レオンが公女様を迎えに行ったから、私が機嫌を損ねて部屋から出て来ないと思ってるのよ……。ほら、それに、サスティアル王族がわざわざ、エステリア国の公女のために出迎えるとは思わなかったとか…?」


「それも、そうか……」


 ルルドのドス黒いオーラが少し収まり、アンジェリアも少しだけ落ち着きを取り戻した。

 そして、アンジェリアが玄関前で一呼吸するため立ち止まると、ルルドはエスコートの手を差し出してくれた。


「今日のリアはとても綺麗だーールカ君に怒られてしまうほどに。さぁ、姫、お手をどうぞ」


 不安気なアンジェリアを励ますようにルルドが真剣な顔でアンジェリアを支えてくれる。レイモンドもルルドに倣うように、反対の腕を差し出すと、アンジェリアに手を添えるよう促す。

 アンジェリアは、右手をルルド、左手をレイモンドに預け、玄関ホールへ進み出た。




「ーー!! アンジェリア様!!」


 ダイアナ公爵夫人が最初に玄関ホールへやって来たアンジェリアに気がついた。ダイアナ公爵夫人の声に侍女や屋敷の人間が波を打ったようにさざめき出す。


 もうすぐ公女が到着するときになって現れたアンジェリアへの驚きに、玄関ホールが収拾がつかなくなっていると、レイモンドが無言で周りを見回しながら、軽く手を上へかざした。

 すると、ホールに集まった人間が途端に頭を下げる姿勢に変わる。


 ーーーーま、魔力で服従を?!


 アンジェリアが一斉に腰を折った人々を唖然と見つめると、ルルドがアンジェリアの気配で勘違いに気がつき、小さな声で訂正した。


「リア、彼らはサスティアル王族に敬意を示しているだけさ。だってほら、僕ら最強国家の王位継承権トリオだから」


 ーーーートリオって……


 アンジェリアがこんな時にまでふざけているルルドをじとーっと、冷めた目で見た。


「ふふ……、変な緊張は解けたようだね? ーーさぁ、世界1強国、サスティアル王族の公女殿下のおなりだ。リアは、サスティアル国王の姪であり、王位継承権をもつ。誰もリアの前では頭を下げなくてはならない。今までは、リアの厚意で分け隔てなく接していたものも、これからはそうはいかせない。エステリアの者を勝手に招いたんだ、序列を明確にしなくてはいけないよ? これからは、特に、ね?」


 ルルドはわざと大きな音量で、玄関ホールの人間隅々に行き渡るよう、良く響くよう魔力で声を載せた。

 横のレイモンドまでもが、真面目な顔で玄関ホールに睨みを効かせており、誰も恐れをなして、頭を下げた姿勢から直ることが出来ない。

 空気が重く張りつめ、居合わせた人間が皆冷や汗を流し、息を殺して静まり返っていた。余りの緊張をはらんだ雰囲気に、精神的にアンジェリア自身も限界を迎えたところで、フットマンからの知らせが入った。


「ーー!! エ、エステリア国、アマリア=ルーデン様の、ご、ご到着で、ございます!」


 ーーーーフットマンまで、玄関ホールの空気にのまれてどうするのよ?!


 サスティアル王族を両脇に従えて、玄関ホール中央に陣をとったアンジェリアは、まるでヒロインを迎え入れる悪女の構図だ。


 ーーーー出来れば、エステリア国の公女とは穏便にやり過ごしたかったのに……


 アンジェリアは対立した形での、エステリア国公女の迎え入れになってしまったことにひどい頭痛を覚えた。

読んで頂きありがとうございます!

3番目の婚約解消は、まだまだ続きます(-_-;)

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