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3回目の婚約解消⑳ サスティアル王国からの贈り物

 レオンの衝撃的な報告があったさらに3ヶ月後、とうとうオルソン公爵領の本邸に、エステリア国の公女がやって来る日になった。


 アンジェリアはこの日までに、急いでガーランド王国のコーディル公爵に連絡を送り、エステリア国の公女の件について報告していた。

 ガーランド王国からはすぐに返事があり、その内容はアンジェリアを憂鬱にさせていた。

 ガーランド王国は、エステリア国の公女を間違っても決してレオンの婚約者にさせぬようとの指示をアンジェリアにしてきたのだ。

 なんとしても第1王子のラインハルト王子のために、このまま継続した魔法石の確保を計りたい、そんなガーランド国王の意向が強く反映されていた。


 ーーーーまぁ、でも、エステリア国の公女がやってくる目的はレオンと結婚して、コーション国の王妃になることよね……


 アンジェリアにとってレオンは、婚約者候補と言えども、気のおけない友人のような存在だ。それをここに来て、なんとしてもアンジェリアに繋ぎ止めよと言うのは無理難題な話であり、ここ数日は面倒臭くなって、部屋に籠ってぐずぐずしていた。


「ーーレオン殿下は、エステリア国との国境まで、公女様をお迎えに朝早く出発されたそうです」


「あっ、そうなんだ。いくら国境まで近いからって言っても、朝早くに大変ね」


 アンナのレオン情報にどうでも良い返事をすると、ロイターとアンナは顔を見合せ、部屋を出ていった。


 元々、アンナもロイターもガーランド王国の命令でアンジェリアに従事している。だから、どうにかしてガーランド王国の指示通りにレオンとアンジェリアの仲を取り持ちたいのだろう。

 部屋に残ったマリアナは面白くなさそうな顔で、2人が出ていった扉を見ている。


「アンジェ、いっそうのこと、お2人をガーランド王国に戻してみたら? 主に不満のある者を側に置くのは、いざというときの邪魔になるわよ?」


「そんなことしたら、反逆を疑われてしまうわ。お父様も良いとは言わないでしょうし」


「僕はマリアナの意見に賛成だよ。リアの側に不満のある者を置いておけない。僕が代わりの従者を連れて来ても良いしね」


 マリアナとアンジェリアの会話に、毎度のように約束もなしに突然現れたのはルルドだ。ここ最近は、ルルドもアンナとロイターの態度やガーランド王国からの指示にも不満を示しており、喧嘩にならないよう、2人がいないときに来訪するようにお願いしているのである。


「……? あら? 今日のルルドは、何だかおめかしをしているのね?」


 アンジェリアは不満たらたらな、ルルドの言葉をスルッと無視して、形式張ったルルドの盛装をからかった。


「僕の話を無視するなんて、さすがサスティアル王族だね? リアもようやく、サスティアル王族としての身分が板についてきたんじゃない?」


 ルルドをからかったつもりが、簡単に逆に返されてしまい、アンジェリアはつまらなさそうな顔をした。


「そんな顔をしないで、最近塞ぎごみな従妹殿に、父上と兄上からの贈り物を持ってきたんだ」


「え?! サスティアル国王様からの贈り物??」


「ああ、アラン兄上からでもあるからね!!」


 ルルドがパチンと指を鳴らすとボボボーンと、目の前に大きな箱と中くらいの箱2つが現れた。


「ずいぶんと大きな箱ね……中身はなに?」


 サスティアル王国からの贈り物ならば、大抵いつもはアクセサリー類だ。初めて贈られる大きさに、アンジェリアは少しだけ弱腰になる。


「そんなに警戒しないで、傷つくから……ーーマリアナ、先ずはこの箱から開けて見せておくれーー慎重にね」


 2つの箱の内、小さな方をルルドは指を示して、開けるように言った。マリアナは言われた通りに、ゆっくりと箱をアンジェリアの前に運ぶと、慎重に蓋を開けた。


「「!?(ティアラだわ!!)」」


 箱から現れたのは、不思議な光を放つティアラだった。ティアラの中央には、サスティアル王族を表す紋章と強い光を放つ魔法石が輝いている。


「驚いた? これは、サスティアル王国の王位継承権を持つ王女に贈られるティアラだ。本来なら、サスティアル国王から、直接渡されるセレモニーもあるんだけれど。今回は、リアの立場をより明確に示したいという父上の意向に沿う形になった。ーー今日のエステリア国の王女との面会時には、これを必ずつけるように」


 いつものおふざけなく、真面目な表情でルルドが言うと、箱からティアラを静かに取り出し、アンジェリアの頭に載せた。


「うん。似合うね! エステリア国の公女をオルソン公爵家に招くと聞いて、直ぐに王宮魔法技師に作らせたんだ。うん、ぴったり!!」


 ルルドは驚き呆然とするアンジェリアの周りをくるりと回ると満足そうに微笑んだ。


 ーーーーサスティアル国王陛下とシャルは、私のためにティアラを……


 エステリア国の王族に連なる公女がオルソン公爵家に招かれると知り、サスティアル王国側が心配して急ピッチでティアラを用意したのだ。

 エステリア国の公女がどんなに歓迎を受けても、サスティアル王国をバックに持つアンジェリアの足元にも及ばない。アンジェリアに危険が迫ってこないよう、そして、アンジェリアに何かあればサスティアル王国が受けて立つーーそれを明確に表すようなティアラだった。


「ーーっ! ほん、とに、あ、ありがとう……」


 予想もしていなかった、サスティアル王国側の気配りにアンジェリアは思わず嗚咽を漏らした。エステリア国の公女が来訪すると知り3ヶ月、ガーランド王国からの指示や、アンナとロイターの態度に心を休める間もなくアンジェリアは過ごしてきた。

 そういえば、この3ヶ月はいつもより頻繁に、ルルドやレイモンドが代わる代わるアンジェリアの元を訪れていた気がする。

 2人とも言葉では、アンジェリアの心情を追求することは全くなかった。けれども、来訪には必ずアンジェリアの好きなチョコレートやら、茶葉やら、雑貨の類いまで何かと手土産を持ってきてくれていた。


 ーーーー少しでも、慰めようとしてくれていたのね……


 アンジェリアの母国よりも厚遇してくれるサスティアル王国にアンジェリアは感謝の気持ちで胸がいっぱいになった。


「ーーぐすん!! アンジェ、本当に、良かった…!」


 アンジェリアの横ではマリアナまでもティアラの贈り物に感動して泣き出した。そんな2人を、ルルドは優しく光で包み込んだ。


「「ーーへ?!」」


 いきなり、ルルドの魔法に晒されたアンジェリアとマリアナは感動の涙も引っ込み、お互い手を握り合う。

 ふわり優しい風が過ぎたかと思うと光が収まり、アンジェリアはホッとした。アンジェリアとマリアナはお互いの無事を確認するように向き合うと、さっきまでと違う格好に気がついた。


「!? アンジェ!! 」


「マ、マリー?!」


 アンジェリアは、髪型とメイクはすっかり終わり、ティアラによく合う、洗練された品の良い淡い色のドレスに身を包んでいた。マリアナも見たこともない、宝石が襟に施されたメイド服を身に付けている。


「ーーうん! 2人とも良く似合う! これが大きな箱の正体だよ? リアには、サスティアル王族お抱えのデザイナーが用意したドレス。いつもリアに心を砕いてくれる優秀な侍女のマリアナには、サスティアル王宮の上級メイド服を用意したんだ。2つの衣服とも、シャーナ公爵の加護をつけているから、剣で斬りかかって来られても、撥ね付けてくれるよ」


 ルルドはサプライズが完遂出来たことに痛く満足してうんうんと頷いた。

 説明を受けたマリアナは、余りの驚きで口をあんぐり開けて言葉も出ない。


「……もしかして、ルルドが盛装しているのって…? ルルドも、公女様の来訪に立ち会うの?」


 アンジェリアは自分のドレス姿とルルドの格好を見比べて、ふと気がついた。まるで、色を合わせたように2人の衣装がリンクしているのだ。


「正解!! リア1人にさせるのは、ルカからリアを預かる身としては申し訳ないからね!」


 ルルドは茶化すように答えると、アンジェリアの部屋の扉がノックされた。


「ーーアンジェリア様、伝令から連絡がありましたーー」


 それは、エステリア国公女がオルソン公爵家に着いた来訪を知らせる案内だった。

読んで頂きありがとうございます!

まだまだ話は続きます。

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