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3番目の婚約解消⑲ 混沌とした日々

いつもお読み頂きありがとうございます!

 アンジェリアがオルソン公爵家に戻ってからというもの、屋敷の警備は騎士が増員され、ルーシーの側付きの人間は一掃された。


 まだ幼いルーシーの周りに顔見知りの人間が残らないことをアンジェリアは不憫に思ったが、オルソン公爵夫人のダイアナは容赦しなかった。

 アンジェリアにルーシーが暴言を吐いたあの日からは、半年近く経っており、ルーシーに対する監視の目は益々強くなっていた。王都では、貴族同士の些細ないざこざが頻発し、国王であるルーファスの頭を悩ませていた。

 それゆえ、ダイアナ自らルーシーの行動を全て管理し、ルーシーの外出も最低限とし、常に目を光らせていた。


 ーーーー私ですら、そんなに厳しく制限されていなかったわ……


 幼いころから魔力の存在が判明していたアンジェリアですら、今のルーシーほど制限をかけられていなかった。むしろ、ルカの存在が一緒であれば、かなり自由に過ごしていたような覚えもある。


 ーーーールーシーには、私とルカのような関係の幼馴染みもいないのに……


「ーーねぇ、レオンから、ルーシーの待遇向上をお願いしてもらえない? まだ幼いのに、部屋に閉じ込められて、毎日過ごすなんてあんまりよ」


 ルルドが暴走したオルソン公爵家の庭園で、アンジェリアはレオンと一緒に午後のティータイムを過ごしていた。


「確かに可愛そうだけれど……ルーシーは幼いから、簡単に人の意見に流されてしまうだろう? だから、現状はどうにもならないよ」


 この半年間、同じ質問と同じ回答を繰り返している2人は、お互い顔を見合せ、溜め息をついた。

 そして、次の会話もいつもと同じ質問をアンジェリアはレオンにしたのだが、今回はいつもの『変わらない』という回答ではなかった。


「……、王都での動きは何かあった?」


「……あぁ、カイル兄上の婚約者が決まったらしい。オルソン公爵を宰相に据え続ける代わりに、ベイガザード王国の王女が輿入れされることになった」


「!! ーーなんですって?!」


「カイル兄上が、父上や議会の承認なく、婚約承諾の意向をベイガザード王国に出したらしい。議会は紛糾したが、ベイガザード王国寄りの貴族に数で押されて、そのまま婚約が決まってしまった」


 アンジェリアは驚いて、紅茶をテーブルにこぼしてしまった。すぐに、アンナが片付けに進み出るが、話を聞いていたために表情は強ばっている。


 今まで、第1王子カイルには婚約者がいなかったのは、国際間の均衡を図るため、婚約者選定は難航していたからだ。

 コーション国の第1王子に娘を嫁がせ、コーション国の鉄鉱石や魔法石を融通してもらう魂胆で、周辺諸国は自国の王女との婚約を何度も提案していたらしい。

 国王のルーファスとしては、どうしてもベイガザード王国との繋がりを切りたいと思っていたのだが、ベイガザード王国側が王位をちらつかせ、カイルをそそのかしてしまったのだろう。


 第2王子のレオンにも王太子になる権利はあるのだが、オルソン公爵の派閥だけの勢力だけでは、第1王子カイルを王太子に推す派閥に数で勝てそうもない。

 この半年、レオンも自身の勢力拡大を計り、頻繁に王都に出掛けていたが、成果は芳しくなかった。


「ここに来て、カイル殿下の婚約者がベイガザード王国の王女に決まるなんて……」


 レオンの婚約者候補はアンジェリアなのだが、アンジェリア自身はガーランド王国の王族ではないため、レオンの後ろ楯としてはやや弱いのだ。


 ーーーーサスティアル王国が、コーション国の内紛に手を貸してくれたら良いんだけれど……


 アンジェリアの母の母国は、アンジェリアの身の安全を保証してくれても、コーション国には手を貸さないだろう。魔法国家のサスティアル王国にとっては、コーション国の資源は取るに足らないものなのだ。わざわざ姪のために、大陸の無益の争いに首を突っ込んでくるとは思えない。


「カイル兄上の婚約発表はおよそ1年後、婚姻式はそれからすぐだ。今にでも、婚約を進めようとするベイガザード王国を、父上が撥ね付けたらしい。何とか、婚約式まで時間は稼いだが、近日、ベイガザード王国の王女がコーション国へやってくることは避けられなかった。名目上は花嫁修業だけれど、本心は我がコーション国を少しでも早く取り込みたいのだろう……」


「カイル殿下が王太子になってしまったら、いよいよ国王陛下の暗殺の危険が高まってしまうわ。もちろん、オルソン公爵家やレオン貴方にも危険が迫ってくる。オルソン公爵閣下のご意見を聞きたいけれど……」


 オルソン公爵が王都から戻らなくなって久しい。このままでは、この公爵領も危なくなるのは目に見えていた。


「……実は、近日、この屋敷に、オルソン公爵が招いた来客が来るんだ」


「今時期に?」


「あぁ、エステリア王族の公女らしい。オルソン公爵は新たにエステリア国を陣営に加えることにしたようだ」


 ーーーーえっ……ちょっと! ライアルト殿下に毒を持った人間の親族じゃない?


 あまりの出来事にアンジェリアは目眩がしそうになった。母国のガーランド王国はこの事態を許すとは思えない。

 事実、ライアルト殿下に毒を持ったエステリア国の王女ーーガーランド王国の第2王子の婚約者ーーはすでにこの世にない。流行り病に罹り、エステリア国に返され亡くなったとされていたが、十中八九、闇に葬り去られたに違いないのだ。


「オルソン公爵はガーランド王国出身のアンジェリアの身の保証を確約している。そのため、今回のエステリア国と手を結ぶのは、苦慮したと思うよ……」


「苦慮されたとしても、あんまりだわ……」


 コーション国内にはベイガザード王国が隅から隅まで入り込んでおり、これ以上オルソン公爵側の同胞を増やせない。としても、せめてサスティアル王国の王族であるアンジェリアに相談は必要ではないのか。

 アンジェリアもレオンにコーション国の王位を継いでもらうのが平和的ではあることは理解している。だから、アンジェリアに一言、決定の前に、エステリア国の公女来訪の相談があっても良かったはずなのだ。

 オルソン公爵家とエステリア国の盟約を、アンジェリアからガーランド王国に伝えるのではなく、連絡なしにガーランド王国側にバレるのでは、かなり印象が悪い。


「私、ガーランド王国に暗殺されないか、心配になってきたわ……」


 まさか、母国に後ろめたい事態を引き起こすなんて、とアンジェリアはオルソン公爵を恨みがましく思った。

3番目の婚約解消はまだ続きます!

もうしばらく、お付き合いくださいませm(_ _)m


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