3番目の婚約解消⑮ アンジェリアの叔父さん
ルルドが連れてきたのは、ルルドよりも少しだけ年上に見える、高身長のルルドよりもさらに頭1つ分背の高い青年だった。
「はぁい! 初めまして! 私の名前は、レイモンドー。アンジェリアは特別にレイと呼んで良いからね!」
ーーーー軽い…、誰だ、この人…
転移魔法が落ち着き、姿をはっきりと現した青年は、ルカからアンジェリアをペリっと引き離し、アンジェリアの手を取ると、ブンブン降って握手をしてきた。
「あ、ア、アンジェリア=コーディルと言います。あの…、レイ、さん? よろしくお願いします…」
「僕は、ルカ=フォーガス=セーシルと言う。貴方は、アンジェの叔父上なのか?」
アンジェリアがレイモンドと名乗る青年に挨拶すると、ルカは仕返しとばかりにペリっとレイモンドからアンジェリアを奪い返し、腕の中に戻した。それでも、王族としての建前か、ルカも手短に自己紹介をした。
「あはは! ルルドやアランの言う通り! 君は独占力が強いようだね? そう、僕はレイモンド=シューベルト=サスティアル。アンジェリアの叔父さんさ!」
ーーーーレイモンド叔父様って……?!
アンジェリアは母サーシャ=コーディル公爵夫人から昔聞いた話を思い出した。
サスティアル王国の王女だった母サーシャの下に末っ子の弟がいること、そしてその弟はアンジェリアが産まれる前に2つ3つ、国を滅ぼした暴れん坊なのだと。
武芸に優れ、魔法も超一流だから、手に終えなくて厄介のなの、とアンジェリアの母がこぼしていた。
ーーーーあれ? でも、私が産まれる前から放浪の旅に出ていったって……
「アンジェリアは、僕のことをサーシャ姉上から聞いたことがあるみたいだね? そう! アンジェリアが今思った通り! 僕は可愛い姪っ子の護衛につくため、長年の放浪からサスティアル王国へ戻ってきたのさ!!」
ーーーーいや、何も護衛が欲しいなんて、思ってないけれど……?
「叔父上、説明は私がするとお伝えしたはずです! 少しだけお待ちを!」
ルルドが暴走気味のレイモンドを必死に止めようとして、あたふたしているのをアンジェリアとルカは冷めた目で見ていた。
ーーーーこの人、甥に叱られるなんて、何しにやってきたの? 本当に、お母様が仰っていた、国を滅ぼしたこともある好戦的な人間なのかしら?
レイモンドはパッと見、ルルドの少しだけ年上に見えるのだ。叔父と言う年齢には見えないし、国を滅ぼす残虐的な人間にも見えない。ただの能天気な青年に見える。
「ーーふぅ。すまない、驚かせてしまったね。こちらは、さっき紹介にもあった、レイモンド叔父上だ。サーシャ叔母様の3つ年下の、サスティアル国王の王弟。サスティアル王国では公爵位をお持ちだ。魔法の加護は、見ての通り"美"」
ーーーーび、美?! いや、魔法の加護間違ってるでしょ?! 闘争とか剣術じゃないの?!
ルルドが何とか暴走気味なレイモンドを押さえつけて、簡単にレイモンドの紹介すると、アンジェリアは驚きのあまり開いた口が塞がらなくなった。
「何で、そんなに驚いた顔をしてるの? どっからどう見たって、僕の加護は"美"じゃないか?」
レイモンドは驚くアンジェリアを見て、くすくすと笑った。確かに、レイモンドは実年齢の割にひどく、恐ろしいほどに若い。
「美、って、サスティアル王国の暴君と名を馳せるレイモンド閣下の加護が"美"って……」
過去の国滅ぼしについて思わず漏らすくらい、ルカも唖然としてレイモンドを見つめている。
「暴君とはひどいなぁ…、アンジェリアの想い人じゃなかったら息の根を止めるところだよ?」
こてんと首を傾け可愛らしい素振りをしながらも、かなり物騒な発言をしたレイモンドに、思わずアンジェリアはルカの前に進み出た。
ルカに手を出すなんて、叔父でも言って良い発言ではないと思ったのだ。そんなアンジェリアにルカの方も、アンジェリアの腕を引き、自身の後ろに庇おうとした。
「うんうん! ルカ、君の心意気は気に入った! 私を前にしても、引かない態度は天晴れだよ!」
「ーー、叔父上、少し黙ってくださいませ! それに、ルカに手を出せば、サーシャ叔母上と父上の逆鱗に触れますよ!」
「ーーうむ。そうだ、な…。サーシャか、それはヤバイな…」
ルルドの一声で急に大人しくなったレイモンドに、自分の母親はそんなに強いのかとアンジェリアは遠い目をした。
「ルカ、リア、度々話の端を折ってすまない。僕と同じように、リアに対する、コーション国の態度を監視する役目にレイモンド叔父上も加わることになったんだ」
「ーー、伝書鳩的な…?」
ついうっかりアンジェリアが失礼に当たる言葉を漏らすと、ルルドは吹き出して笑った。
「確かにアラン兄上からは、僕は伝書鳩ってからかわれているけれど。リアもひどいなぁ…ーーレイモンド叔父上は知っている通り、剣術や戦闘に秀でていらっしゃる。大陸でもその名は恐れられているからね。度々、コーション国のリアの元に顔を出して、プレッシャーをかけるってわけ」
「プレッシャーとは、アンジェの待遇を巡ってのことか?」
ルルドの説明にルカが質問すると、ルルドは頷いた。
「もちろん、メインはリアの待遇を良くすること。裏の役割は、何かあった場合に直ぐにでもリアの元に駆けつけ、身の安全を確保するためーーこれは、王位継承権を持つ王族を守るためのサスティアル国王の命だから、コーション国は受け入れざるを得ない」
ルルドが簡単にかいつまんで説明すると、ルカはひどく納得をしたように何度も頷いた。
「なるほど、アラン殿下の仰った、サスティアルの王位継承権はアンジェを守ってくれるとは、こう言うことか」
「おーい! 私も話して良いかな? 確かに兄上の命令だけれど、私だって姪っ子の、安全な生活を大切に思っているんだよ? だから、アンジェリア、私には隠し事をせず、頼るんだよ? わかったね?」
何やら問答無用の圧力のあるレイモンドの言葉にアンジェリアはうっすら恐怖を覚えた。
ーーーー隠し事をしたら、ヤバそうね……
アンジェリアの身を案じてくれたサスティアル国王には悪いが、急に現れた陽気な性格のレイモンドと上手く関係を築くことが出来るのか、アンジェリアは不安でたまらなくなった。
読んで頂きありがとうございます!
まだまだ話は続きます。
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