表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

52/96

3番目の婚約解消⑬ フォーガス国王との面会

 朝になり、優しい陽の光でアンジェリアは目を覚ました。遠くで、鳥達が鳴いている声も聞こえる。


 ーーーーあ…れ、ここ、どこ……?


 寝化けた頭でぼんやり天井の装飾を眺めていたアンジェリアは、ふと真横に人の気配を感じて視線を移した。


「ーー!! っ!」


 ーーーールカ!! 


 アンジェリアは思わず叫びそうになり口を手で覆うと、アンジェリアの動きに反応してルカもゆっくりとまぶたを開けた。


「あぁ、おはよう、アンジェ…。ん…もう起きる?」


 ーーーーて、て、天使様がすぐ横に!!


 起きて直ぐのルカの気だるく、やけに色気のある雰囲気に、アンジェリアはあわあわと視線を泳がして助けを探した。昨晩は離れて寝付いたはずが、朝起きると、ぴったりくっついていたのだ。


 ーーーーわ、わ、私が!寝てる間にすり寄っちゃったの?!


 アンジェリアは寝起きな頭でパニックを起こしながら、ルカの腕の中で、あうー、あー、等と意味の分からない言葉を発しながら慌てている。


 ルカはそんなアンジェリアを微笑みながら眺めていたが、少しだけ悪戯心も沸いてくる。


 ーーーーさっきまで、アンジェの寝顔を眺めていたなんて伝えたら怒るだろうな…


 ルカはアンジェリアが起きる少し前まで、ベッドで本を読んで時間をやり過ごしていた。外がだんだん明るくなり日差しが窓から入ってくるようになって、ようやく眠りについたのだ。


 ーーーーアンジェが横で寝てくれるなら、毎日寝不足でも堪えられそうだ…


 ルカは腕の中で、いまだに挙動不審な動きを続けるアンジェリアのこめかみにキスを落とした。そして、そんなルカに驚いて固まったアンジェリアを、ルカはふざけて、もっとぐっと胸に引き込んだ。アンジェリアはようやく、わたわたと腕の中から出ようと抵抗を始めるが、力の差がありルカはびくともしなかった。


「ーー!! もう、ルカ! ふざけるのはやめてよ!」


 アンジェリアが怒りながら、どんどんルカの胸を叩くと、ルカは少しだけ腕の力を抜いた。


「ーー、朝起きて、毎日、アンジェが横にいてくれたらーー」


 ルカはそんなことを呟きながら、顔を真っ赤にしてルカを見つめるアンジェリアの唇に軽くキスを落とすと、ようやく腕から解放した。


「ーー!! なっ!」


 ルカは挙動不審に慌てふためくアンジェリアに優しく微笑むと、ベッド横にあるサイドボード上の呼び鈴を鳴らした。


「こうしていると、新婚さんみたいだね。朝食はベッドで食べようか?」


「た、た、た、食べません!!」


 アンジェリアはルカからようやく解放されて、急いでガウンを羽織った。おそらくリサは直ぐに部屋に入ってくるだろうとだろう。アンジェリアは、ルカとイチャイチャしていたなんて思われたくない一心で、ルカと少しだけでも距離を取るべく、急いで部屋のソファを目指した。



 ◇◇◇◇◇



 ーーーーどうしてだろう…、コーション国にいるよりも、すごく精神的ダメージが…


 アンジェリアはリサに手伝ってもらい、用意されたドレスに着替え、身支度を整えると、食事が用意されたテーブルにやってきた。

 すでにルカは席に座っており、にこやかにアンジェリアを微笑みかけている。


「アンジェが昔から好きだった果物とパンを用意したよ? 口に合えば良いんだけど」


 ルカはそう言って、アンジェリアに席を勧めた。そのルカのひどく上機嫌な様子に、グレイとリサは目を丸くして見つめていた。

 普段のルカは決して冷たくはないが、他人に深く関わることのない冷静で慎重な少年の印象が強い。なのに、目の前にいる少年は、ひどく甘々な瞳で甲斐甲斐しく、宝珠の少女の世話をしている。


「ルカは記憶が良いね? もちろん、どれも私の好きなものばかりだわ。ありがとう」


 アンジェリアはお礼を言うと食事を始める。リサは直ぐにアンジェリアに準備したお茶を出すと、アンジェリアはにっこり笑ってお礼を言った。


 ーーーーコーナー殿下は下の者に礼などしてくれた事などない、アンジェリア様はお優しい方だわ


 リサはそんなアンジェリア専属の侍女になれたことに感謝した。アンジェリアの直ぐ横には、彼女の視線を奪われたルカが不機嫌そうにリサを睨んでいる。


「ルカ殿下は、意外と嫉妬深かったのですね。アンジェリア様がリサに話しかけただけで、リサを睨むとは…。ルカ殿下は、ものすごく落ち着いた御仁だと思っておりましたが、いやはや……」


 様子を眺めていたグレイが可笑しそうにルカをからかうと、アンジェリアは顔を赤くして下を向いた。ルカはグレイのせいで視線を奪われた気がして、今度はムッとしてグレイを睨む。


「お前は、食事の時くらい、静かには出来ないのか? アンジェは、今日また、コーションに行ってしまうのだ。邪魔しないでくれ」


 ルカはグレイにそう言うと、今日の執務の予定は全てキャンセルするよう念を押した。グレイも予想していたのか、にこやかに了承している。


「アンジェには面倒だと思うけれど、この後、極秘に叔父上が面会にやってくる。短時間の挨拶程度だから、我慢してもらえる?」


 ーーーー?! ルカの叔父上って、国王陛下じゃ…


「ーー! わ、私、きちんと挨拶出来るかしら? 失礼な事とか…、大丈夫かな?」


 ルカから急に、国王との面会を要求されたアンジェリアはかなり焦った。連絡もなく無断でフォーガス王宮に潜り込んだ者としては、緊張せずにいられない。


 ーーーー怒られたり、しないよね…


 急に暗い顔をし始めたアンジェリアに、ルカは軽く溜め息をつきながら、ぼやき始めた。


「気軽にしてもらって大丈夫だよ? 叔父上は、アンジェに会ったことがないから、今回是非とも面会したいらしい。本当、アンジェとの時間があまりないのに、迷惑だよね…」


 もう一度、はぁーとルカがため息をつくと、グレイは慌てた。王族のルカと言えども、国王との面会を拒否するのは望ましいとは言えない。現状、フォーガス国の貴族を束ねているユナ王妃が黙ってはいないだろうと思ったのだ。


「ルカ殿下、この度の面会は非公式ではありますが、国王陛下並びに王妃陛下が参られるのです。言葉には…」


 グレイがルカよりも壮大な溜め息をついて、ルカに小言を始めると、リサは今のうちにお食事をとアンジェリアに耳打ちしてきた。どうやら、グレイのお説教は長いらしい。アンジェリアは国王と王妃両陛下の面会に備えようと、食事を終わらすべく急いだ。



 ◇◇◇◇◇



 アンジェリアとルカが食事を終えた頃、ルカの私用の応接室に来客の知らせがあった。フォーガス国王王妃両陛下が面会に来たのだ。


 ーーーー! もう、来てしまったの?!


 これから心の準備をと、アンジェリアが考えていた矢先だったため、アンジェリアは不安な顔でルカを見上げた。


「大丈夫だよ、アンジェ。ユナ王妃は昨日挨拶しているし、国王陛下も気さくな御方だ」


 ーーーー王妃様とは、昨日最悪な形でお会いしたけれどね!


 慌てるアンジェリアとは対照的なルカの様子に、アンジェリアもグレイのように溜め息をつきたくなった。


 ーーーーまぁ、取って食べられはしないでしょうし…


 アンジェリアは極端な発想を巡らすことで、なんとか少しでも緊張を和らげ、国王の待つ応接室に入った。


「いやあ、朝早くからすまんね! 君がルカの宝珠、アンジェリア殿かい? 信じられん! 王妃の話のように、本当にルカがべったり張りついている!! ーーあぁ、すまん、すまん。私はフォーガス国王、カナル=フォーガス。妻のユナ王妃は昨日会っているよね?」


 ーーーーかなり…、本当に、気さくな方ね!


 病弱だと噂でも聞いていたように、国王は体の線は細く、顔色も良くないが、やたらフランクな気性の持ち主のようだ。アンジェリアが挨拶をする前に、にこにことアンジェリアに握手を求めてきた。

 ルカが気さくな御方だと言っていたが、気さくと言うよりは軽い気性だなと、失礼ながらアンジェリアは直感した。


「本当に、朝早くにごめんなさいね? 昨日、庭園でルカ様の宝珠の御方にお会いしたと、陛下にお伝えしたら、ご自身も直ぐに会いたいと仰られて……」


 ユナ王妃も朝早くの面会を、申し訳無さそうにアンジェリアに謝罪した。ルカはユナ王妃に視線だけで頷くと、アンジェリアの背中に手を回して、カナル国王に冷たく言い放つ。


「陛下、アンジェリアは少し疲れが溜まっているようです。面会は手短にお願いしますね?」


「あはは! ルカの面白い一面を私も見てみたいと思ったのだ! アンジェリア殿、今後とも末永くルカをよろしく頼むよ」


 ーーーー末永く、って、どういう……?


 アンジェリアはカナル国王の言葉を理解出来ずに、どう返事して良いやら悩んでしまった。

 サスティアル王国程ではないが、大国のフォーガス国王夫妻を前にしてアンジェリアは緊張していたのだ。まずは挨拶を済まそうと、フォーガス国王夫妻の前に進み出る。


「ーー、あの、ガーランド王国から来ました……、 あら? この場合、コーション国から来たのが正しいのかしら…ーー!! っ! 申し訳ありません、アンジェリア=コーディルと申します。」


 ーーーーは、恥ずかしい!!


 挨拶を失敗し、ガバッと音がするくらいアンジェリアは頭を下げた。フォーガス国王夫妻に出来の悪い娘だと思われたらと、内心ヒヤッとする。そんなアンジェリアをルカは支えるようにソファに促すと、ぴったりと横に座った。

 フォーガス国王夫妻は、アンジェリアの心配とは他所に、そんな2人の様子をにこにこと見守っている。


「アンジェリアは、サスティアル王国の魔力により、急にフォーガスに飛ばされて混乱しているようです。それに、今日にもコーション国に帰国しなければならない。お二人とも遠慮してくださいね?」


 ーーーー何をどう遠慮するの?


 ルカがフォーガス国王夫妻を邪魔者扱いするような言葉を放ったことに、アンジェリアはぎょっとして驚いたが、国王夫妻は怒るわけでもなく笑って受け流した。


「アンジェリア様、この度は急なご訪問で、満足におもてなしも出来ずに申し訳ありません。ましてや、昨日の我が娘の横暴な振る舞いもあり、大変申し訳なく思っております。本人には、きつく言い付けて折りますゆえ、アンジェリア様さえ良ければ、いつでもフォーガス国にお越しくださいますよう。私達(わたくしたち)はあなた様のご訪問を歓迎いたしますわ」


 ユナ王妃がそう言うと、カナル国王もうんうんと頷いた。


「ルカは今後、フォーガス国王になるべく、王太子に指名する予定だ。アンジェリア殿は、そのルカの宝珠の相手。誰が邪魔できようか。何かあれば、ーーいや、なくても、いつでも、アンジェリア殿を歓迎しよう」


 カナル国王は、真面目な表情で威厳たっぷりにアンジェリアに宣言すると席をたった。


「あんまり邪魔すると、ルカが拗ねるからね。挨拶もしたことだし、我々は、さっさと退散するとしようか」


 フォーガス国王夫妻は早すぎる面会時間に苦言を漏らすこともなく、グレイの先導のもと、部屋を後にした。

 とりあえず国王夫妻に叱咤されることもなく、挨拶を済ます事が出来たアンジェリアは、緊張から解放されぐったりしてソファに沈んだ。

いつもお読み頂きありがとうございます!

よければ、ブックマーク&評価をお願いしますm(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ