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3番目の婚約解消⑫ フォーガス国の夜

 アンジェリアの希望に沿って、ルカとアンジェリアは少し早めの夕食をとることになった。

 ルカの部屋にあるテーブルにリアが食事を並べ食べているのをぼんやり見ていたアンジェリアはふと、幼い頃にルカがコーディル公爵家へ泊まりに来たことを思い出した。


「昔は、2人でこうしてご飯を食べていると、セライアお姉さまが乱入してきて騒ぎ出したよね? 2人だけ、遊んでてずるいって」


 コーディル家は筆頭公爵の地位にあるため、毎晩のように公爵夫妻は夜会や晩餐会などに参加していた。兄のギルバードや2人の姉も、子供達だけの交流会に引っ張りだこで、家にいることが少なかったのだ。


「でも、なんで私だけ、子供の集まりへの参加が免除だったのかしら?」


 アンジェリアと年の近いセライアも外出が多かったのに、アンジェリアは家で留守番をしていることが多かったように思える。


 ーーーー魔力が多いから、引きもこっていたのかも


 サスティアル王国の誰かが、公爵夫妻にアンジェリアを外に出さないよう注意したのかもと、アンジェリアは1人ふむふむと納得した。


「ーー、僕が、アンジェを独り占めしたくて、公爵夫妻に頼んだんだ」


「ーーへ? ごほっ!」


 まさかのルカの突然のカミングアウトに、アンジェリアは驚いて食べ物が喉に詰まりそうになった。


「アンジェ、大丈夫?!」


 ルカが慌ててアンジェリアの側にやって来て、背中を擦った。リサは生暖かい目で2人のやり取りを見守っていたが、急いでガラスに水を注ぎアンジェリアに渡した。


「う、うん。もう! ルカがびっくりさせるようなことを言うから! ーーふう……」


 アンジェリアは何とか息を整えると、驚く原因となったルカに批難の声をあげた。


「え? あれ? 父上がコーション国に行ったときに、思わず洗いざらいアンジェにいろいろ話しちゃったって、僕に謝っていたけれど…」


 ーーーー! た、確かに、セーシル公爵が言ってたかも…!!


 5年前のコーション建国祭にやって来たセーシル公爵は、ルカのアンジェリアへの想いをつらつら述べていたような気がする。

 ルカがどんな想いで宝珠をアンジェリアへ渡したのかも、同時に思い出したアンジェリアは顔が赤くなった。


「ふふ…、アンジェ、耳まで真っ赤、かわいい」


 ルカはアンジェリアの髪を耳にかけ頭をぽんぽん叩くと、席に戻って食事を再開した。


 ーーーーせっかく、美味しい料理なのに……緊張して、味が分かんなくなっちゃった…


 アンジェリアは飄々と食事を進めるルカを軽く睨みながら、リサがくれた水をがぶ飲みした。



 ◇◇◇◇◇



「私がここのソファを使うから、ルカはいつも通りにベッドを使って」


 食事の後、アンジェリアはリサに手伝ってもらいながら入浴を済ませた。

 リサ曰く、アンジェリアに客室を準備出来なかったのは、アンジェリアの訪問を極秘にするよう、サスティアル王国の指示があったためらしい。

 なので、アンジェリアが入浴するのも、就寝するのも、明日の朝食を食べるのも、全てルカの部屋で過ごすことになった。


 アンジェリアには、ただのルルドとアランの悪戯に思えるのだが、フォーガス国の人間にはルルドとアラン達王族の悪戯な性格は知られていない。アンジェリアの抵抗空しく、明日の昼までルカの部屋の居候にされてしまったのだ。


「でもね、アンジェ。自分の好きな子が部屋に泊まりに来たら、ベッドを明け渡すのが、普通だよ?」


 入浴後身支度を終えてルカの部屋に戻ってきたアンジェリアに、ルカはベッドを使うように勧めた。

 本当は簡易ベッドくらい持ち込んでも良いんじゃない? とアンジェリアは思い、ルルド達兄弟の悪戯を恨んだ。

 ルカは、頑としてソファに陣取って動かないアンジェリアの手を取ると跪き(ひざまつ)、上目遣いにアンジェリアを説得しだした。


「アンジェが少しでも体を壊したら、僕はすごく自分が許せない。僕のためにも、どうかベッドで休んでくれないか」


 ーーーー!! 天使様が跪くなんて!


 本音を言うと、就寝前のカジュアルなルカの様子だけでも、アンジェリアはかなりどきどきしていた。それなのに、目の前に天使が降臨したような光景に顔が真っ赤になってしまった。


 ーーーーっ!! 心臓発作になりそう…!


「でもね、ルカは明日も大事な勉強があるんだし……」


「アンジェよりも大事な勉強はないよ?」


 ーーーーダメだ、メンタルが堪えられない…


 思わず羞恥心で泣きそうになったアンジェリアが手で顔を覆うと、ルカがとんでもない提案をしてきた。


「分かった、じゃぁ、2人でベッドに使おうかーー湯冷めしちゃうと、体を壊すからね」


「へ?」


 アンジェリアがルカの言葉に驚いて固まっていると、ルカがサクッとアンジェリアをお姫様抱っこして運び出した。歳があまり離れていないにも関わらず、安定した抱っこにアンジェリアは驚き、恥ずかしいやらで、口をパクパクさせるしかなかった。


「はい、アンジェはこっち側を使ってね。僕はあっち側を使うから」


「ーーああ…、はい…」


 確かに王族であるルカのベッドはやたら広い。人が2人寝ても落ちることはないだろう。


 ーーーーでも!! なんか、違うと、思う!!


 色々と考え過ぎていたのはアンジェリアだけなのかと思うと、それはそれで自意識過剰で無性に恥ずかしい。アンジェリアは布団に潜り込むと、さっさと寝て仕舞おうと決めた。


「今日は、急にお邪魔してごめんね。おやすみ、ルカ」


 アンジェリアがやや突き放すようにルカに就寝の挨拶をしても、ルカは笑っておやすみと応えてくれた。


 ーーーー本当に、どきどきしていたのって、私だけなのね…


 どっと疲れが押し寄せてきたアンジェリアは、そのまま目を閉じると、スーっと夢の世界に旅立った。






 一方、横ですやすや眠り出したアンジェリアをルカは苦笑しながら眺めていた。


 ーーーー本当、昔から寝付きが良いよな…


 ベッドに横になるまで、抵抗していたアンジェリアを思い出して、ルカは微笑ましくなった。

 あっさり一緒に寝るとアンジェリアに宣言されるよりは、少し抵抗してくれた方がルカを男性として意識してくれていると分かり安心する。

 もちろん、明日の昼にはサスティアル王国の遣いとしてルルドがアンジェリアを迎えに来るのだから、変な真似をする気はルカに全くなかった。正式にアンジェリアを迎え入れることが出来るまで、大切にしたいし、守りたいと思っている。


 ーーーーまさか、会えるとは思わなかった…


 アンジェリアが転移魔法を失敗し、宝珠の力でフォーガス国に辿り着くのはおそらく今回だけだろう。今回の件で、サスティアル王国は転移魔法の失敗回避を徹底するに決まっている。次にアンジェリアに会うには、ルカからコーション国へ会いに行かなくてはならない。

 ルカはアンジェリアの横に並ぶための地位や権力を、早く手にいれたいと心から思った。


 ーーーー今日は眠れそうもないな…


 横でふにゃふにゃと意味のない言葉を発しながら、寝ているアンジェリアの頬をルカが撫でると、ほわぁと笑ってアンジェリアがルカの手にすり寄ってきた。


 ーーーー、サスティアル王国の人間も、さすがに覗いたり、してないよな…


 ルカはさっと辺りを見回すが、部屋の中も廊下も静まり返っており、人の気配は感じなかった。

 ルカはそぉーと、アンジェリアの唇に触れるだけのキスをした。そして、眠れそうもない時間をもて余すための本を探しに、静かにベッドを離れた。

3回目の婚約解消編なのに

3番目の婚約者のレオンが話に出てこないm(_ _)m


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