3番目の婚約解消⑪ お部屋訪問
いつもありがとうございます!
まだ少し、ルカのターンが続きます。
「コーナー王女も、たまたま機嫌が悪かっただけかも、ね。ルカ」
フォーガス王妃はしきりに謝罪を述べた後、コーナー王女を追って庭園を後にしていた。
折角、初めて見る珍しい栽培方法に、うきうきで庭園を散策していたアンジェリアは、コーナー王女に会ったことで、うってかわって、楽しい気分がしぼんでしまった。なんだか今日は女の子に批難をされる日だな…、と、アンジェリアはひどく疲れを感じていた。すでに、日も陰って来ており、アンジェリアは早く先程の部屋に戻りたくて仕方ない。
「アンジェには嫌な思いをさせてしまって、ごめんね。彼女にはきつく忠告をしておくよ」
アンジェリアの疲れた顔にルカは渋い顔をして、コーナー王女が去っていった方向を睨んだ。
ーーーーいやいやいや……余計、嫌われちゃうって…
アンジェリアの勘が当たっていれば、コーナー王女は少なからずルカに好意があるはずだ。張本人のルカに叱られでもしたら、どんな暴走をし出すか分からない。
「もう、王女様のことはいいわ……疲れたから、部屋に戻りましょう」
「そうだね。もう、部屋の準備も出来ただろうし、僕の部屋まで案内するよ」
ルカに手を引かれながら、王宮内を進んで行くと、王宮内に勤める騎士やら女官から物凄く視線を感じた。
ーーーーこれって、目立ってはいないかしら…?
アンジェリアが心配になって、チラッとルカを盗み見ても、にこにことルカは機嫌が良さそうに歩みを進めている。
ーーーールカは気にしていないようだけど……
王族のルカは周りを全く気にせず、ご機嫌にアンジェリアを自身の部屋にエスコートしていく。
初めの内は、周りのチラチラと伺うような視線が気になってしょうがなかったアンジェリアも、ルカが気にしていないのに自分ばかりが、周りに気を配るのもなんだかなーと段々思い始めた。
アンジェリアにとって今日は1日の間に、いろいろなことが目まぐるしく起き過ぎていた。アンジェリアは、既に考えるのも疲れて、ルカと同じように気にしないことにした。
フォーガス国の王宮は、ガーライド国の王宮とは違った彫刻の壁画や、建物の作りが見られる。アンジェリアはルカにエスコートされながらも、王宮内を観察するも楽しいなと思った。
ーーーーコーション国の王宮も、初めて見たときは物珍しくて王宮内を良く見て回ったっけ…
観光地に来たかのように、きょろきょろと回りを見ているアンジェリアに、調度品などの説明をしながらルカは王宮の奥へアンジェリアを連れてきた。
「どうぞ、アンジェ。ここが王宮内の僕の部屋だよ。いつも昼間は、ほとんどを執務室で過ごすからそんなに散らかっていないと思うんだけれど」
そう言って、私室の扉を警備の騎士に開けさせると、アンジェリアの目に落ち着いた紺色を中心としたシンプルな部屋が広がった。
部屋に合わせて調度品も主張の強くない、上品なものが飾られている。
ーーーーとっても、ルカにピッタリなイメージ通りの部屋ね!!
「すごく素敵なお部屋! セーシル公爵家のお屋敷も上品で言うことなしだったけれど、それ以上かも!」
アンジェリアが"お宅訪問"のように部屋の中をあちこち見て回ると、ルカはそんなアンジェリアの後ろを楽しそうについていく。
そんな2人の様子を騎士達は化け者を見るような目で見ていた。ルカが王太子候補としてフォーガス国にやって来てから今まで、女の子を私室に招いたことはない。ましてや、にこにこと笑って女の子の後ろをついて回っていることなんて、見たことも聞いたこともなかったのだ。
ルカは王子と王女である従兄姉ですら、近くの部屋は嫌だと言って、他の王族達から離れた部屋を選んでいた。私室にグレイ達側近以外の者を招いたことなんてほとんどないのだ。
『『ーー彼女は、ルカ殿下とどのようなご関係なのだろう?』』
いつもとは180°違うルカの態度を見て、王宮に勤める者達は、恐ろしいのでも見たかのように信じられない気持ちでいっぱいだった。
そして、物珍しそうに辺りをキョロキョロと見回している見慣れない少女ーーアンジェリアにかなりの関心をもっていた。けれども、次期王太子にほぼ確定しているルカに、面と向かって問いただすことなど出来る猛者はいなかった。
「あー! こちらにいらしたのですね! 執務室にいらっしゃらないから、どちらに行かれたのかと」
一通りルカの部屋を見させてもらったアンジェリアは、ルカの部屋のソファに寛いで、ルカの淹れたお茶を楽しんでいた。すると、どかどかと足音がしてグレイが侍女を伴って入ってきた。
「遅かったな? すでに夕暮れ、食事の用意などは問題ないか?」
ルカが表情を一切変えずに無愛想にグレイに問うと、グレイはぶつぶつ文句を言いながら答えた。
「アンジェリア様に対する優しさを少しでも私共に向けてくれたら有難いのですけれどもーーいや、いや、すいません! 冗談です! ーーこの後、夕食はこちらに運ばせて頂きます。両陛下にはアンジェリア様のご滞在をご報告したところ、機密事項にせよとの命が下されました。なので、明日まで、アンジェリア様はルカ殿下とこの部屋で、ごゆっくりお過ごしくださいね」
ルカの鋭い視線に、グレイは慌てる振りをして、淡々と業務事項のように報告していく。グレイの横に立った侍女は黙ってこちらを向いていた。
「あのー、グレイさん。こちらの方は?」
あまりにもグレイが侍女に挨拶をさせないので、アンジェリアが疑問に思って指摘すると、グレイは本気で忘れたいたようで、慌てて紹介を始めた。
「ああ! 申し訳ありません、すっかり挨拶を飛ばしておりましたねーーこれは、リサ=カイラル。こちらの王宮で上級侍女を任されております。本日からアンジェリア様付きとして、お世話をさせて頂きます」
ーーーーリサ=カイラル? グレイさんの親族かしら? それに私付きの侍女って、たった半日なのに? それにさっき、明日までこの部屋で過ごすって言ってなかった??
アンジェリアは頭の中には、はてなマークがたくさん浮かんできては消えていった。混乱するアンジェリアを見て、ルカは説明不足のグレイに文句を言った。
「お前は情報が渋滞している。一つ一つ、丁寧に説明せよ」
「はぁ…、本当に、出来の悪い兄で申し訳ありません。私はグレイ=カイラルの妹、リサ=カイラルと申します。アンジェリア様はルカ殿下の宝珠をお受けになられた方。陛下より、今後フォーガス国でのお過ごしの際も、ご不自由があってはならないと、アンジェリア様の専属を申し付けられました」
グレイより落ち着いた雰囲気のリサは、淀みなくアンジェリアに挨拶をすると、アンジェリアの好きなお茶菓子をテーブルに並べ始めた。
「アンジェリア様は今後もフォーガスで過ごすことになりましょう。両陛下からは、いつでもフォーガス国に参られても構わないとのお言葉を預かっております」
リアは人懐っこい笑顔でアンジェリアにそう言うと、アンジェリアの着替えなど、お泊まりグッズを取りに一旦部屋を出ていった。
ルカとグレイは今日のやり残した執務をどうするか口頭でやり取りをしており、アンジェリアはお茶を飲みながら、ほっと一息ついた。
ーーーーなんだか、国のトップ貴族になったみたい…
アンジェリアは間違いなく、世界最強国サスティアル王国の王族であり、ガーライド王国の公爵家の令嬢だった。けれど、早くに親元を離れ、この数年人質としてコーション国で過ごしていたため、社交界には疎い。リサのようなホスト側の侍女が、アンジェリアにかしずくことに全く慣れていなかった。
ーーーーあ、ルカの部屋で過ごすこと、聞きそびれちゃった…
出来れば同性のリサに、ソファをベッドに使って良いのかや、お風呂はルカの部屋のを借りても良いのか、などの確認をアンジェリアは取りたかった。
アンジェリアは家族で旅行に出掛けたことが記憶になく、ましてコーション国では、常に身の回りを見張り兼警備に囲まれて過ごしている。出先で自由に過ごして良いと言われると、何をすれば正解なのか分からない。
「アンジェ? どうかした? アンジェが昔好きだったお菓子を用意させたんだけど、もう夕方だし、食事を用意させようか?」
ルカは黙ってお茶を飲み続けるアンジェリアを見て、お腹を空かせていると勘違いした。アンジェリアも、今日はたくさんの出来事があったので、ちょうど早めに夕食を取り、ゆっくり過ごしたいと思っていた。
「お腹は、あんまり空いてないけれど、疲れちゃったかみたい。できたら、早めに夕食をもらえたら、嬉しいーー」
「直ぐに用意するように」
「ーーかしこまりました……」
アンジェリアの言葉が終わらないうちに、ルカはグレイに指示を出すと、アンジェリアのおでこに手を当てた。
「熱は、ないね? 疲れたのなら、疲労回復に効くお茶も用意しようか? あぁ、柔らかなクッションももっと持ってこようか…」
あれこれとアンジェリアの世話を焼き出したルカに、お泊まりグッズを持って戻ってきたリサは目を丸くして、驚いている。
「あの…、ルカ、ちょっと恥ずかしいのだけれども……」
「ん? 気にすることないよ? みんな仕事をしているだけだから、アンジェはゆっくりしてて」
羞恥心についてはルカと基本的に考えが違うと、アンジェリアは早々に諦めた。
もしよければ、ブックマークや評価もお願いしますm(_ _)m




