3番目の婚約解消⑨ ルルドのお節介とアランのお説教
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ルルドの説明を聞きながら、ルカはアンジェリアの髪の毛に顔を埋めて、何度も確かめるようにアンジェリアを抱き込んだ。
ルルドの話によれば、コーション国でのアンジェリアの生活は心休まるものではない。アランからの手紙に書いてあったように、ベイガザード王国の脅威が日々、アンジェリアにも向けられているとルカは再認識させられた。
「で、ルルド殿下はアンジェの制止を聞かずに、オルソン公爵夫人に攻撃しようとした。そして、慌てたアンジェが使ったこともない転移魔法で回避したと」
「ーーわー、僕が悪いって感じだねーーうそ、ごめん、僕が悪かったって!」
ルルドの説明を聞いてルカがそう話を結論付け睨み付けると、ルルドは悪びれもなくテキトウに謝った。
ルカはルルドの態度にため息つきながらも、ようやくアンジェリアを腕から解放し、グレイにお茶の用意を指示した。
ーーーーうわー! 本当にガーライドではないのね
グレイの話によれば、アンジェリアとルルドが飛ばされたのはフォーガス国の王宮のようだ。アンジェリアは、初めて見るフォーガス風の彫刻や家具などを眺めて、改めて遠くまで転移してしまったと痛感した。サスティアル王国第二王子のルルドを巻き込んでしまったのだ、サスティアル王国では大変な騒ぎになっているに違いないとアンジェリアは猛省した。
アンジェリアが飛ばされてきたフォーガス国は、4年前に前国王が老衰し、ルカの叔父に当たる王太子がそのまま現国王の座に就いていた。
姉のセライアの手紙にもルカが王太子の勉強のため、フォーガス国へ行ってしまったと書かれていた。グレイの態度からも判断するに、王族としてルカはここで過ごしているのであろう。
会えない数年のうちに幼馴染みが遠い存在になってしまったようで、アンジェリアはひどく寂しく感じた。
「ルカ君はここで、王太子になるべく学んでるんだよね? ならば少し融通とか効くのかな?」
グレイからお茶をもらい、自分の屋敷のようにくつろぎ始めたルルドは、いたずらが思い付いた時みたいに悪い顔をして話し出した。
ーーーーもう、いったい何を言い出すのよ…
アンジェリアが半目になって、ルルドを冷ややかに見つめても、ルルドは一向に気にせず、『どう? 』なんて返事を催促している。
◇◇◇◇◇
アンジェリアの存在が、転移魔法の失敗によって世界から消えた瞬間、宝珠の危機を知らせる音色がルカの耳に聞こえた。ルカは直ぐに、アンジェリアの気配が消えたコーション国への出発を決意した。
アンジェリアとルルドが現れたのは、執務補佐のグレイが止めるのも聞かずに、ルカがまさに部屋を飛び出そうとしているタイミング。ルカに再度宝珠から知らせがきて、アンジェリアに男が接触した事が分かった瞬間だった。
ルカは直ぐに、アンジェリアを手元にと強く宝珠に願った。すると、目の前にルルド共にアンジェリアが現れたのだ。アンジェリアに接触したのはルルドで間違いない。
◇◇◇◇◇
「……、何を企んでいるのですか?」
アンジェリアに負けず劣らず、ルカも冷ややかな目でルルドを見返した。グレイはいつも要領良く人間関係をこなすルカが、よりにもよってサスティアル王国の第二王子であるルルド相手に、敵意をあらわにしていることに胃が痛くて仕方がない。
「ちょっと、睨まないでよ。ほら、リアも、怒らないでーー久しぶりに再開した2人に良いことを思い付いたんだ」
感謝してよ? とルルドは笑って、机に手をかざした。すると、机上にオルソン公爵家の様子が映し出され始める。そこでは、人々は必死に何かを探しているように見える。
「わっ! みんな探してるねー。そんなにリアが大事なら、もっと態度を改めれば良いのになー」
ルルドが机上に浮かんだ様子を見ながら、面白くなさそうに言った。どうやら、オルソン公爵家では、今現在、アンジェリアを捜索中のようだ。
「こ、これって! かなり、不味いんじゃ!!」
「…、まさか、今のコーション国の様子なのか…」
机上に浮かんだ光景にルルド以外の3人が呆気にとられていると、ルルドはもう一度机に手をかざした。今度は、こちらを鬼の形相で睨む、サスティアル王国第一王アランが映った。
「うわっ! やばっ!!」
『ルルド!! お前って奴は、本当に!! ーー?! リアは、無事なのか?!』
ルルドが睨み付けるアランから身を隠すと、アランの目にアンジェリアが止まった。そして、ゆっくりと、ルカ、グレイを確認してため息をついた。
『ナサルから報告は受けている。リアが、ルルドの暴走を止めるために、使ったことのない転移魔法でその場を離れたことも…。どこに消えたかと思えば、ルカの元にたどり着いていたとはな』
アランは呆れながらも、ルカの宝珠の力に感心していた。転移魔法が失敗したのにも関わらず、宝珠が行方不明となった2人を見つけ出し、2人をルカの元に導いたのだ。改めてルカのアンジェリアへの想いと宝珠の力にアランは感服した。
『今、オルソン公爵家はルルドとリアを探して、大混乱しておる。まあ、元はと言えば、オルソン公爵家の管理の甘さが、事の始まりではあるが…』
アランからの話で、先程机上に浮かんだ光景がやはり自分達の捜索であったのかと思い、アンジェリアはひどく気不味い。一方、ルルドはアランという味方を得たと思い、開き直りを始めた。
「そうそう! あまりにもリアに対する態度が悪いから、ほんの少しだけ、オルソン公爵夫人を脅そうとしただけさ。転移魔法で狭間に飛ばされたのは、想定外だったけれど、うまいことルカ君の元にやってこれたし、リアにとっても良かったよね?」
「ルルド…!!」
ルルドのあんまりの言い訳のしように、アンジェリアは呆れて言葉が続かない。
『まぁ、今回はルカの宝珠に助けられたな。ルルドはとりあえず、サスティアル王国へ戻って報告を。リアの件は陛下にも報告した上で、コーション国に戻すことにしよう。転移ついでとはなんだが、リアは明日の昼までフォーガス国で過ごすと良い。ルカ、明日までリアを任せても良いか?』
「げっ! 僕もフォーガスでゆっくりしたいんだけど」
『お前は、直ぐ戻れ!!』
ルルドが帰国を拒むと、アランの怒りが炸裂した。ルルドは流石にヤバイと思ったのか、すぐさま転移魔法を発動させた。いつもより早いスピードでルルドの姿が透き通り消えていく。
「リア、じゃぁ、明日迎えに来るね!! それまで逢瀬を楽しんで!」
『ルルド!! さっさと、戻れ!!』
ルルドはさっと、手をかざすと怒っているアランとの通信を消した。そして、アンジェリアとルカに向き合うと真面目な顔をして言った。
「ルカ君、リアをよろしくね。出来ればリアがフォーガスにいることがバレるのは避けたいから、行動には注意して。いざとなれば、記憶を操作も出来るけれど、出来れば今は平和なこの国を巻き込みたくないんだ」
じゃぁーー、と軽くルルドはアンジェリア達に手を振ると、ルカの返事を聞くこともなくサスティアル王国へ転移魔法で帰っていった。
「……、こうも簡単に国際間を移動できるんだな…」
初めて見るルルドの転移魔法にルカもグレイも、驚きルルドが消えた場所を凝視した。そこには、魔方陣も残さず、ルルドがいた形跡など1つも残っていなかった。
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