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3番目の婚約解消⑦ 狭間からの脱出

いつもありがとうございます!

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 アンジェリアとルルド2人が脱出に向けて悩んでいる頃、コーション国では急にいなくなった2人を探して大捜索が行われていた。何しろ、消えたのはサスティアル王国の王位継承権を持つ2人である。2人に何かあれば、国際問題だとオルソン公爵家の者達は血眼になって探した。

 アンナとマリアナもアンジェリアを思い心配で倒れそうになるも、ナサルからサスティアル王国へ相談する方法があると聞き、何とか精神状態を維持していた。


「それで、この鏡でサスティアル王国のアラン殿下とやり取りをなさるのですか?」


 オルソン公爵家の屋敷内にあるアンジェリアの私室に戻り、アンナ、マリアナとロイターはナサルが自身の部屋から持ってきた鏡を疑心暗鬼に見つめた。アンナはこんな変哲もない鏡で連絡をとるなんてからかっているのでは? と不信そうにナサルに問いかけた。


「はい。アラン殿下が対応できる時間であれば、直ぐに連絡がつくかと。では、開きます」


 不思議な彫刻を施してある鏡の蓋を取り外すと、鏡と言うよりは、溢れない水を張った水鏡のような物が現れた。そこにナサルが話しかける。


「アラン殿下、ナサル=ドゥニエルでございます。至急、ご報告がございます」


 水鏡は直ぐには反応を示さなく、マリアナは騙されているのではないのかと不安になった。


「皆様、少しだけお待ちください。殿下には伝わっているはずです」


 アンナ達が白けた顔でナサルを見ても、絶対の自信があるのかナサルは水鏡を真剣に覗き込んだ。


「ーー、ナサルか、いかがした? 先程からそっちにルルドの気配を感じないのだが?」


 突然、水鏡から声がしたと、マリアナはナサルを押し退けて水鏡を覗き込んだ。するとそこには、不機嫌さを隠しもせず、こちらを睨み付けるアランが映っていた。


「ーーっ! 申し訳ありません!!」


 驚いてマリアナがアランに場所を明け渡すと、ナサルはやれやれと頭を振りながら、アランの問いに応えた。


「ルルド殿下とアンジェリア様が、オルソン公爵家のティータイム中に行方不明になっておいでです」


「ーー?! ルルドの転移魔法のせいではないようだな?」


「はい。アラン殿下、恐れ入りますが、大陸中にルルド殿下やアンジェリアの気配はありますでしょうか?」


「ない」


 アランの端的な絶望を表す言葉に、マリアナは堪えられず、しくしくと泣き出してしまった。

 大陸中に気配を感じない=死を意味する言葉はロイターにもあまりに衝撃的でガクッと膝を落とした。


「あ、あの!! 私、アンナと言います。アンジェリア様の侍女です。無礼を承知で発言いたします。お2人の行方はアラン殿下にも分からないということでしょうか」


 果敢にも最大の不機嫌を示すアランにアンナが問う。アランは少しだけ瞳を閉じて沈黙した後、ため息をついた。


「端的に言えば、2人の行方は分からぬ。けれど、死んだとも断言出来ない。ナサル、2人はルルドが力を使って行方不明になったのか?」


 アランが静かに答えた言葉に、マリアナは少しだけ希望を見い出した。ロイターも真剣に2人の会話に耳を傾けている。


「いいえ。どちらかと言えば、力を暴走させそうなルルド殿下をアンジェリア様が無理に引き離した後、お姿を消されました」


 ナサルが2人がいなくなったティータイムの出来事を簡単にアランに報告すると、水鏡からひどく雷のような音が聞こえ出した。


 ーーーーまさか、サスティアル王国、コーション国に攻めてこないわよね?


 アンナはアランの怒り狂っているこの状況に底知れぬ恐怖を感じていた。



 ◇◇◇◇◇



 その頃、アンジェリアとルルドは、のんびりとした空気の漂う空間の狭間で、あーでもない、こーでもないと脱出方法を考えていた。


「ルルド、今まで誰かに引っ張ってもらって、転移したことってある?」


「いや、ない。王族が簡単に、誰かに連れ去られたら困るだろう?」


「ーー確かに…」


 アンジェリアの質問にスパッと答えたルルドも、眉間のシワが段々と深くなってきた。アンジェリアは不安感から手首にはめたブレスレットをくるくると回し出す。アンジェリアが不安を感じると、ブレスレットを触る癖は、マリアナに見つかるとひどくからかわれる。もう、そんな日常も味わえないのかと、アンジェリアはかなりのマイナス思考に陥った。


 アンジェリアが黙り込んだので、ルルドがアンジェリアが泣いているのではないかと思い、チラッと視線を向けた。すると、アンジェリアは無表情でブレスレットをくるくると弄っている。一見、お洒落にも見えるそのブレスレットはアンジェリアが大切な幼馴染みから貰った宝物だったなぁーーと、ルルドは気がついた。


「ーーそれ! フォーガスのブレスレットだよね?!」


 ルルドが急に大声を出したので、アンジェリアはビクッと驚き、少しだけ逃げ腰になりながら返事を返した。


「ーーへ? うっ、うん、これはルカから貰った宝珠の…」


「すごい!! これでここから出られるよ!!」


 ルルドはアンジェリアの腕を掴むとブレスレットを凝視した。アンジェリアにも、この時になってようやく宝珠が元の世界へ帰してくれるかもと気がついた。


「これ、リアに何かあれば、君の()()()婚約者が気付くんだよね?!」


「…、本物のって…、たぶんルカには何か伝わるんじゃないかと思うわ」


 ルルドのルカに対する認識に驚きながらも、アンジェリアは宝珠について知っていることを話した。


「宝珠は、相手がどこにいるのか分かるって、持ち主が危険な目に合っていたなら助けてくれるって…」


「じゃぁ、婚約者殿にはリアの正確な場所が分かるってことだ!! 後はリアがピンチに合っていると宝珠に思わせれば良いんだね?」


 もはやルカをアンジェリアの婚約者だと言いきるルルドを止める気さえ、アンジェリアは起きなかった。目の前で狭間からの脱出に期待し、興奮するルルドをアンジェリアは少し冷静に見ていた。


 ーーーー私がピンチに合うって…、ルルド、なにするつもりよ?!


 まさか、ルルドから攻撃されるのではないかと身構えたアンジェリアに待っていたのは、ルルドのドアップだった。


 ーーちゅっ! ーー


 アンジェリアの頬に当たるルルドの柔らかい唇に、アンジェリアは呆気にとられた。ルルドは笑いながら宝珠のついたブレスレットを見つめている。


「すごい!! 本当に宝珠が反応してる!! ーーあっ、待って! リア、置いていかないで!!」


 アンジェリアの腕にあるブレスレットが淡く光だし、徐々に光が強くなる。呆気にとられたアンジェリアが見たものは、どんどん霞かかっていく自分の姿だった。

 慌てて手を差し伸べたルルドの手をアンジェリアが掴むと、ルルドの姿も霞がかかっていく。周りの白ばかりだった風景にブレスレットの光が溢れ出す。

 1度ふわり空気が揺れたと思うと、次の瞬間、アンジェリアはとんでもない所に転移していた。


「ーーア、アンジェ?!」


 やっと光が収まり、アンジェリアが見たものは、今にも部屋を飛び出して行きそうな必死の形相をしたルカと、それを必死で止めようとする青年の姿だった。

近所でも桜が咲き始めました。

少しだけうきうき気分で投稿しています。

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