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3番目の婚約解消③ サスティアル王国第二王子ルルド

 オルソン公爵とレオン、アンジェリアの3人で外出をした後日、アンジェリアはティール雑貨店で買ったお土産の髪飾りを持ってお屋敷の庭園へやって来た。

 今日は雲ひとつない晴天で、木陰でのティータイムには最高だ。


 ーーーーダイアナ様と側妃カルラとの衝撃のお茶会も、こんな天気の良い日だったわ…


 5年前の今日のように天候に恵まれたあの日、オルソン公爵夫人ダイアナと初めて面会した時のことを、アンジェリアはぼんやり思い出した。


「…あの激しいお茶会を、思い出しますねぇ…」


「こら! マリー!」


 どうやら、マリアナとアンナも5年前のお茶会を思い出したらしい。3人はお互いを見合って、くすくす笑い出した。

 後方では事情を知らないナサルがロイターに話を聞いている。あの場はロイターもいなかった筈なのに何やら詳しく説明していた。側妃カルラとダイアナのケンカが勃発したあの衝撃的なお茶会は、今でも王宮で話題に上がり、噂されるほどなのだ。


「天気も良いし、ダイアナ様とルーシが後から来るまで、のんびり過ごしましょうよ」


 ひとしきり笑いあった後、アンジェリアは木陰に配置されたテーブルで本を読むことにした。ダイアナとルーシが来るまで30分程ある。マリアナとアンナも立ったままでは疲れると、アンジェリアの指示で椅子に腰かけた。



◇◇◇◇◇



「……とても寛いでいるところに、なんだか入りづらいな…、こんにちは、リア。今月の手紙を届けに来たよ」


 突然、アンジェリアの目の前にうっすらと人影がでてきた。と思ったら、ルルド=シューベルトが姿を現した。ルルドは5年前のコーション国王暗殺事件から、月に1度会いに来る。コーディル公爵家からの手紙を届けに、コーション国のオルソン公爵領までアンジェリアの元へ遣ってくるのだ。

 アンジェリアは後で知ったのだが、サスティアル王国第二王子は転移が得意で神出鬼没らしい。アランが弟王子を指定したのは、ルルドの特性を見越しての事だったのだ。


 ーーーーあの時、ちゃんとシャルが説明してくれれば、そこまで恐縮しなかったのに!


 アランともあれから頻繁にルルドを介して手紙のやり取りをしていた。実は、ルルドは自分以外の人間とも一緒に転移出来るらしい。ルルドの話では時々、アランもルルドの転移魔法で、アンジェリアに面会に来ようと駄々をこねているらしかった。


 ーーーーさすがに王位継承権ナンバー1と2が揃って遊びに来ちゃ不味いのよね…


 それでも、アランのことだから、いつかこっそりルルドを使って遊びに来そうだなとアンジェリアは思っていた。5年もアランとペンフレンドをしていると、アランのテキトウさ、自由奔放が分かってくる。その一方で、家族や友人に対する厚い情などもアランの手紙から伝わってきて、アンジェリアはそれを好ましく思っていた。


「お久しぶね、ルルド。そして、手紙をどうもありがとう。困ったわ…、これからダイアナ様とルーシとのお茶会なの。それに家族への手紙は部屋に置いてきてしまったのよ…」


 ルルドはアンジェリアよりも4歳上で、初めて会った時は、あまりにアランにそっくりな容姿にアンジェリアはびっくりした。

 ただ、アランと同じ金髪で、茶の瞳を持ってはいるが、ルルドの方は物腰が柔らかくて、アランが持つ王者の貫禄のようなオーラはなかった。どちらかと言えば、護衛のナサルに似た人垂らしのようでありつつ、裏では喰えない性格という雰囲気が漂っている。

 アンジェリアとは4つ歳が離れているため、アンジェリアは最初ルルドに対して敬語を使っていたのだが、いつの間にか上手いこと言いくるめられてしまい、今のようにタメ口を使って話すようになった。

 そんなルルドはアンジェリアからこれからお茶会があると聞いても、にっこり笑って、全く困ったり、帰る素振りは見せない。


「おや? そうなの? じゃぁ、僕も参加しようかな? 久しぶりにダイアナさんに挨拶してくよーーそうそう、これ、兄さんからリアにプレゼント」


 そう言って、ルルドはコーディル公爵家からの手紙とアラン手紙の他に、贈り物を渡してきた。


「ーーっ! これ!! サスティアルのチョコレート!」


 アランがルルドに持たせた贈り物はアンジェリアの大好物のサスティアル産のチョコレートだった。アランに手紙で『リアの好きなものは?』と質問された時、『サスティアル産のチョコレート!』と答えてから、時々こうしてルルドを介して贈ってくれる。

 アンジェリアがアランの贈り物を確認するとルルドは面白くなさそうな顔になった。


「僕がこの前贈ったペンダントよりも喜んでいるんじゃない? あのペンダント、ちゃんと着けてくれてる?」


「あっ、あ…あ…、あのオーロラ石のペンダントね。ちょっと、私には勿体ないというか。あまりにもペンダントが高価過ぎて、王公貴族っぽくない?」


 ルルドは先月の手紙の受け渡し時に、アンジェリアへペンダントを贈っていた。なんでも、サスティアル産の宝石、オーロラ石の新たな鉱山が、ルルドの管轄する領地で見つかったそうだ。オーロラ石はピンク色をベースに、角度によって、虹色の色が反射する珍しい石である。大陸では全く採れないため希少価値が高く、王族や高位貴族でも中々手に入らない高価な宝石だ。

 そんな宝石を使ったペンダントを、ルルドは13歳のアンジェリアに、突然、飴玉でも渡すようにプレゼントしてきたのだ。


「ん? リアってサスティアルの王族だし、ガーライド王国の貴族だよね? 問題ないじゃん! というか、ちゃんと普段使いできるようなデザインにしたんだから!」


「いや、あのね…、ルルド…。デザインではなく…、石自体が希少なのよ…」


 どうにかして、ルルドに大陸での常識を伝えようとしても、サスティアル王族のルルドとは価値観が違うところがある。時折、ルルドとは相容れない価値観があり、結果、アンジェリアが折れるのだ。


 ーーーー贈り物のセンスは、ルルドよりもシャルの方があるのよね…。まぁ、あの俺様みたいな態度が気に入らないこともあるけれど…


 アンジェリアは、普段使いするオーロラ石なんて見たこともないが、ルルドが配達に来そうな日には忘れずにペンダントを着けることにしようと諦めた。

いつもありがとうございます!

今日はシャルの弟の登場でした。

しばらくルルドとのやり取りが続きます!


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