3番目の婚約解消① オルソン公爵領でのひととき1
3番目の婚約解消~レオン編
今日からstartです。
よろしくお願いしますm(_ _)m
コーション国王ターチルが崩御してから、5年が過ぎた。
暗殺の実行犯の罪を問われ側妃カルラは、生涯幽閉の身となり、カルラの実家の公爵家は伯爵家と降格になった。コーション国の首都では国王になったルーファスが、毎日、ベイガザード国寄りの大臣や貴族達と饒舌戦を議会で繰り広げている。
ルーファスの婚約者から降りたアンジェリアは、コーション国の賓客として扱われ、ルーファスの妹の嫁ぎ先であるオルソン公爵領に身を寄せていた。
アンジェリアは、前国王ターチルが暗殺されるまで、コーション国の王宮に滞在していたが、暗殺の冤罪を擦り付けられたり、食事に毒を盛られたり散々の待遇を受けた。サスティアル王国のアランのお陰で共に事なきを得たのだが、もしも、今後も王宮でアンジェリアの身に何かあったら大変だという事に至った。そこで、ルーファスが信頼できる臣下のオルソン公爵の元に、婚約者(仮)の第二王子レオンと一緒にアンジェリアは移り住むことになったのだ。
ーーーー程よく田舎で、程よく都会。外出も許されているし、このまま首都には戻りたくないって思っちゃう
オルソン公爵領に住まいを移るにあたり、王宮から騎士が護衛としてたくさんついてきた。元々オルソン公爵領の治安は良い方だったが、さらに警備が厚くなり、この数年は夜でも滅多な事件は起きていない。
「あぁ、ようやく見つけた。アンジェはここにいたんだね。今からオルソン公爵と町へ視察に行くけれど、アンジェも一緒に行く?」
今日は天気が良く爽やかな風も吹いており、アンジェリアは昼食の後から、庭園の東屋で読書を楽しんでいた。
そこへ外出の準備をしたレオンがアンジェリアを探しにやって来た。今から、オルソン公爵領の城下へ視察に繰り出すようだ。王子のレオンが外出するとなると、護衛もわらわら付いて回る。アンジェリアが個人で散策に町に繰り出すよりは、まとめて外出した方が護衛も楽だろう。
「そうね、ぜひご同行をさせてもらおうかしら?」
アンジェリアは読んでいた本をアンナに渡すと、上着を部屋から持ってくるように頼んだ。
アンジェリアはレオンのエスコートで正面玄関まで先に行き、馬車でアンナとマリアナを待つつもりだ。
5年前、初対面でのレオンの印象はかなり悪かった。側妃カルラの言い分を疑いもせずに真に受け止め、アンジェリアに敵意を剥き出しにしていた。
それが、オルソン公爵領にやって来て、少しずつではあるが確実に改善されてきた。
まず、オルソン公爵は、レオンが住まいを移すと同時に、彼についていた教師を全て一新した。側妃カルラの息のかかった教師から離れて、レオンの思考も徐々に多種多様な意見を受け入れ、視野も広がっていった。すると、アンジェリアや他の人間への態度も自然と柔らかくなり、今では周りと友好な関係を築ける青年に成長した。
「今日はアンジェが気に入った、カヌレも買ってこようか? 夕飯の後に一緒に食べよう」
「あら? 私が気に入ったのではなくて、レオンがカヌレを好きなだけじゃない?」
レオンとアンジェリアは仲良く軽口を叩きながら、馬車停まりへとやって来た。屋敷の中をショートカットしたのか、すでにアンナとマリアナが2人を待っていた。
レオンのエスコートでアンジェリアが馬車に乗り込むと、そこには既にオルソン公爵が座っていた。2人が乗り込むと、視察の帰りにカヌレを売っている店へ立ち寄ることを教えてくれた。レオンの考えなど始めからお見通しだったようだ。
「レオンってば、カヌレのお店に女性同伴ないと入りづらいからって、私を誘ったのよね?」
「おや? 女性とは? どこに? アンジェはまだ子供じゃないか?」
「むぅ! そういうレオンだって、まだまだ子供じゃない!」
馬車の中でも軽口を叩き会う2人をオルソン公爵も微笑ましく見守っていた。
町への視察は日帰りの予定であるが、レオンが王族であるために警備は厳重である。アンナとマリアナは他の馬車で同行し、ナサルや他の騎士達は騎馬隊として同行していた。その仰々しさは半端ないのだが、安全を担保するために大勢での移動は仕方がない。
ーーーーガーライド王国にいる時は、もっと気楽にルカとお出かけできたのにな…
アンジェリアが時折見せる寂しそうな顔をレオンも気付いていた。異国で過ごさなければならないアンジェリアを励まそうと、レオンはスケジュールの許す限り、外出にはアンジェリアへ声をかけていた。それを護衛の騎士達は暖かい目で見守り、時にレオンをからかったりしていた。
「アンジェはさ、ガーライド王国に帰りたいと思う事がある?」
ーーーーもうすぐセライアお姉さまとイアンの誕生日ね…今日の外出で贈り物も買おうかしら…
「ーーアンジェ? 聞いてる?」
「ーーへ? あ、ごめんなさい、レオン。ぼんやりしていたみたい。何と言ったのかしら?」
馬車の窓から見える景色を、アンジェリアはぼんやり眺めていた。アンジェリアがコーション国に来て、6年近くたつ。アンジェリアの下の弟イアンとは会わずして6歳になろうとしていた。
「ーーいっ、いや! 大したことではないから大丈夫…! そうだ、アンジェ、今日は行きたいお店はあるのか?」
急に話しかけられて、きょとんとしたアンジェリアの顔を、レオンは可愛いなぁ…と思い見つめ返した。そして、なんだか急に恥ずかしくなり、慌てて適当な質問をアンジェリアに投げ掛けた。アンジェリアは急にアワアワと焦るレオンを不思議に思いながらも、先程まで考えていた姉弟の誕生日のことを伝えた。
「ーーもうすぐ、私の2番目の姉と弟の誕生日なの。だから、贈り物が見つかれば良いなぁって考えていて…」
「誕生日のプレゼントかぁ…、うーん。どんなのが良いのだろう? 2人の好みは分かる?」
アンジェリアは、ふむと、考え込んだ。姉のセライアは頻繁に手紙をやり取りしていて、ある程度の好みは想像できた。弟のイアンは生まれてから今まで、会ったことはなく、乳母が喜びそうな"お子様のお世話グッズ"しか選んでいない。
ーーーーもうそろそろ、イアンの好みも考えて贈り物をしなくちゃ…
そこで、アンジェリアはあることに気がついた。今まで会ったことのない弟イアンの好みなど知らないのだ。もちろん、弟からの手紙を貰った事もあるが、それらは幼い子供が書いた短い挨拶や、よく判らない絵ばかりだった。
「どうしよう…。セライアお姉さまの好みは分かるけれど、弟のイアンの好みはまるで分からないわ…」
アンジェリアが困った顔でそう答えると、レオンも、うーんと考え込んでしまった。そんな2人のやり取りをオルソン公爵はにこにこと見守っていたが、子供達だけではプレゼントの案が中々浮かばないのを見かねて助け船を出してくれた。
「それなら、新しく店を構えた『ティール雑貨店』に寄るのはどうだろう? 世界各地から取り寄せた珍しい物を始め、手頃だけれど品のあるアクセサリーやハンカチ、置物なんかもあって人気らしいぞ?」
「それは良いお店ですね! 2人への贈り物も見つかりそう! ぜひ行きたいです」
さすがは領主である。まだ大人とは言えないレオンとアンジェリアよりも、町の様々な店を把握している。
アンジェリアはオルソン公爵のお勧めに従って、視察の合間にティール雑貨店へ立ち寄ってもらうことにした。
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