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フォーガス王国② ルカから見たアラン=シャルレイン=サスティアル

間話2話目です

ルカ視点で、フォーガスの様子を伝えています

 ルカが母親と共にフォーガス国を訪れるのは、ひどく久しぶりの事だった。ルカの母親はフォーガス国王のひとり娘であり、ガーランド王国の王族であるセーシル公爵に嫁いだ。

 安易に旅行なり里帰りできる立場ではないため、何か用事があれば、息子であるルカが信書と共にフォーガス国を一人訪ねる事が多い。

 

 今回、珍しく母親であるセーシル公爵夫人とルカがフォーガス国を訪れたのは、他でもない国王陛下の容態悪化の知らせを受けてだった。


 正直なところ、幼馴染みであり、婚約者であったコーディル公爵令嬢のアンジェリアがコーション国に旅立って日が浅いため、ガーランド王国を離れることに、ルカはかなりの躊躇いがあった。

 ガーランド王国内は今、第一王子のライアルト殿下が病に伏せているとの噂が流れ始めている。ルカは、そんな情勢の変化を少しでも多く掴んでおきたかったために、祖父が重篤な病だと知らせを受けても、フォーガス国へ向かうのは嫌々だった。


 ただでさえ、10歳の自分では入ってくる情報はかなり少ない。友人でもあるセシル=ラークブルグ侯爵令息に、ガーランド王国内の情報収集をお願いしたが、彼もまた12歳であるために期待はできない。

 それでもしぶしぶフォーガス国に来たのは、この国がサスティアル王国と医療技術で結び付き、国交を持っているとの母親の説得を受けたからだった。


『フォーガス国の王位継承権は、貴方にもあるの。だから、フォーガス国王陛下に何かあれば立ち会わなければならないわーーそれに、フォーガス国には見舞いと診察のために、サスティアル王国から高位貴族が派遣されるはずよ。アンジェリアについて有益な情報が得られるのではないかしら?』


 そんな母親の言葉を受けてフォーガス国に来てみれば、重篤な国王陛下を尻目に、次期国王を巡る派閥争いが王宮内で繰り広げられていた。

 フォーガス国王には王太子と娘ーー2人の子供がいる。娘の方は若くしてガーランド王国の公爵家に嫁いだ現セーシル公爵夫人。王太子の方は妃が1人と息子と娘が1人ずつおり、フォーガス国内で医療関連に携わっている。


 順当にいけば、次の国王は王太子であるルカの叔父なのだが、彼は生まれつき体が弱くここ数年は床に臥せっていることが多いと聞く。では、その息子ールカの従兄ーがこちらは、フォーガス国秘伝の呪い(まじない)が使えない。フォーガス国では、折々の祭典で国王自ら呪い(まじない)を披露し、国の繁栄に繋げてきた。そのため、王位継承権はあるが従兄を新国王へ押す勢力は弱い。

 従妹についても同じで、呪い(まじない)が使えず、早々に王位継承権を放棄し、医療研究に没頭していると聞く。


 ーーーー王太子殿下の体調が、今後の医療開発で救われることはないのか…このままでは、面倒な事に…


 このままではフォーガス国の王座が空席になりかねない。それを心配したフォーガス国の貴族達は、ガーランド王国のセーシル公爵令息に目をつけた。母親と共に久しぶりに王宮に現れた少年に、フォーガス国の呪い(まじない)の力があると分かると、その寵を巡って大人達が殺到した。


 ーーーーとりあえず、母上を()()に抜けてきたは良いが…


 ルカは次期フォーガス国王になるなんて滅相もない事だと、母親にも現フォーガス国王にも伝えている。2人とも本人が希望しないならと渋々意向を汲んでくれていたが、フォーガス国の貴族達はそうは考えてくれていないらしい。今やフォーガス国内では、現国王の息子の王太子までもが、自身の息子ではなくルカを次期国王へ推していた。


 ーーーーこんな事になってるんなら、フォーガスには来なかった…


 フォーガス国での歓待にも辟易していたルカは、気分転換に王宮内にある庭園へと逃げ込んだ。たとえ公式の場でなく、子供であっても王族に連なるルカに早々声はかけられない。周りからはなめ回すような視線を感じるが、庭園の花を見ていると自然と気持ちが落ち着いてくる。


 ーーーーこれはアンジェが好きな花…


 フォーガス国とガーライド王国の気候が似ているためか、庭園にはアンジェリアが好きな花も多い。自然と和やかな気分になり庭園を何の気なしに散歩していると、庭園の端から明らかに庭園にはそぐわない異色な気配を感じた。

 ルカが怪訝に思いながらも視線を向けると、そこには一見、極普通に見える王宮の文官がひっそりと目立たぬようこちらを伺っていた。


 ーーーーなんだろう…霧のような…煙に巻かれたような気分だ…


 ルカが違和感を感じて、一旦立ち止まると、チリン…と、耳元で鈴がなったような気がした。


 ーーーーこれは…、宝珠の知らせ…!


 アンジェリアに渡した宝珠から何かの信号が伝わるのを感じたルカは全神経を集中させる。しかし、アンジェリアに危険が迫った時に感じるはずの、胸の痛みを全く感じない。

 ではこれは何なのだろうと、もう一度、先程の文官に目をやると、文官の姿か二重にダブって変化していく。

 地味な文官の後ろに重なるように、徐々にサスティアル王家に伝わる美貌を持った年若い男性の姿が透けて見えてくる。


 ーーーーまさか…! サスティアル王国から派遣されたのは、アラン=シャルレイン=サスティアル?!


 ルカは驚きつつも、文官に扮した世界最強国の第一王子へと足を進める。母親の説得を受けてフォーガス国へ来たのは、他でもないサスティアル王国の者と接触するためだった。


 ーーーーこれが、幻影魔法というものか…


 アンジェリアが昔話していたことがある。サスティアル王国から従兄が遊びに来たことがあったが、周りに気づかれぬよう姿を変える幻影魔法を使っていたと。


『ーーはじめまして…、突然で失礼だとは思いますが…貴方は、もしや、サスティアル王国の方ではないですか?』


 ルカは確信をもって文官に扮したアランに探りを入れるように挨拶をした。すると、アランは強い視線をルカに寄こし、一瞬だけ、ルカの全身に寒気が走る。


 ーーーーなんだこれ? 全身を隙間なく調べられているかのような…


 ルカは自身に魔法をかけられているのかと思い、アランに警戒心を露にすると、反対にアランは納得したかのような柔らかい表情へ変わった。


『貴方は、最愛の宝珠を我が従妹殿に決められたのですね』


 瞬く間にルカは自身について、宝珠のことも全てアランに把握された事を知る。ルカは、『サスティアル王族直系には不可能な事はないの』ーーとアンジェリアが言っていたのを思い出した。全てお見通しで少し怖いのだと、従兄をそんな風に話していた。


 ルカはすでに文官に扮した青年が、アラン=シャルレイン=サスティアルで間違いないと悟ったが、公式の場ではない、王宮の庭園で話して良いものかと躊躇いがあった。


『貴殿は、もしや、第一王子…』


 ルカが探り探り尋ねると、アランは強い視線でその先の言葉を止めた。


『ーー挨拶は、此処では。何しろ公の来訪ではないので、ね。後程、また、お会いすることになるかと』


 にっこり微笑んだアランはこれ以上、答えることはないとの意志が伝わってくる。

 ルカもここは一旦挨拶を諦めて、改めて公の場で挨拶をさせてもらおうと、来た道を引き返すことにした。

お読み頂きありがとうございます!

後、1話で間話終了です


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