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フォーガス国① アランから見たルカ=フォーガス=セーシル

間話 フォーガス国編です。

2番目の婚約解消~ルーファス=コーション編の、

アランがコーション国に来る少し前の話です。


 アラン=シャルレイン=サスティアルがフォーガス国を訪れたのは、近年体調を崩しがちだったフォーガス国王の容態が思わしくないため、診て欲しいとの依頼からだった。


 サスティアル王国とフォーガス国は、ここ数年前から、最新医療開発を協力して進めている。互いの国の優れた学者をフォーガス国内の研究機関に送り、医療の発展を通して両国の関係は徐々に深まってきていた。

 そんな中、フォーガス国王の体調が悪化した。通常であれば、癒しの魔力が高いシャーナ公爵が派遣されるところであるが、ちょうどシャーナ公爵はガーランド王国でコーディル侯爵夫人の出産後でガーランド王国へ出向いており、不在だった。

 そこで、滅多にサスティアル国外には出ないとされる第一王子が、フォーガス国を内密に訪れた。



◇◇◇◇◇



 ーーー国王はこのまま老衰かな…


 アラン=シャルレインがフォーガス国王を診察すると、結果は老いに伴う健康悪化だった。老衰とあれば、回復魔力は使用しないーーそれが国際間の取り決めであったため、フォーガス王妃にその旨を伝えた。フォーガス王妃は非常に残念がったが、決まりは変えられない。老衰も回復魔力が得意なシャーナ公爵ならば何とか治せるが、それをしてしまえば、死に至る王族がいなくなり世の中は混乱を招く。

 サスティアル王国は、王族の自殺、老衰、特定の疾患は治療しないことと国際間で結んでいた。


 ーーーあれは、たしか…我が従妹君の元婚約者ではないか…?


 国王に一通りの診察と国の重鎮達に挨拶を終えた後、アランは、何の気なしにフォーガス王宮の庭園を散策していた。幻影魔法で姿を変えれば、アランの事を気がつく人間はまずいない。気楽にフォーガス国自慢の庭園を観賞していた。


 すると、庭園が微かにざわついた。何か起きたのかと、様子を伺えば、同じく庭園を観賞していた貴族達が何かを目で追っているのが分かった。前方にやたら綺麗な少年が庭園を横切ろうとしていた。

 庭園にいたレディ達が、突然現れた天使に見まごう程の少年の美貌に、ヒソヒソと囁きあっている。

 アランは、少年の容姿から直ぐにフォーガス王族であること、年齢からガーランド王国にいるはずのセーシル公爵家の子息だと分かった。


 ーーー国王の体調悪化で、見舞いにでも来たのか


 フォーガス国王は、かの少年の祖父だったかーーなんて思いながら、少年の様子を観察していると、ふと少年と目が合った。


 ーーー取り敢えず、黙礼でもして遣り過ごすか


 アランは身分を隠し、大使としてフォーガス国に訪れていた。そのため、幻影の魔法を使って自身の外見を文官風にしていた。アランの本来の外見であれば最高芸術品の様な神々しさなので、とても気軽に外へは出られない。周辺諸国を正しく学ぶため、国外では普遍的な外見に変装する必要があった。


 しかし、アランの予想に反して、目が合った少年は目的地を変更したらしい。アランを逃すものかという強い眼光で、真っ直ぐアランへ向かってきた。


『ーーはじめまして…、突然で失礼だとは思いますが…貴方は、もしや、サスティアル王国の方ではないですか?』


『ーー!?』


 ーーー驚いた! 我が幻影魔法に気がつくとは!


 サスティアル王家の者でなければ、アランの幻影魔法に気付くことは難しい。まさか、国外で自身の魔法を見抜かれるとは、とアランは驚いた。何故己の魔法が分かったのかと少年の気を探れば、ふと、おかしな所に気がついた。彼の気配がタブっている、いや、少し欠けてーー?


 ーーーなるほど、それで、気が付けたわけだ…


『貴方は、最愛の宝珠を我が従妹殿に決められたのですね』


 少年の質問には答えず、アランは確信を持って少年に告げた。フォーガス王族の宝珠は一生で一人だけに贈られる大切なものだ。アランの見立てでは、少年の宝珠は、今は遠くの空の下にある従妹殿の元にあるらしい。

 少年のおかしな所、そして、何故己の幻影魔法に気が付いたのかは、それで全て納得がいく。


 ーーー少年の宝珠が従妹殿にあるから、微かに魔力が透けていたのか…無駄に魔力の多い従妹殿の影響とはいえ、フォーガス王族の呪い(まじない)の力も影響…しているのか?


『貴殿は、もしや、第一王子…?』


『ーー挨拶は、此処では。何しろ公の来訪ではないので、ね。後程、また、お会いすることになるかと』


 何かを察した少年に、アランはやんわりと挨拶を断った。少年も庭園のざわめきに気が付いたのか、深く頷くと軽く会釈をして、今来た通路へと戻っていく。


 ーーー従妹殿は面食いではないと言っていたが、いやはや…


 アランは従妹に初めて面会をした時の事を思いだし、人懐っこく笑い、愛嬌いっぱいだった従妹を懐かしく思った。



 ◇◇◇◇◇



 アランは、数年前、サスティアル王国にいる叔母シャーナ公爵とガーランド王国に嫁いだもう一人の叔母に会いに行った事がある。

 ガーランド王国にいる叔母の娘に魔力持ちが産まれたと言うので、娘が5、6歳になった頃に内密に面会に行ったのだ。

 サスティアル王国では、王族の婚姻相手として魔力の高い者を据える。そのため、アランとは年が少しばかり離れてはいるが、将来の婚姻相手として娘が密かに候補に上がっていたのだ。


 ーーーあの少年の優しい所が大好きだ、と従妹殿は言っていたか…?


 アランが幼い娘に会ったとき、その娘には既に特別な人間がいた。聞けば、娘が産まれた時から、少年との交流があったという。


 ーーーコーディル殿は、娘が国外に出るのをどうしても避けたかったらしいからな…


 ガーランド王国に嫁いだ叔母の相手は、愛妻家で家族をとても大切にしているようだった。サスティアル王国から、魔力持ちの娘を嫁にどうかと、打診を内密にするやいなや、娘に適当な相手を直ぐに置いたらしい。娘の相手は、ガーランド王国内の、同じく公爵家の嫡男だった。

 件の報告を受けた、サスティアル国王は、娘は3人いるのだから、魔力持ちの娘、1人くらいサスティアル王国へ返して欲しいと嘆いた。

 結局、娘が公爵家の嫡男を大変好ましく思っており、アランが娘に面会しても全く心変わりを見せなかったために、サスティアル王国との縁組は流れてしまった。



 ◇◇◇◇◇



 ーーーこの僕を袖にしたんだから、余程の相手かと思えば…


 アランの神々しい美貌に全く靡くことのなかった、コーディル公爵家の娘は、天使のような柔らかく優しげな少年を選んだようだ。

 アランとの面会時に、少年の何処が好きなのかと娘に問うと、少年の優しい所とすぐさま答えていたが、少年の容姿もアランと勝るとも劣らない。


 ーーー好みの系統が違ったのかな…?


 アランは従妹が聞いたら怒るだろうと思いながら、少年の後ろ姿を見つめた。


 ーーーさて、フォーガス王族の宝珠が従妹にあるとなれば、少し策を練らなければ、な


 とにかく、サスティアル国王は妹とその子供達の事を大切にしていた。特に、国外で最高峰の魔力を持って産まれた姪には心を砕いていた。

 それは、姪が国外に嫁に出されると聞くやいなや、ガーランド王国へ抗議の使者を何度も送るほどだった。それでも、ガーランド王国は、第一王子の延命のため膨大な魔法石と引き換えに、サスティアル国王の姪を差し出した。その決定を受けたサスティアル国王の怒りは想像を絶するものだった。


 確かに、サスティアル王国からは、ガーランド王族のためだけに魔法石の輸出量を増加させることはできない。国家間のバランスの乱れを引き起こしてしまうからだ。大量の魔法石は、悪用すれば止めどなく大量殺人兵器の増産に使われるだろうし、安易な魔法石による延命行為は神の領域を侵すことにもつながる。サスティアル王国は、輸出するもの全てに緻密な調査を行い、その量を決めていた。


 ーーー今後、我が国とガーランド王国は道を別つとしても、従妹の身の安全を確保しなくては…


 サスティアル国王は、コーディル公爵家にいる妹とのやり取りを続けながらも、ガーランド王国との国交を切る方向で調整していた。


 今までは、同じく妹を溺愛するシャーナ公爵が、ガーランド王国とサスティアル王国の関係を担ってきた。しかし、此処に来て、姪を人質に差し出したガーランド王家に不信を募らせている。もう一人の姪が、ガーランド王家に嫁ぐのも納得がいかないと不満を漏らしていた。


 ーーータチアナと言ったか…? それにしても、妹を売ってまで王子妃になりたいとは…


 アンジェリアの魔力の種類について国教会に情報を漏らしたのが、姉のタチアナと言うことは、サスティアル王国の密偵によりあっさりバレていた。

 それを知ったサスティアル国王はもう一人の姪のしでかしたことに、頭を抱えて苦悩を漏らした。ガーランド王家は、まだタチアナの所業を関知していない。けれども、公になれば、コーディル公爵家が裏でベイガザード国との繋がりがあったのではないかと疑われる事になるだろう。


 ーーーガーランド王国の国教会はある王族を通して、ベイガザード王国と繋がっている


 ガーランド王国の機密機関もこの情報を付かんでいるが、決定打が見つからないのか動かない。

 ベイガザード王国は、ガーランド王国の国教会を動かして、大量の魔法石とアンジェリアを引き換えにすることを薦めた。コーション国自らアンジェリアを人質として要求した事はベイガザード王国としては、僥倖だったことだろう。あとは、コーション国をどうにかしてガーランド王国への魔法石の輸出を失くし、ベイガザード王国が魔法石を奪う魂胆だと考えられた。

 そして、アンジェリアもその魔力の高さと能力から、今後、ベイガザード王国が狙うのは必須である。

 一方で、ガーランド王国はアンジェリアを人質にした件で、サスティアル国王の怒りに触れ、距離を取られる事になる。

 大国といえども強固な後ろ楯がなくなったガーランド王国を狙うのは今だろう。コーション国で採れる魔法石で軍事力を上げることが出来たなら、ベイガザード王国はアンジェリアを人質に戦を仕掛けるに違いない。


 この程、サスティアル王国内での議会でも、近く起こりうる国家間の争いに備えるべく、ある結論に達した。

 それは、魔力の持たないタチアナ、セライアはガーランド王国の単なる貴族とし、サスティアル王国は今後関与しないと言うものだ。

 アンジェリアの産まれたばかりの弟の魔力は、今シャーナ公爵が確認中だが、おそらくアンジェリアより遥かに魔力は低いだろうと見られていた。サスティアル王国の平民レベル以下だという。

 一方、コーション国で過ごすアンジェリアについては、サスティアル王国が全面的に保護すべく動く事になった。

 サスティアル王国内で法の整備が終り次第、アンジェリアに正式な王位継承権を認め、それを持ってアンジェリアに手出しが出来ないようにするのだ。

 サスティアル王国の王位継承権を持つ者のみ、瞬時に玉座の間へ転移し戻ることが出来る。これをアンジェリアに該当させれば、身を守ることは容易い。アンジェリアの高い魔力をもってすれば、転移も直ぐに可能だろう。

 

 ただ、元々は直系の王族を保護するためかけられた最高峰の魔法だ。アンジェリアの様なサスティアル王国を捨てた王女の娘には相応しくないと言う反対の声もあり、議会が紛糾したらしい。

 結局、サスティアル国王が議会に己の退位をちらつかせて、有無を言わせず法案を通したのだ。今後は、この最高峰の魔法にアンジェリアを組み込む作業が魔導師によって行われる。国王の圧を受け、火急速やかに魔方陣等の変更が行われているが、今までに直系以外を対象にしたこともなければ、変更を加えたこともない。サスティアル王国最高峰の魔法なため、かなりの期間を要すると見られていた。


 ーーーまさか、父上が議会を脅すとは


 現サスティアル国王は、今だかつてない程の魔力を有する国王で、その手腕からサスティアル王国は最高の繁栄を手にしている。議会との関係も良好な温厚な国王だったが、国外の姪を守るためになりふり構わず動いたのには議会にとっても衝撃だった。

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