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2番目の婚約解消 23 高貴な伝書鳩

 のんびりと微笑みながらリラックスをしてお菓子を食べているアランの様子を見ていると、サスティアル王国の継承権が思ったよりも大したものではないんじゃないかと、アンジェリアは誤解してしまいそうになった。


 ーーーーいやいや…それはない!! 継承権を議会で承認したって…、かなり大事では?


「ーっ! サ、サスティアル王国の、けっ、継承権を持つことは、何か責任が出てくるのではないかと、思うのですが…」


 アンジェリアが事の大きさにおののきながら、アランに投げ掛けると、アランはきょとんとした顔をした。


「いや? 王位継承権があるって言っても、リアは第5位だ、特に責任はない。 そうだなぁ…、どこかのタイミングでサスティアル王国に来てもらって、シールドの強化にでも力を貸してくれればOそれで義務は果たしたことになるだろう」


 魔力量の多いアンジェリアには簡単だと思うから、数分で終わるはずだよーーなんて、言いながらアランはまた、茶菓子に手を伸ばし始めた。


 ーーーー…お腹が空いてらっしゃるのかしら?


「あの、良ければ、何か軽食をご用意致しましょうか?」


「あぁ、すまないね? この国の朝食は豪華過ぎる。可憐な、私は胃もたれになってしまうよ…」


 あまりに茶菓子ばかり食べているアランに、アンジェリアは引きつった顔でアランに提案した。どうやらアンナも、アランがひたすら茶菓子を食べ続けるのが気になっていたらしい。アランがその提案を受け入れる同時に、アンナが軽食を準備すべく静かに部屋を出ていった。

 セーシル公爵も同じタイミングで、アンジェリアのサスティアル王国の王位継承権承認について、ルーファスに伝えるべく部屋を後にした。


「リアの朝食にも、朝からステーキだの地魚のオイル焼きだのが出てくるのか? これでは一日中満腹感で吐きそうになるのではないか…」


「あはは…、それは、シャ、シャル、は高貴な方ですから料理も張りきったのでしょう…」


 どうやら、サスティアル王国の第一王子を持て成すということで、朝食に気合いを入れすぎたようだ。よほど脂っこい料理が並んだのか、アランは思い出して不味そうな顔をした。

 部屋の雰囲気が和やかになって来たところで、アンジェリアは継承権についての疑問点をさらにアランに聞いてみることにした。


「シャル。もしもなのですが…、私がこのままコーション国から出られず、サスティアル王国の王位継承権を持つ者がコーション国に嫁ぐことになったりしたら…」


 人質として部屋と庭園を行ったり来たりの生活をしているアンジェリアは、今後の各国の動向が読めない。昨日アランは将来的にアンジェリアをルカに渡すと話していた。けれども、アンジェリア自身は結局何も変わらずこのままコーション国で暮らすことになるのではないかと不安を感じていた。ライアルトの病状は気にはかかるが、世界的にみても、このまま争いが起きないのが一番なのだから。


 ーーーー変な期待をしてはいけない。第二王子レオン様の婚約者になる可能性がないわけではないのだから


 アンジェリアはアランがサスティアル王国に帰ってしまう前に、周りに流されたままの自分の未来について、思いきって聞いてみようと決意したのだ。

 そんなアンジェリアの決意と強い眼差しには気付いていないかのように、アランはきちんとアンジェリアにシャルと呼ばれたことが嬉しかったらしい。緊張感の全く感じない満面の笑みで、アンジェリアの質問に答えた。


「リアは心配症なのか? 大丈夫、リアは宝珠をルカから貰ったのであろう? それならば、宝珠がリアをルカに導いてくれるはずさ。なぁに、心配ならいらない。今後、リアに何か危害を加えようとする者が出たなら、シャーナ叔母上の加護とナサルが守ってくれるだろう。まぁ、リアに敵意を向けるということは、サスティアル王国全体を敵に回すということだ。そんな輩はそうそう出てこないさ」


 アランのふんわりとした確信を持てない回答にアンジェリアは不安になった。けれども、これ以上聞いてもアランは同じような回答を返してきそうだと幼いアンジェリアにも分かった。


 いつまでも不安そうなアンジェリアの表情にアランは少し苦笑し考え込んだ。そして何か閃いたようで、にやりと悪い顔になり、我が新たな提案をアンジェリアにしてきた。


「今、コーション国からリアが文を出すには検閲を通しているね? よし、これを解決しようではないか? そうすれば、コーディル公爵家ともセーシル公爵家とも気安く連絡をつけれるし、気持ちも癒されるだろう? ちょうど我が弟、ルルドが暇をしておるのだ。こいつを伝書鳩として使おうではないか!」


「なっ!! ルルド=シューベルト殿下を?!」


 アランのとんでもない提案にアンジェリアは目眩がしそうになった。世界のどこにサスティアル王国継承権ナンバー2を伝書鳩代わりに使う者がいるのか。アランの発想はあまりにも突拍子もなく、側にいたマリアナも驚いて口をあんぐり開けていた。


「そう固く考えなくて良いのだ。月に1度くらいならルルドでも負担が軽かろう。それにリアにはサスティアル王族がついているという対外的なアピールにもなるしな。こちらもリアの現状を正しく判断できる。良いことだらけではないか」


 アランはさらっとそう答えると、軽食はまだかとマリアナに問いかけた。直接声をかけられたマリアナは顔を真っ赤にして、『はい! ただいま確認して参ります!』と叫ぶように答えるとあわてて部屋から出ていった。


 ーーーーそういえば、アラン殿下はやたらと顔が良いものね…


 アンジェリアは昨日から緊張の連続で、アランの顔立ちの良さを気にする暇もなかった。改めて見つめてみるとアランもナサルも顔立ちの良さが際立っており、神々しささえ感じられる。


「では、お言葉に甘えてルルド殿下にお願いしたいと思います」


「あぁ、ルルドには私から伝えておくよ。なぁに、気楽な奴だし、私よりもリアに随分年頃も近い。リアともすぐに打ち解けられるだろう」


 アンジェリアはどこかに飛びそうな意識をしっかりと繋ぎ止め、恐れ多くも人間伝書鳩の役目をルルド殿下に託すことにした。アランも素直なアンジェリアの返事に喜んだ。そして、ちょうど軽食を持ってきたアンナとマリアナにアランがありがとうと笑いかけると、2人は悲鳴に近い黄色い声をあげた。 


 ーーーーアラン殿下はサスティアル王国に帰るけれど、ナサル殿は残るのよね? アンナとマリアナは大丈夫かしら…


 憧れるのは良いけれど、ナサルはサスティアル王国公爵家の者だ。2人がナサルに恋心を抱かなければ良いけれどと、アンジェリアはこれからの生活が少し不安になった。

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