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2番目の婚約解消⑲ 暗殺の真相は?

 アンジェリアは高度な癒しの力を持っている。国王はそれを知っていたのに、暗殺が実行された時アンジェリアを呼びもしなかった。


「国王には何か思うところがあったのかもしれないね? それにしても、アンジェリアに罪を擦り付けるとは、エステリア国はガーライド王国にも触手を伸ばそうとしているのかな?」


「エステリア国はガーライド王国にも何か仕掛けているのですか?!」


 アランはうーんと首を捻り、アンジェリアにとっては聞き捨てならないことを呟いたため、アンジェリアは驚いた。


「はぁ…、アンジェはまだ幼いからまだしも、アラン殿下も少しはガーライド王国に興味を持ってくださいませ…」


 セーシル公爵は呆れ顔でそうお願いをすると、ガーライド王国とエステリア国の関係について教えてくれた。


 エステリア国はここ数年、現国王が即位して後、中立国の立場であっても徐々に他国と関係を築こうとしているらしい。理由は明かではないがエステリア国王は友好の証として、ガーライド王国第二王子マティアス殿下の婚約者に娘を宛がう事に成功している。

 現エステリア国王の妹は、コーション国に王妃として嫁ぎ若い内に病で亡くなったらしい。中立国の立場であっても隣国のコーション国とはちょくちょく縁談を結んでいたが、他国との縁組は聞いたことがない。コーション国以外でエステリア国が縁組を持ちかけるのは、ガーライド王国が初めての事だった。


「エステリア国の姫様が、マティアス殿下の婚約者だったのですね…」


 アンジェリアは確かに第二王子の婚約者は他国の姫君に決まったと聞いたことはあった。第二王子の母は第一王子と第三王子とは異なり、側妃殿下である。側妃の派閥は王太子に当然、第二王子のマティアスを推していた。そのため国内の軋轢を少しでも減らすために、国王はガーライド王国と縁もゆかりもない国の王女を婚約者として宛がったのだ。


「でも、マティアス殿下本人は策略とか、派閥争いとか無関心な方だと、タチアナお姉様は仰っておりましたが…」


 姉のタチアナによれば、マティアス殿下はものすごく穏やかな性格で将来は国教会の役職を担いたいと希望していると言っていた。


「なるほど、まぁ、第二王子の意思はどうでも良いのだろうね? うまくガーライド王国に入り込めば、エステリア国としては良いわけだから」


 アランはセーシル公爵の説明に1人納得して頷いた。エステリア国の姫がガーライド王国にやって来て何ができると言うのだろう。


 ーーーエステリア国の姫、マティアス殿下の婚約者…、ザイゼル草の栽培…、ライアルト殿下を?!


「! まさか!! ライアルト殿下の?!」


 アンジェリアが行き着いた考えに驚き、ガバッと顔をあげると、セーシル公爵とアランは頷いた。


「従妹殿は幼くとも賢いね? 恐らく、従妹殿の考えた通りの事が起きたんだろう。エステリア国がガーライド王国のライアルト殿に毒を持った。恐らく、殺すまではしないよう、服毒量をコントロールして」


 アランがセーシル公爵に確認をとるよう視線を送るとセーシル公爵は肯定をした。


「おっしゃる通りです。ザイゼル草の量を減らし、その代わり呪詛を加えたのでしょう。そうすれば、長く苦しむ事になることを狙っていたと思われます。ガーライド王国がコーション国の魔法石に頼るよう、仕向けたと思われます」


 セーシル公爵の説明によって、第一王子のライアルトが長期に渡って苦しむことをエステリア国が期待してたと知り、アンジェリアは背筋が寒くなった。


「エステリア国は、ガーライド王国の第一王子ライアルトの毒殺未遂の実行とコーション国王ターチル毒殺に関わってるわけだ。でも何で、魔法石をガーライド王国が欲するように仕向けたんだ?」


 アランがセーシル公爵に問えば、セーシル公爵は少しは外交にご興味をお持ちくださいませーーとため息をつき、説明を続けた。


「ベイガザード王国は兵器に魔法石を使用できるよう開発を進めているという情報があるのです。それをエステリア国は恐れたのではありませんか? それで、コーション国と手を組んで、ガーライド王国の第一王子を狙ったのです。魔法石をベイガザード王国に渡さず、自国を守るために」


 セーシル公爵の説明は、アンジェリアも納得出来るものだったが、では何故アンジェリアをコーション国へ送るようベイガザード王国は仕向けたのか疑問に思った。それは、ソファでふんぞり返って説明を聞いていたアランも同様だったらしい。


「ふーん。そうか…ではコーション国は、なぜ従妹殿を人質にするように仕向けたんだ? ライアルト殿の婚約者でも、他の公爵家の令嬢でも良かっただろうに。魔力がそんなに欲しかったのか? それなら、なぜターチル国王は毒に倒れたんだ?」


 アランの言う通り、コーション国はガーライド王国の国教会に入り込んで、アンジェリアの魔力について知ったとアンジェリア自身も予想していた。

 暗殺の情報がもたらされた時に、やっぱり何故アンジェリアを側に置かなかったのか疑問が残る。


 セーシル公爵はアランの問いに1つ間を置いて何やら考えていた。そして、アンジェリアの様子を確認した後、説明を再開した。


「コーション国は、ベイガザード王国にアンジェの魔力について情報を流したのかもしれません。側妃カルラはベイガザード王国の縁者でおりますーーベイガザード王国は恐らくアンジェの魔力に興味を持ったのでしょう。ガーライド王国にアンジェがいては、アンジェに手出しができない。コーション国へ送ったのは、時期を見てコーション国とアンジェもろとも奪うつもりかもしれません。アンジェが手に入ればベイガザード王国の王族の延命なんてことも簡単ですからな」


 ーーーそんな! ベイガザード王国が魔力について知っているなんて!!


 アンジェリアが驚いて目を見開いていると、アランは悪巧みを思い付いたかのように悪い顔をして笑った。


「面白いことをベイガザード王国は考えたものだな? 我がサスティアル王国の縁者をいとも簡単に手にいれようとするとは。その代償は想像を越えるものだというのに」


 何やらアランの背後からドス黒い怒りのオーラを見たような気がして、アンジェリアは視線をセーシル公爵に視線を戻した。


「アラン殿下、アンジェが驚いておりますよ、まったくーーまぁ、コーション国はアンジェをベイガザード王国の盾にしようと考えていたようですが、ベイガザード王国がコーション国を本気で狙えば、1日と持ちますまい。戦争の好きな国ですから、ガーライド王国とも、いつかは戦火交えると想定しておりましょう。後は、コーション国を狙う時期ですな」


 セーシル公爵はアランを窘めたその口で、更に恐ろしい言葉を発した。


「そちらこそ、従妹殿を怯えさせておる…。コーション国を滅ぼす時期とは、ガーライド王国がサスティアル王国と国交を断絶した時だろうな。我が国がガーライド王国を見捨てれば、魔法石を使った兵器で、ガーライド王国に勝てると見込んでいるのだろう」


 アランはセーシル公爵の言葉に呆れながらも、セーシル公爵の話を代わりに引き継いだ。魔法石を使った兵器など大量殺人を生み出すに違いなく、アンジェリアは血の気が引いた。


「ーーそんな、事が起こりうるのですか?」


 アンジェリアが恐々、セーシル公爵に問いかけると、困ったように答えた。


「アンジェにはつらい話したが、ベイガザード王国とエステリア国が第二王子マティアス殿下を使ってコーディル公爵家に何か罠を仕掛ける恐れもあるんだーーそんなに悲しそうな顔をしないでおくれ? コーディル公爵家には、周辺の動きに慎重になるようすでに伝えている。それに、定期的にサスティアル王国のシャーナ公爵も様子を見てくれている。何も起こらないことの方が確率的には高い」


 セーシル公爵がアンジェリアにそう告げると、実の娘にするようにアンジェリアの頭をわしわしと撫でた。それを冷めた視線で見つめながら、アランは呆れた声でセーシル公爵の話の矛盾を指摘した。


「今回の件はどうなんだ? コーション国王が従妹殿に暗殺されたと、今さっき容疑をかけられたばかりではないか? 従妹殿がコーション国王を暗殺したとなれば、ガーライド王国の指示と疑われる。コーディル公爵家の娘を策略に使ったとして、ガーライド王国と我が国との関係も悪くなっていたかもしれぬよ」


 アランが冷めた口調でセーシル公爵に言い放つと、ぐうの音も出ないのか、セーシル公爵は黙り込んでしまった。


「何事も起きる事を想定して対策を練らなくては、ね? セーシル公爵殿? 従妹殿にはコーション国に出てきた気苦労がある。その上、更に余計な負担をかけてはならない」


 アランはそうセーシル公爵に念を押すと、セーシル公爵は黙って頷いた。アランは重たくなった部屋の空気を気にもせず、冷めきったお茶を代えるようセーシル公爵に指示した。


「うん、コーション国のお茶はまずまずだねーーそうそう! 噂に聞けば、コーション国の側妃カルラの母親はターチル国王の若き日の想い人なんだそうだよ? コーション国王がザイゼル草で側妃カルラ側に殺されることは、因果なものだね?」


 セーシル公爵にお茶を代えさせても礼を言わず、マイペースなアランは、今度はゴシップネタを語るかのように、アンジェリアに手招きすると小声で喋りだした。


「では、昔捨てられた腹いせに、娘に国王を殺させたと?」


 アンジェリアもつられて興味津々という態度で思わず声をあげると、アランは指を立てて静かにと言った。

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