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2番目の婚約解消⑰

 側妃カルラとその取り巻き達は、ルーファスの側近の指示の下、調べがあがるまで自室待機という名の軟禁に置かれることになった。側妃カルラは妊娠中であるため、ストレスにより体調を崩さないかアンジェリアは心配した。たとえ国王毒殺の黒幕だとしても、お腹の赤ちゃんには罪がないのだ。側妃カルラの体調には十分に注意するよう、アンジェリアはルーファスの側近にお願いした。


「ーールーファス殿下は、後、もうすぐ、来られ、ますのでーー」


 ようやく、アンジェリアの部屋に落ち着きが戻った頃、ルーファスの側近が汗だくで連絡を伝えに、息絶え絶えに戻って来た。1日でだいぶやつれたその姿は悲壮感が漂っている。


「ーー急がずとも、良いーーちょうど、アンジェリア殿と込み入った話があるのでな、そなたらは席を外せ-」


 ルーファスの側近の変わり果てた姿を見て苦笑しながら、けれども、静かに異を認めない王者の様な口調でアランが人払いを命じた。すると、アンジェリア以外の者達はサスティアル王国王子の機嫌を損ねてはと恐れをなして、急ぎ部屋を後にした。アランの威圧感にちょうど疲れていたこともあり、ホッとした表情のアンナとマリアナもすたすたと部屋を出ていく。


 ーーー出来ることなら、私も連れていって欲しい!!


 アンジェリアが必死の視線をアンナとマリアナ2人に送っても、にこやかに礼をして、無情にも扉は閉まってしまった。


「ーー従妹殿はいつもこんな我慢を?」


 部屋にはアンジェリアとセーシル公爵、アランだけになったところで、溜め息をつきながら、アランがアンジェリアに問いただした。


「先程、庭園でもセーシル公爵様にもお伝えしたところですーー温室での騒ぎがあり、すっかり失念してしまいましたーーコーション国につけていただいた侍女には、気をつけなければなりませんでしたーー」


 どうかお赦し下さいませーーと、アンジェリアが謝罪を述べると、アランは再び米神を抑えながら溜め息をついた。


「従妹殿を責めているのではないよ、温室の件もいきなりの事で驚いただろうからね。従妹殿に怪我もなく良かったと安堵しているーー、そして、セーシル公爵、今回は君の見立てに恐れ入ったよ。建国祭で何か起こると踏んで、コーション国へ足を運んで良かった」


 アランはそう言うと、もう一度深いため息をついた。アランはアンジェリアを責める事はせず、今すぐに毒入り茶に関してコーション国側の罪を問わなかった。アンジェリアは度重なるアランの溜め息に不安を覚え、意識せずにぎゅっとルカのブレスレットを握りしめた。

 アンジェリアのコーション国での立場は、表向き王太子の婚約者ではあるが実質、ガーライド国の人質である。それでも、ルーファスを始めとして、決して少なくない人数がアンジェリアの生活を良いものへと心を砕いてくれているのも知っていた。アンジェリアなりにコーション国での生活を楽しもうとしていたし、それを優しい人達が支えてくれているのも知っていた。

 そんなアンジェリアは、アランのコーション国への考えが良く分からない。もしかしたら、毒をサスティアル王国王子に盛ったとして、関係のない人間までもが処罰されるのではないかと不安だった。アンジェリアは言い知れぬ恐怖を抱きながら、アランの言葉を待った。


 ーーーどうか、アラン殿下のお怒りが静まります様に…


 アンジェリアは不安を感じながら手の色が変わるほど強くブレスレットを握りしめていた。そのため、宝珠のうっすらとブレスレットが光を帯びてきた。


「ーー! あっ!」


 ーーーしまった!


 アンジェリアが驚き声をあげると、アランは光始めたブレスレットを見て、表情を和らげてやれやれという風に首を振った。


「セーシル公爵の息子殿は少し心配性すぎるのではないか? アンジェリアの少しの動揺にも反応するなんて、宝珠を渡した自分の身が持たないだろうに」


「ルカは見かけによらず強い子なのでご安心を。ただ、こうもブレスレットが反応すると、1人でもコーション国に乗り込んできそうではありますなーー、アンジェ、少し落ち着こうか?」


 セーシル公爵はそう言うと、アンジェリアにお茶を用意してくれた。もちろん、毒入りのお茶は先程、ルーファスの側近が証拠品として持ち去ったため、茶器その他は新しいものに交換されていた。


「ーーありがとうございます…、あの、コーション国はどうなってしまうのでしょう…」


 アンジェリアが恐る恐るアランの顔色を伺うと、アランは心外だと言わんばかりに驚いた。


「私は、従妹殿に怒りを感じているのでは本当にないのだよ? ーー従妹殿の気にしていることはコーション国王のことかい? コーション国はターチル国王が崩御したのだから、ルーファス殿が新国王になるのだろうね?」


 折角の建国祭なのに大変な事だねーーとアランは言葉とは反対に、全く気にも止めていない様子で言った。


「ーー国王様の崩御は、確実なのですか?」


 アンジェリアがセーシル公爵に確認すると、セーシル公爵は深く頷き、間違いないと答えた。

 アンジェリアはコーション国王と顔を合わせる機会も余りなく、初めてコーション国へ来たときに挨拶してから、今日の崩御の知らせまで廊下で何度かすれ違ったくらいである。

 それでも顔を合わせれば、元気で過ごしているのかとアンジェリアを心配してくれる優しい祖父のようだった。


 ーーーまさか、亡くなってしまうなんて…


 アランの力は絶大だ。アランがコーション国王が崩御したと明言したのなら、魔力でターチル国王の死の確信を得たのであろう。セーシル公爵もコーション国王の毒殺について、状況を先程調べてきたので確信を持って頷いている。


「側妃様が、手を下したのでしょうか…」


 アンジェリアがぽつり言葉を落とすと、アランは実行班は恐らく側妃達だろうと答えた。


「そんなに心配しなくても良いのだよ? ここは大人に任せておいておくれ? ーーさっきも伝えたように、ターチル国王は崩御された。次の王はルーファス殿下となる。今しばらくは、アンジェの回りは騒がしくなるかもしれないーーそれだけは我慢しなくてはいけないけれどね」


 セーシル公爵はそう言うと、顔色の優れないアンジェリアを心配して話を止めようかと提案してきた。


「私は、本当に、大丈夫です。何が起きているのか、今後どうなるのか教えてください!」


 アンジェリアが強い意思を持って、アランに顔を向けて宣言すると、アランはにこやかに話を始めた。


「あまり、従妹殿には面白くない話だけれど? まぁ、無関心でもいられないかーールーファス殿が新国王になるという所で話は終わったのかな? そうだね、あくまで予測の話になるけれど、口外しないでおくれよ?」


 アランの言葉にアンジェリアが深く、頷くとアランは良い子だねとアンジェリアを誉めた。

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