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2番目の婚約解消⑮サスティアル王国からの大使

「ーーコーディル公爵令嬢は、全く毒殺に関与してはいない。コーディル公爵令嬢は、午後の間、サスティアル王国大使殿とガーランド王国大使殿と常にあった。我が近衛騎士達の監視下の元にだ!!」


 ルーファスが高らかにそう言い放つと、辺りがさらに静まり返った。皆、いきなりルーファスから出てきたサスティアル王国大使という言葉に戸惑いを隠せない。


 ーーーサスティアル王国大使って…まさか?!


 全く覚えがない話に一体誰の事だろうと、アンジェリアがセーシル公爵を見上げると、視線を後ろに逸らしていた。不思議に思って、セーシル公爵の視線の先を追うと、今回のコーション国訪問で初めて連れてきた騎士を見ている。アンジェリアが騎士に視線を流すと、騎士ーーアランはアンジェリアに、にこりと微笑んだ。


「貴方が、サスティアル王国大使なの…?」


 アンジェリアが驚いて聞いた声は、静まり返った辺りに響いた。サスティアル王国大使ーー魔力を有するサスティアル王国の人間が大陸に出て来ることは滅多にないため、皆、驚きを隠せない。

 そんな中、当の本人は周りの驚きを気にもせずに、すたすたとアンジェリアに進み出てきた。そして、アンジェリアの手を取り軽く口付け、にっこり微笑み挨拶を始めた。


「ご挨拶が遅れましたね、(わたくし)、サスティアル国王陛下の命により、大使として参りました、アラン=シャルレインと申しますーー覚えてはいらっしゃらないかも知れませんが、アンジェリア殿にお会いするのは2度目になるのですよ?」


 ふふっ…と柔らかく笑う表情に、なんとなく流され挨拶を返そうになるが、アンジェリアは騎士の名前が引っ掛かる。


 ーーー?!!!アラン=シャルレインですって!!!


 それは、昔、アンジェリアの伯母のシャーナ公爵がコーディル公爵家にこっそり連れてきた従兄と同じ名前だった。大使として紹介されたアラン=シャルレインという青年は、微かな魔力で外見をかなり誤魔化しているが、幻影で包むその真の姿は、アンジェリアの母と同じ金髪、茶の瞳をしている。


 ーーー!!サスティアル王国、王位継承権第1位ーーアラン=シャルレイン=サスティアル!!!


「ーーーっ!! な、な、何故ここに?!! アラン=シャル…でん…むごっ!!」


 アンジェリアがひどく驚いて、サスティアル王国の第一王子ということを口外しようとすると、アランに思いっきり口を押さえつけられた。アンジェリアに対するあまりの非礼に、マリアナは目を丸くし、セーシル公爵は苦笑している。


「セーシル公爵殿の言う通り、私はサスティアル王国の大使としてコーション国に参りましたーーサスティアル王国からの大使となれば、騒ぎになるだろうと、セーシル公爵殿とルーファス殿には黙っていて貰っておりましたーーコーディル公爵令嬢については、このアラン=シャルレインが国の名において、全くの無罪と証言しましょう」


 アランが高らかに宣言すると、先程のルーファスの言葉もあり、もうアンジェリアに疑いの目を向ける者はいなかった。反対にサスティアル王国からの大使に、恐怖の念を抱き、皆微動だにしなく立ちすくんでいる。


 サスティアル王国大使となれば魔力の高さもお墨付きだ。不興を買っては、身の危険につながるため、ルーファスの近衛騎士さえ、ルーファスとセーシル公爵の指示を目で訴えていた。


「ふむ、とりあえずはアンジェを安全な私室へ送り届けようーールーファス殿には、陛下の安否の真偽とその経緯、側妃殿の処罰をお願いしましょうかな? アランでんーーか、《ごっほん!!》アラン殿は私と一緒にアンジェの側に」


 セーシル公爵が場をまとめるように、ルーファスにそう告げる。うっかり、アラン殿下と言いそうになった下りで、思いっきりアランが咳払いをして事なきを得ていた。

 セーシル公爵からの『陛下の安否の真偽』という言葉を受けて、騎士達が我に返り、ざわめき出す。


 ーーーん!!いつまで、口を押さえてるの?!


『ーー!! ん! ん!!』


「あぁ、ごめんごめん…貴方は時々、声が大きくなるって聞いたから」


 アンジェリアが口を押さえてるアランの腕をバンバンと叩くとようやく手を離してくれた。笑いながらも、そっと腕を差し出し、アンジェリアを部屋までエスコートしてくれるらしい。


 ーーー息が止まるかと、思った……


 アンジェリアは息絶え絶えに、バカ力で口を押さえてきた従兄をじろりと見やった。

 幻影魔法で、姿をかなり暗い金髪、碧眼としている長身の従兄は、顔のパーツは幻影魔法でいじっていないらしい。周りを圧倒するような涼しげで知的さがある中性的美貌を放っていた。いつもなら、アンナやマリアナがアンジェリアに対する非礼に抗議の声をあげるが、2人ともアランの美貌に顔を真っ赤にしている。


「あっ、そうそう!! コーディル公爵令嬢の温室に側妃殿の侍女頭が侵入して、猫の死骸と毒草を置いていった。それについては、サスティアル王国の私の部下も調査に加わろうと思うーーナサル、後はよろしく頼むよ」


 アランが思い出したかのように、ルーファスの近衛騎士達に有無を言わさない態度で言い渡すと、何処からともなく銀髪の騎士が現れた。アランだけではない、サスティアル王国の人間の更なる登場にまたもや辺りに緊張が走る。ナサルと呼ばれた騎士はアランの指示に静かに頷き、ルーファスの側へ駆け寄ると高らかに宣言した。


「サスティアル王国大使アラン=シャルレイン様のご意向を受け、側妃と毒草について調べる。異議ある者はサスティアル国王に反意がある者と見なす事、心得られよ!」


「「ーー!!!」」


 ナサルの宣言により、突然の側妃と毒草の繋がりを明言されて、近衛騎士達や王宮騎士達は驚きを隠せない。サスティアル王国からの人間が2人もいることも忘れて、騎士達はルーファスに詰め寄りどう言うことか事の真偽を聞き始めた。


「では、参ろうかーー?! っ!」


 アランは騒ぎ始めたコーション国の騎士達を面白くなさそうに眺めた。そして、自身の腕になかなか掴まらないアンジェリアの手をとり、エスコートして歩き出そうとした。しかし、その瞬間、バチンっ!!と大きな音がなり、アンジェリアの手首から静電気の様な力が流れた。慌てたアランはアンジェリアから手を離す。


「アラン殿、アンジェにはルカの宝珠がついておりますゆえ、無理矢理にアンジェリアに触ると宝珠が反応を示しますぞ。気を付けられよ」


 セーシル公爵が笑いながらアランにそう注意をすると、アランは肩を竦めてやれやれといった風に呆れていた。


「ルカ殿の独占欲は大したものだねーーさぁ、レディ、お手をどうぞ」


「ーーあなた、ルカを知ってるの?」


 サスティアル王国の王子のアランとガーライド王国公爵家のルカの接点など全く思い付かないため、アンジェリアは敬語も忘れ、思わずアランに聞いてしまった。


「もちろんさ、ここコーション国に来る前に、フォーガス国王の様子を少し見てきたからね? セーシル公爵の息子殿はフォーガス国王の孫だったかな? かの国王へ会いにフォーガス国に来ていたよ」


「フォーガス国でルカに会ったの?!どうして、フォーガス国にルカが?」


「アンジェリア様、ここでは人目もございますれば…!」


 アランの口調からルカと面識があるとはアンジェリアも思っていたが、つい最近フォーガス国で会ったとは思わなかった。アンジェリアは思わずアランの腕を引き、詳しく話を聞こうとしたが、側で控えていたアンナに止められてしまう。


「ふ、ふ…。我が従妹殿は可愛い反応をするね? セーシル公爵の息子殿の話は…、この件が、落ち着いたら伝えよう…とりあえず、一旦部屋に案内して、レディ」


 アランは取り澄ました顔で、もう一度アンジェリアにエスコートのため腕を差し出した。アンジェリアも、他の騎士達やルーファスまでいる所でルカの話をせがんでしまったため罰が悪い。なるべく回りと目を合わせないよう、アンジェリアはアランの手を取り、そそくさとその場を後にした。


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