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2番目の婚約解消⑭国王の死

「セーシル公爵様、ライアルト殿下が回復するには

 今後どうすれば良いのですか?」


 アンジェリアは今までベイガザード王国がライアルト殿下の毒殺計画に関わっていると思っていた。それがまさかのエステリア国がザイゼル草を保有していたと聞き、自分がどのような情報を集めれば良いのか分からなくなった。

 アンジェリアが肩を落とすと、不意に横に気配を感じた。


 ーーー?!誰?


「ーーーそうだね。ザイゼル草と呪詛を組み合わせているから、簡単には解毒はいかないと思うよーーセーシル公爵殿、遅くなった」


 それまで全く気配がなく、アンジェリアは思わずビクッとしたが、アンジェリアの座るベンチの横にはルーファスが騎士アランと伴って立っていた。


「ふむ。アンジェリアが驚いている。まだ子供だ、貴殿も気を使えたまえーーーアンジェリアは知らないだろうが、ルーファス殿は諜報活動が得意でな」


 ーーー!!そんなの知らない!!


 アンジェリアがガバッとルーファスに向き直ると、少し肩を落としてションボリしていた。


「すまないね、アンジェ。以前、ちょっと調べものをしていてガーランド王国でセーシル公爵に捕まった事があるんだよーーーコーションの王太子になってからは、もちろん辞めたけれどね」


「つ、捕まったのですね…!!」


 他国の王子が諜報活動をして捕まるなんて聞いたことがないと、アンジェリアはかなり驚いた。きっと、宰相であるアンジェリアの父、コーディル公爵も知っているはず。その上で、ルーファスにアンジェリアを預けたのだ。


 ーーールーファス殿下はガーランド王国で何を調べていたの?お父様に確認しなくては!


 アンジェリアがコーション国に来た当初の目的は毒草の特定、そして魔法石の確保だ。さっき程、コーション国内で、ライアルト殿下に使われた毒草の発見と、毒草の断定が出来た。

 後は、アンジェリアがコーション国に留まることで、魔法石は継続的にガーランド王国に運ばれるだろう。

 残すは、ライアルト殿下にかけられた呪詛の特定だ。きっと、ルーファス殿下に直接聞いても、答えてはくれないであろうが。


 ーーー呪詛についても、セーシル公爵は何か掴んでいるのかしら?


 アンジェリアがそーっとセーシル公爵の方を伺うと、セーシル公爵とルーファス、そして騎士のアランが噴水の彫刻の影に座り込み、毒草と猫の死体の検分を始めるところだった。


「ルーファス殿、これを見てくれんかね? アンジェリアの侍女の話では、カルラ殿の飼い猫のようだ。そして、これは、ザイゼル草だね?」


「全て閣下の推測の通りです。建国祭で何か動きがあると予想はしていましたが、ザイゼル草を使ってくるとは…ベイガザード王国は、コーディル公爵家とエステリア国が手を組んでいると見せたいのでしょうか?」


「うむ。アンジェリアの私物の温室で、ザイゼル草を置いていくということは、コーディル公爵家とエステリア国ばかりではなく、サスティアル王国にも罪を被せようとする行為だ。いやはや、ベイガザードの国王は恐れを知らぬと聞いていたがここまでとは…」


 セーシル公爵はルーファスの問いに肯定を示した。2人の話から推測すると、側妃の愛猫を毒草で殺すように指示したのはベイガザード王国が絡んでいるようだ。


 ーーー側妃様の母上様はベイガザード王国の縁者だったはず


 アンジェリアが2人の話に静かに聞く耳を立てていると、ルーファスが怖い話をしだした。


「エステリア国を揺すってベイガザード王国がザイゼル草を手にいれたとして、ただ猫1匹を殺すだけで済ますとは、思えませんねーーこれは、何が起こる前触れのような気がします」


「ルーファス殿の言う通り、ベイガザード王国がエステリア国からザイゼル草を手に入れたからには、更に毒を仕込んで来るはず」


 セーシル公爵もルーファスの意見に同意し、側妃の猫の死体そばのザイゼル草を入念に調べあげていく。すると、大人数の足音が聞こえ、温室の外が急に騒がしくなった。


 ーーーものすごい人数が大声をあげているわ…


 あまりに大勢の声がするため、何の言葉なのか聞き取り辛く、アンジェリアが耳を済ませると、『陛下が! 魔女を捕まえろ!』と言っているのが分かった。


 ーーー陛下? 魔女って一体??


 一瞬、急に騒音が大きくなったと思ったら、温室の扉を開け1人の騎士が温室に滑り込んできた。突然の騒ぎに、騎士のアランがさっとアンジェリアとセーシル公爵を守る体勢をとった。


「ルーファス殿下!! 火急の知らせでございます!!」


『魔女を出せ!!』


 アンジェリアが驚いて、温室の入り口を見ると、大勢の騎士が押し問答をしている。中には、抜刀している騎士もおり、アンジェリアは恐怖を覚えて、セーシル公爵に駆け寄った。


「何事だ?! 騎士は何を騒いでおる?!」


 ルーファスが伝令の騎士に厳しく問うと、騎士はチラッとアンジェリアを見て苦々しい表情しながらも答えた。


「ーー国王陛下が、御逝去されました!! ーー毒殺と見て捜査しておりますーー今、先ほど、コーディル公爵令嬢を捕縛せよとの通達がーー」


「ーー?! なに!!」


 ーーー?!私を捕縛?!それに、毒殺って?!


 アンジェリアがあまりの驚きに呆気にとられていると、セーシル公爵が報告の内容に驚きながらも、アンジェリアを自身の後ろへ下げ庇った。今度は温室内まではっきりと、コーディル公爵令嬢を差し出せ!!との声が響いてきた。

 伝令の騎士は、セーシル公爵に庇われているアンジェリアに睨みながらじりじりと進み出てきたが、ルーファスがそれを手で制した。


「アンジェは、私の騎士達の監視下に常にある。陛下を毒殺なんてあり得ない。誰が捕縛を命じた?」


 ルーファスは陛下毒殺の情報にやや驚いた表情をしたが、努めて冷静に騎士に問い正した。アンジェリアを今にも捕まえようとしていた騎士は、冷静で静かすぎるルーファスの態度にビクッと恐れをなし、一度敬礼を取った後、報告を始めた。


「はっ! 王太子妃ーーいえ!! 側妃、カルラ様です! コーディル公爵令嬢が毒草を手配したと、側妃様の配下の者が証言しております!!」


 ーーー毒草を手配なんて!!まさか?!


 アンジェリアが驚いて、ガバッとルーファスを向くと、ルーファスは酷く疲れた表情をしていた。


「なるほど、側妃はアンジェを犯人として吊るしあげるために、温室へ侍女頭を寄越したのかーー」


 セーシル公爵が冷たい声でルーファスにそう尋ねると、ルーファスは頭を押さえながら、そのようだと答えた。

 伝令の騎士はセーシル公爵の話の内容が理解できなかったのか、なおも、アンジェリアを睨み付けて捕縛しようとする。


「ルーファス殿下には、直ちにコーディル公爵令嬢の身柄のお引渡しをお願いしたくーーー」


「ーー誰にものを申しておる?」


 伝令の騎士がアンジェリアへ一歩進み出ると、ルーファスは騎士に剣を抜いた。

 アンジェリアが一体どうなるのかと、はらはらと様子を見ていると、セーシル公爵の配下、アランと呼ばれた騎士もアンジェリアを守るように刀を構えた。


「陛下が御逝去されたのなら、王太子である私の指示に従うのみ、私に命令する等もっての他ーー」


「ーー?! た、大変、申し訳ありません!!!」


 ルーファスが静かに怒りに満ちた低い声で答えると、伝令の騎士ははっとして、その場に跪き謝罪した。そして、ルーファスは温室の入り口に歩いて行くと、自身の近衛騎士達を制した。それに伴い、アンジェリアを捕まえようと集まった王宮騎士も一気に静まり温室は落ち着きを取り戻した。

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