表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/20

第十六話 ポヨッペの初仕事なのです。

 アスファルトできれいに舗装されている畑道を、一台のオープンカーが走っていた。


 モーコがサングラスをかけてハンドルを握り、助手席には恭也が乗っている。後部座席には、はしゃいだ様子のポヨッペがいた。


「ポヨッペちゃん、危ないから座ってて下さい」

「はーい!」


 元気に返事するものの、聞く耳持たず。ドン、ドン、と跳ねる音が聞こえてか、モーコは大きくため息をついた。


「いやー、気持ちいいもんだな。モーコちゃんの言う通り、オープンカーにして正解だったわ」


 抜けるような青空と、心地いい風。実りを迎えて黄金色に染まる小麦畑の景色。恭也は初めて乗るオープンカーを満喫していた。


「気に入っていただけて、嬉しいです。けれど、本当はオープンカーじゃないと、わたしにはちょっと窮屈でして。それが理由だったりします」

「おー。モーコちゃんが大きくてよかったわー」


 モーコが嬉しそうに笑った。


「ん? どした?」

「いえ……身体が大きいのが嫌で、ついこうやって自分を卑下してしまうのですけど、恭也さんは全部ポジティブにしてしまうので。不思議な方だなぁって思います」

「おお……自覚なかったわ」

「ごっしゅじーん!」後部座席からポヨッペが大声で言った。「おやつ食べていい!?」

「おやつってのはなー。お昼過ぎてから食べるもんだぞー」

「えー?」

「着いたらハルナさんのお弁当食わせてやるから、我慢しろー」

「はーい!」


 また、ドン、ドンが始まる。


「どうしてポヨッペちゃんも一緒だったんでしょうね」


 不意にモーコが聞いて、恭也は不思議そうにモーコを見た。


「どうしてって?」

「『アリオンの祭典』のために、ポヨッペちゃんのステータスを少しでも上げたいんじゃないかなぁって」

「そうだろうけど、今日はルッツってのが来るからな」

「あ――」

「それに、『アリオンの祭典』でポヨッペが急に出てきても、誰だよってなるだろうし。できるだけ、ポヨッペに顔出しをさせたいってのもあるんじゃねえか?」

「いろいろ、考えてのことなんですね……あ、そろそろ着きますよ」


 それから三分ほど車を走らせ、到着した場所は雑草が生い茂った広い土地だった。トラックが数台停められており、また、年配の男女数人が集まっている。


「おー! 遠くからすまねえな! 『アリオンの祭典』も近えってのに!」


 訛った声で、年配の男が駆け寄ってきた。それに続いて、他の人々も歩いてくる。


「お待たせしました。ここ一帯、全部ですか?」


 草刈りを終えている広大な土地を見渡しながらモーコが聞いて、年配の男は大きく頷いた。


「んだ。サントラの実さ、うってつけの土地でな」

「サントラの実!?」


 ポヨッペが目をキラキラとさせて叫んだ。


「こいつ、サントラの実が大好物なんすよ」


 恭也が言うと、年配の男はポヨッペの頭を撫でた。


「そっかそっか。んだら、来年の秋にいっぱい送ってやっがらな」

「ほんとー!?」ポヨッペは満面の笑みで恭也を見た。「このおっちゃんたちと友達になるー!」

「おう。いいんじゃねえか?」


 モーコはクスクスと笑って、「よーし!」と腕まくりをした。すでに装いは、畑仕事を想定して動きやすい服装である。


「それじゃあ、はじめましょうか。わたしは土地の九割ほどやりますので、あとはお願いしますね」

「九割!?」年配の女性が驚いて言った。「いんや、機械さ二台あっから、そげな無理しねえで――」

「わたしは、耕うん機の十倍はすごいですよ」モーコは年配の女性から鍬を受け取ると、腕を鳴らしてポヨッペを見た。「それに、これから二十倍になりますから」


 ポヨッペは「にへへー」と笑うと、両手を口元に持ってきた。そして――。


「ピッ、ピッ、ピー!」


 人々は驚き、目を瞬かせた。力が沸き上がって来たのだろう、信じられないといった様子だ。


「な、なんだべやこりゃ!」

「ポヨッペのスキルなんす。馬力二倍ですよ。このスキル、今んとこオフレコなんで、おっちゃんたちだけの秘密でお願いしますね」


 恭也が人差し指を口に当てるのが早いか、モーコは蹴り出し、「そりゃあああああ!」と勢いよく土地を耕し始めた。前後しているであろう鍬先端がまるで見えず、移動する足の動きですら追うのが難しい。


「は、はええなぁ……昼飯までに終わっちまいそうだべや」


 年配の男性が呆れて言って、恭也もまた、腕まくりをする。


「モーコちゃん、気合いはいってんなあ。じゃ、せっかくなんで、俺にも手伝わせてください。ポヨッペはどうする? メシにするか?」


 恭也が聞くと、ポヨッペはブンブンと首を横に振った。


「あたしもやるー!」

「おう! じゃあ頑張るか!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ