第7話 フラグ建築完了! ってバベルの塔並みの高さじゃない?
「あー……。全力でフラグを叩き折るつもりが、なぜか基礎工事だった時の絶望感、誰か分かる?」
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ど、どうしよう。
出ていくタイミングを完全に逃しちゃった。
目をこすっていたデイジーはついにふらふらしだして……や、ヤバい、お眠で倒れちゃう!
「大丈夫か!」
「しっかり……!」
座りながらもパタリと倒れるその瞬間、黄色髪の少年と、白髪の少年の二人がデイジーを支えた。
「こ、こんなに小さな子が僕たちを……!」
「この細腕のどこにあのような力が……!」
うむ、デイジーを丁重に扱う。
プラス5点、ガキんちょーズ。
「あんな凄まじい一撃を放ったというのに……どうしてこんなに、儚くて柔らかいんだ……」
「ああ。まるで、触れたら消えてしまいそうな……森の妖精みたいだ」
「ハインリヒ」
「ああ、ローベリア」
「今度は僕たちが彼女を守らなければならないようだ」
「そうだな、命の恩人だ。何としても守り抜こう」
うむ、セリフはいいが、お求めではありません。
ってか、デイジーが寝てるからと勝手に触るな。
マイナス100点、ガキんちょーズ!!
「でも、こんな武器を持ったこともないような手で、僕たちを助けてくれたのか……」
「それでいてこんなに可憐とは……」
や、ヤバい!
このままエスカレートしたら、デイジーがあんなことやこんなことに!
って10歳未満のちびっ子にされることはないとは思うけど、どどど、どうしよう?!
ええーい、あれ、すっごく疲れるからあんまりやりたくないけど、四の五の言ってられないわ!
行き当たりばったりで考えるのが苦手な私だけど、なんとかなるなる!
と言うわけで、マジックハンドの魔法!
有効範囲以上だと疲れがフィードバックするけど、気合いよ気合!
デイジーを強引に立ち上がらせ、ふらふらとこっちの方に歩かせるように見せかける。
今にも倒れそうな若干おぼつかない足取り、っていうかまるで夢遊病者のようだけど気にしない。
うおおぉぉー、ヤァーッ! パゥワぁー!!
「な!? き、君! どうしたんだ!?」
「どこへ……!?」
どこだっていいでしょーが!
仕方ない、ここは煙幕もくっ、このままだとこいつらついてくるわね!?
そうだ!
濃霧の魔法!
もういっちょ濃霧の魔法!
毒とか一部の状態異常を防ぐ魔法だけど、重ね掛けすればもれなく視界不良。誰だろうと五里霧中よ。
なんか使い方が違う気がするけど、きっと気のせいよね。
「なんだ、この霧は!?」
「ローベリア、気をつけろ!」
「分かっている! お、おい、君!」
だああ!
着いてくるなっての!
仕方ない!
こんだけ霧が濃ければいい感じに演出できるでしょ!
「その子に、触れるな……!」
めちゃくちゃ力んでるからいつもより低い声な気がする!
やだ、私の声カッコイイ!
「だ、誰だ!」
「君、行くな!」
だからしつこいっての!
おら、霧の大狼の魔法よ!
「き、霧の狼!?」
「いったい何なんだ……!」
よし、足が止まったわ!
後少し!
「それ以上寄れば、命の保証は、ない」
「お、お前は……! その子をどうするつもりだ!」
「その子は普人だ、解放しろ……!」
く……中々粘るわね……!
仕方ない、ちびったらゴメンね!
威圧をかける魔法!
「黙れ小僧! 貴様らにこの娘が救えるか!」
「「ひっ……!」」
たぶんちびってない!
ヨシ!
ちなみに脅しの言葉には何の意味もございませんわ。おほほ。
デイジーは茂みに入り、ようやく私の眼の前に現れた。
これでミッションコンプリート!
無事に回収完了したし、霧が晴れる前にさっさと帰るわよ!
追手が……いや、別に悪いことして追われてる訳じゃないけど、念のため着いてこないか魔法で確認しとくか。
|遠くの声をこっそり聞く魔法
「若様! ご無事ですか!?」
「あ、ああ……」
お、ちびっ子の護衛たちかな?
ようやく来たようね。
「良かった……! 先ほど、凄まじい気配がしたので、まさかと思い急ぎ来てみましたが……無事なようで何よりです。ハインリヒ殿、貴殿も無事なようだな。若様をお守りいただけたようで……感謝申し上げる!」
「いえ、私は……相手に害意がなかっただけです」
「ふむ……まあ良い。続きは屋敷に帰ってから詳しく聞かせてくだされ。さ、若様もお戻りください」
ふむふむ、撤収の感じみたいね。
まあそりゃそうか。
逆によくここまで来たと思うレベルだもの。
「……ん? なんだこれは。穴が3つ空いた布? なぜここに? まさかさっきの彼女の……?」
え?
「若様、何を呆けておられるのです! さあ、奥方様も生きた心地がせずに帰りを待っておられます。すぐにお戻りを!」
「わ、分かっている! 今行く! ……命の恩人に、いつか返しに行かねば……」
最後の方はさすがに遠くて魔法でもよく聞こえなかったけど、穴が3つ空いた布……?
はは、まさかね……。
◆ ◆ ◆
3つ穴の空いた布が非常に気になるけど、その後は何事もなく帰宅。
ふぅ、もうこれ以上はコリゴリよ。
デイジーを寝かせようとベッドに下ろすと、彼女は目を覚ました。
「ふぁ〜、おはよう、お姉ちゃん」
「おはようってより、こんばんは、だけどね。どう? 体調平気?」
「うん、寝たらスッキリしたわ」
「ああ良かった。「くぅ〜」……とりあえず、デイジーの可愛いお腹がペコペコみたいだし、夕ごはんにしましょう」
「う、うん」
パゥワーマシマシのマジックハンドの魔法によりめっちゃ疲れたけど、まあヘロヘロになるほどじゃない。
いや、嘘。
だいぶヘロヘロだけど、夕ごはんくらい食べさせなきゃね。
まあごはん食べれば何とかなるっしょ。
「ごめんね、お姉ちゃん。しっぱいしちゃった……」
しょんぼりデイジー。
正直ちょっとかわいい。
「いいのよ。名前もバレずに逃げ切れたんだし。妹の失敗をカバーするのが姉としての役割よ! そもそも、今回の作戦は私がお願いしたんだもの。頑張ったデイジーに感謝はしても、責めるなんて見当違いだわ!」
「うぅ……、ありがとう、お姉ちゃん! 大好き!」
「ありがとう、私も大好きよ!」
とりあえずこれでフラグは折れたっしょ。
うん、きっとそうに違いない!
なんてったって、火吹き熊に襲われたり、霧の大狼に脅されたりと、デイジーよりもインパクト強いイベント盛りだくさんな訳だし!
大丈夫だ、問題ない!
「あ、ところでデイジー、ここにあった、その、私の下着、知らない?」
残り少ない布地を使ってこっそり作っておいたやつ。
あれ、まだ試作中なのよ。
「あ! やっぱりお姉ちゃんのおパンツだったのね! えっと、ポケットに……あれ? ない?」
ガッデム!
どっか行った!
っていうか、呼び方ストレート!
「ま、まあ失くしちゃったものは仕方ないか。それにこれで一件落着ね。あとはこのまま静かに暮らせば、あいつらもデイジーのことなんて忘れてるでしょ」
とりあえず終わり良ければ全て良し!
──それが、今日の事件が、全ての始まりだったなんて。当時の私は知る由もなかった。
明日18時に更新予定です。




