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乙女ゲーの妖精に転生したのでヒロインをモブに育てたい  作者: 星川 咲季
第1章 目指せ村人D! 幼女拾ってスローライフ
6/30

第6話 完璧なモブ偽装作戦、からの……痛恨のAP切れ!?




「あー……。UIがないって本当に不便。でも前世の私のゲーマーとしての直感が告げているわ。今日のAPは、まだいけるッ!」



──────



 よし、それじゃあ作戦実行!

 デイジーにAPもとい加護をドカンと注ぎ込む。

 そぉい!


「お姉ちゃん、行ってくるね」


 辺りに溶け込むような自然体で茂みから出ていくデイジー。


 うわっ、やっぱAPドカ盛り状態すごいわねー。

 たったこれだけの動作が、既に洗練されている。

 自然体すぎるのが逆に幼女らしくなくて不自然というか……ええい、良くわからなくなるわね!


 さて、「うおおおお! 邪魔だどけー!」ってかっこ悪く叫ぶように指示したけど、


「ぅおー? じゃまよ、どいてー!」


 なんで華麗に飛び出せてるのに、全然かっこ悪くないセリフになってるの!?


 そこは、APドカ盛りによるバフ効果でセリフも迫真の演技になるところでしょ!

 むしろ幼女特有の高い声と舌足らずな発音のせいで、ただただ可愛らしい突撃になってんだけど!

 洗練された可愛い突撃って意味不明!


「うーん……なんか全然かっこ悪くないし、ダサくもないけど、まあ勢いはあるからヨシ!」


 誰も見てないけど、思わず1人で現場にいそうな猫のポーズを披露しちゃうのは仕方ない仕方ない。勢い大事!


「やー!」


 デイジーは走りながら……走りながら?

 とにかく、可愛い突撃をしつつもテキトーに木の枝を振るう。

 そんな彼女の一振りは加護(AP)マシマシの一撃。子グマ公の爪を簡単に弾く。

 ギィンッ!

 と木の枝らしくない謎の音。

 うーん、普通に枝まで強化されてるってどういう原理かしら?


 魔法のプロであり妹育成天才美少女姉妖精でもある私でもよく分からないけど、できるならヨシ!

 そもそも私、武器なんて遊びでもなければあんまり使わないから分からんし!


 子グマ公は驚きはしたものの、遊んでもらってると勘違いしてるのかグアグアと喜んでる。

 デイジーも枝を振り回して楽しいのか喜んでる。

 ついでに私も後方腕組み姉妖精ができて喜んでる。


 デイジーはバッターのような構えをとり、大きく振りかぶると、子グマ公は「さあ来い!」と言わんばかりになぜか仁王立ち。


 音が出てるわけじゃないけど、ぎゅいんぎゅいんとチャージしてる感じがして神秘的だ。


「いくよー! えーい!」


 ボッ


 枝が出しちゃいけないような音が出たような気がしたけど、デイジーのフルスイングは子グマ公にクリーンヒット!


「グァーグア〜」


 飛ばされて星になるのに、まーたね〜と言わんばかりの楽しげで呑気な声を上げる子グマ公。あいつ、絶対遊んでもらってると思ってるわね。

 火吹き熊ってほんっとーに、妙に頑丈だし、まあ大丈夫っしょ。いつも私がイタズラして遊んでる火吹き熊も大概だし。


 いや〜、それにしても素晴らしい!

 予定通り、サクッと助けることに成功よ!


 ほら、ガキんちょーズは通りすがりの謎の村人Dの幼女パゥワーに呆然としてるもの!

 え?

 なんでAじゃなくてDなのかって?

 今更ね!

 デイジーだからDなのよ!

 この世界にアルファベットは無いけど、それに相当する文字だと思ってね!


 と言うわけで、ここまでの作戦は順調。

 デイジー!

 後はいい感じに走り去るのよ!


 私の声は届かないけど、茂みにいる私に向かって頷くデイジー。


「あら? もう少しでおやつだわ。早く帰らなきゃ!」


 めっちゃ棒読みっぽい気がするけど、逆にモブ感があってヨシ!


 デイジーは私の指示通り、名前を名乗らず風のように去る、を実行しようと走り出す。


「良いわ! 完璧よ! あとはそのままこっちに戻ってくれば……!」




 プツン




「あ」




 もしかして、もしかする?


 AP切れちゃったりする?


 デイジーから、私の加護が無くなったような感覚がするけど、ロスタイムあったりしない?


 何とかなりませんか?

 私の加護さんや。


 え?

 今日は品切れ?

 店じまい?


 あ、そう。


 走馬灯のように脳内で謎のコントが巡ったあと、デイジーの体からチート補正がスッと消え去る。


「きゃぁっ!?」


 走っていた勢いのまま、可愛らしい悲鳴を上げ、なんでもない木の根に躓き派手に転ぶ。

 ああ、ちょっと痛そう……。


「ふぇぇ……」

 

 膝を擦りむいた痛みか半分涙目になってる。

 大した怪我じゃないようだけど、戻ってきたら回復魔法をかけてあげるわ。だから早く帰って来なさい。

 ああ、姉として今すぐ出ていきたい!

 でも作戦が……!

 早く、早く戻ってくるのよデイジー!


「うぅ……お姉ちゃん、お膝痛い……それに疲れちゃったぁ……」


 さっきまでの凛々しく可愛い姿はどこかへ旅立ち、立ち上がらずについにはペタンとその場にへたり込んでしまった。


 ちょっとおおおぉぉぉぉっ!!

 おいィィィ!?

 目をこすり始めてるとか、まさかのお眠モード!?

 AP切れのペナルティィイーー!!


 っと言うわけで、そこにいるのは、さっきまでの圧倒的なつよつよ可憐な姿とはうって変わり、儚さと庇護欲が掻き立てられるただの美幼女だ。


 そんなデイジーの顔を見る少年二人。

 彼らは困惑しながらも、どこかキラキラした瞳で覗き込んだが最後。ボンッと聞こえるかのようにみるみる赤くなっていった。


 ギャップ萌え?

 ギャップ萌えなの!?


 いや、かくいう私も母性と言うか、姉性と言うか、そういうもんが刺激されまくってるけど!


「だ、大丈夫か!? 怪我は……膝を擦りむいてるじゃないか!」


「……(あわあわしながらも無言でハンカチを差し出す)」


 ガキんちょーズには刺激が強すぎたのか、端から見ても気を引きたくて夢中になってる男子!


 いやあああああ!!

 それ一番やっちゃダメな最高級のロマンス展開じゃんよおおぉぉ!!

 なんで肝心な時にAP切れるんじゃああああ!!









明日18時に更新予定です。

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『ネコミミ娘に転生したので楽しく気ままに生きたい』
※前作を読まなくても本作のストーリーには影響しません
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