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乙女ゲーの妖精に転生したのでヒロインをモブに育てたい  作者: 星川 咲季
第4章 乙女ゲーの妖精に転生したのでヒロインをモブに育てたい
29/30

第29話 響き渡る絆の旋律〜最高で無敵のステージ演出!(物理)


※『』はデイジーの歌です。


──────




「あー……デイジーに啖呵切った手前、どうやったら事態が収拾するのかサッパリだけど、まあいつものように「エイヤ!」で何とかなるわね!」



──────



 背景のセットが崩れ、それがドミノ倒しとなり、広々と見渡せるほどステージはボロボロになってしまった。


 結構ショッキングな出来事だけど、デイジーを始めとした学生たちは私のドーム型の防御魔法(バリアー)により怪我人はゼロ。


「歌のステージでこれってありなの?」


「こんなシナリオあったか?」


「でも誰も怪我をしていないし、寸劇のようにも見えるよな」


「ミュージカル風なのかもしれないわね」


 砂埃が舞う中、私の超素ん晴らしい演技で厚化粧おばさんことオルタンシアを糾弾した。

 どうやらこれにより、観客たちはこれも演出の一つなのかもしれないと判断に迷い、パニックには至らず固唾を飲んで見守るっぽい。良かった。パニックが一番怖いもの。


「さーて、どう料理してやろうかしらね……!」


 チラリとデイジーの方を見つつ独りごちる。

 先ほどまで彼女は青ざめていたけど、今は目の輝きが違う。心に炎をともしている。


「お姉ちゃん、私は大丈夫よ。トラブルが起きても演出にしちゃえばいい、でしょ?」


「……ええ、そうね。デイジーの言うとおりよ!」


 この決意した目、とっても素敵よ。誇らしいわ!

 何をするのか分からないけど、デイジーには策があるみたいね。

 この成長具合に、後方腕組み妹育成姉妖精としてご満悦である。


「何をしているの!? 早くなさいっ!」


 オルタンシアががなり立てているけど、デイジーは焦らずゆっくりと立ち上がり、そっと目を閉じて口ずさむ。




『冷たい土の上で 瞳を閉じたあの日』


『誰の温もりも 届かないと泣いていた』



 

 デイジーが目で語りかけるようにアデルハイトを見つめ、意図を即座に察したアデルハイトが、歌に寄り添うようにバイオリンを奏で始める。




『もう二度と 新しい朝は来ないと』


『諦めていた 迷子の小鳥だった』




 オーブたち他の演奏者もそれに続き、デイジーを支える力強い伴奏が会場に響き渡る。




『だけど小さな羽音が 闇を切り裂いて』


『差し伸べられた手に 光を知ったんだ』




 この歌、私は聞いたことない。

 でも、この歌詞は────


 デイジーの真っ直ぐな目を見た私は、その意図をカンペキに理解した。これは、このトラブルを、演出にしてしまおうってことね!


 それと同時に、ついに厚化粧が強硬策に出た!


「い、いったい何を……!? ええい、もういい! あなた達! やっておしまい!」


 大衆の面前でオルタンシアの私兵たちが抜剣する。


「そうはいかないわ! 霧を晴らす魔法(きりばらい)、からの霧の大狼の魔法(真夜中の姿)よ!」


 私の風魔法でステージ上の砂ホコリは吹き飛ばしつつ、残しておいた濃霧の魔法(しろいきり)を一塊にして神秘的な霧の大狼を作り出す。

 姿があらわになったデイジーに、霧の大狼が侍るという劇的な演出よ!




『不器用で だけど優しくて』


『いつでも前を向く その背中が』




 よし、霧の大狼は威嚇しか出来ないハリボテだけど、威圧感が半端ないのでハッタリにはピッタリなのよ!

 それに霧でもあるので、幻想的な雰囲気が出るし、そもそも大狼と美少女はロマンでしょ!


 とはいえ、多勢に無勢。

 私一人だけなら周りの被害を気にせず魔法をブッパすれば良いのだけれど、相変わらず守るべき人がいる防衛戦には弱い私。


 さすがに私一人じゃデイジーだけならまだしも、周りを含めてまでは守りきれない。


 いやー、どうしようかしら。

 何気にピンチ。


 だれか たすけて!




『臆病な私に 教えてくれた』


『信じるという名の 笑顔の魔法』




 そう思ってるのも束の間、ネコミミ娘が空中をぴょんぴょん跳ねながらやってきて直ぐ側に着地。


「何だか大変なことになってるみたいだけど……お困りかな?」


「え? あ……そうか、あんただったわよね。とにかく、良いところに来たわね! 手を貸して!」


「いいよー」


 一瞬誰だか分からなかったけど、仮面をつけたネコミミ魔法少女な格好のコイツはフラン。

 このときのコイツは、ふざけたレベルの意味不明な認識阻害を持つのよね。冒険者時代に貴族絡みで助けてもらった時に教えてもらったのよ。相変わらず目立つのが嫌いなやつよね。


 お仕事だから建国祭には遅れて来るって言ってたけど、タイミングはバッチリね!


 それにしても、フランって時々ワケワカラン機動力を発揮すると思ってたけど、まさか空まで駆け抜けたりできるとは。相変わらず非常識なことをするやつよね。まあ助かるけど。




『だから私は もう震えない』


『踏み出す足に 迷いはない』




「な、な、なぜ貴様がここに! ネコミミの魔法少女!」


「んふふん、さあねぇ、自分のやったことの結果じゃない?」


 帝国にいた時、フランは事件解決の度に魔法少女してたため、個人の特定はされてないけどネコミミ魔法少女は地味に有名である。


「我々も手を貸そう」


「姉弟子の背中を守るのも俺の務めだ」


「ガゥ(デイジーの守りは任せな)」


「ありがとう! 私たちがあいつら取り押さえるから、あんたらはみんなの護衛よろしく!」


 ローベリアにハインリヒ、そして屋台をしてたバナ助も参戦。

 正直フランだけでも過剰戦力な気もするけど、万が一を考えて護衛は必要。積極的に戦わせなきゃ大丈夫っしょ!

 なーに、コイツらはそこそこ強いし、死ななきゃ私とフランでなんとかするし!


「さあ行くわよ!」




『歌おう 歌おう ありのままの 私の声で』


『過去の影が 牙を剥いて 立ち塞がっても』




 うほー!

 歌と曲がサビらしきところに入った!

 テンションあがるー!


 振り付けも演出もすごい!

 なぜか霧の大狼もノリノリで演出の一部となっている!


「何をしているの! 相手はたかだか数人! さっさと何とかなさい!」


 厚化粧がいくら叫んでも、攻撃に専念した私とフランは止められない。

 演出の一環、ということにするため、流血沙汰にならないよう非殺傷技でも何の問題もないわ!


「妖精流剣殺法、アーススラッシュ! からの、|ずっと正座したあとの足のように痺れる魔法でんじは!」


 マジックハンドの魔法で壊れたセットの角材を拾い、テキトーな技名を叫んで相手に打ち込む。相手が警戒して防御や回避することを織り込んで、不意打ち気味に痺れる魔法で無力化よ。


 一方、フランは星がついた可愛いステッキ(物理)で武器破壊し、さらに涙が出て呼吸がまともにできなくなるほど鼻がツーンとするエグい効果の魔法も同時に叩き込む。当然相手は戦闘不能。

 ちなみにこの魔法は目覚ましの魔法って言うらしい。実体験として確かに目は覚めたけど、控えめに言って頭がおかしい魔法だと思うわ。




『魔法なんてなくても 響かせてみせる』


『いつかあなたに 届くように』




「ええい、何をしているの! コーザ兄弟、あの目障りな妖精たちを片付けなさい!」


 コーザ兄弟が目にも留まらぬ速さで斬りかかってくる。かなり手練れっぽい。

 だけど、私とフランを相手にするには些か力不足かしら。

 フランは言わずもがな、冒険者時代にフランにより鍛えられた私の妖精流剣殺法でも十分通用する。マジックハンドによる4刀流なら、神業の二つ名を持つ下半身蛇男とか、星間戦争で光の剣をくるくる回す将軍みたいな気分よ!


「あんたたちの攻撃、見え見えなのよ! ほら、リズムがズレてるわよ!」


 カァンッ!

 キィンッ!


 剣をパリィで弾く音がデイジーの歌の楽器の一つのようにリズムを刻み、すぐにコーザ兄弟も地に沈む。


 残るは厚化粧おばさんことオルタンシア!

 扇子を杖代りに魔術を放とうとしてるけど、発動まで待ってあげるほどお人好しじゃあないわ!


「観念しなさい! これでフィナーレよ!」


「こんな、こんなバカなぁーーー!!!!」


 歌のフィニッシュと同時に戦闘も完全制圧で幕を下ろす。

 私の魔法によりビクンビクンと麻痺してるオルタンシアの悪事は完全に白日の下に晒され、ローベリアたちによって退場させられていった。




『私が わたしでいられる この場所で』


『あなたと見つけた この世界を 愛してる』




 デイジーが歌った歌詞を思い出す。やっぱりこの歌は、私との出会いを、デイジーの人生を綴った歌よね。

 デイジーがこんなに愛を込めた歌を歌ってくれるだなんて……。

 こんなに姉冥利に尽きることなんてないわ……!


「やだ、私の妹尊すぎ……!」


 歌だけでなく私たちの活劇が合わさったおかげか、会場全体がこれまでにないドラマチックなステージに感動し、割れんばかりの大歓声、大喝采に包まれている。

 当然、私も歓声と喝采をおくりまくっていたわ。


 デイジーはただの歌姫という枠に収まらず、人々に希望を与える新しい時代の「歌の聖女」として会場全体に広まっていっていることに、限界オタク化により脳内トリップし、さらに涙で目が見えなくなっていた私は、まったく気づく由もなかったのであった。








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『ネコミミ娘に転生したので楽しく気ままに生きたい』
※前作を読まなくても本作のストーリーには影響しません
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