第28話 厚化粧の優雅な殺意とラブリーチャーミーな乱入者
「あー……やっちまった。完全にやっちまったわ。でも、デイジーに怪我はないし、これでステージも強制終了! 伝説のモブ村娘エンド確定よね! ……なんて現実逃避してる場合じゃないわ。この瓦礫の山、どう言い訳しよう」
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思わず頭を抱えていると、ステージの横から派手な格好をした厚化粧おばさんが出てきた。
「あらあら、これは大変ねえ」
一見すると優雅で優しそうに見えるが、なんか嘘くさい。
「皆さん、大丈夫かしら? 救護活動や避難誘導を手伝いに来ましたわ」
厚化粧おばさんの後ろからぞろぞろと集団が現れる。
「この場の代表者はいらして? あら、そこのあなた、少しいいかしら?」
「わ、私ですか!?」
「そう、あなたよ」
「あなた、は……」
デイジーは厚化粧おばさんを見て何かに気づいたのか、言葉尻がすぼんでいく。
「私はオルタンシア・エテルナリーフ。あら貴女、どうやら怪我をしているみたいね。こちらへいらして?」
「エテルナ、リーフ……、お、義母様……」
ほとんどつぶやくような小さな声だったけど、私にははっきり聞こえたわ。
コイツが、デイジーを捨てた継母だったのね。マジで悪役グラフィックだったとは思わないわよ!
厚化粧は優しい言葉を投げかけるが、どこか薄っぺらく感じる。
デイジーは文字通り血の気が引くように青ざめていく。
「それにしても、せっかく素敵な舞台なのにホコリっぽいわ。少しばかりお掃除が必要ね。救護活動するにも、美しい花を咲かせるにも、泥や枯れ葉は似合わないでしょう? 私が綺麗にしてあげるから、安心して休んでいなさい」
「…………」
声も出せず、顔面蒼白でガタガタと震えるデイジー。
厚化粧は優しく微笑んでいるけど、目が全く笑ってない。
あれはいけない。
あの目は、いけない。
過去にデイジーを捨てたという事実。それにデイジーの尋常じゃない怯え具合。そしてついさっき、不届き者二人組が言ってたことを思い出す。「始末する」、と。
なるほど、分かったわ。
よーく、分かった。
うろ覚えだけど前世の知識のある私じゃなかったら、そして被害者であるデイジーじゃなかったら意味がわからなかったわね。
つまり、こいつが言う掃除するとは、言外に証拠隠滅のためにデイジーを……!
努めて冷静になろうとしていた。
どうすればコイツらをとっ捕まえられるか考えていた。
だけど、涙が溢れそうになるデイジーを見た瞬間、もうそんなことはどうでもいい!
「ちょぉおーーーっと待ったぁぁああーーー!!!!」
行き当たりばったりな私が考えても、良案なんてポンポン出てくるか!
そんなことよりデイジーを泣かせたわね!?
よろしい、ならば戦争よ!
「なっ! 誰かしら!?」
厚化粧の声を無視して、まずは濃霧の魔法!
薄っすらと舞い上がるホコリとは別に、白い霧が立ち込めはじめる。
そして注目を浴びる魔法!!
「っ!? 光? 何よこれは!?」
厚化粧を上から光でピカッと照らす。
「何よこれは!? と聞かれたら、答えてあげるが世の情け」
脚をクロス!
左手は腰に添える!
右肘を上げつつ、右の手の甲で左目を隠す!
そして、上半身を右に傾けつつ妖精の羽を広げてカッコつけるポーズ!
さらに自分に当たるよう、もういっちょ注目を浴びる魔法!!
ピカッッ!!!
「世界の破壊を防ぐため、世界の平和を守るため。愛と真実のイタズラを貫く、ラブリーチャーミーなガーベラちゃんよ!」
バァァアアーーーンッ!!!
よしっ!
決まったぁッ!!
別にふざけてるわけじゃなく、私を見たデイジーがちょっとでも元気になるようにしてるのよ!
でなきゃこんな公衆の面前で謎ポーズや口上を述べたりなんてするかっての!
今ある証拠で追い詰められるか分かんないけど、行き当たりばったりでも何とかなるっしょ!
ならなくても、後でこっそり特級のイタズラをプレゼントして、50年くらい雲隠れすればいいだけだから気楽なもんよ!
「よ、妖精!? 妖精が私にいったい何の用ですの!?」
「いやいや、お掃除するらしいし? それじゃあ私も手伝ってあげなきゃなぁ~って思っただけだし?」
「別に頼んでおりませんわ。お引き取りなさって」
「まあまあ、そんな事言わずに。救護活動は助け合いの精神から来るものよ。とりあえず聞いてちょうだい。あそこの後ろで伸びてるおじさんたちがいるみたいだし」
注目を浴びる魔法で不届き者二人組を照らす。
さあ、アンタの手下が舞台に上がったわよ!
「あら、イタズラではなく本当に救護活動でしたのね。褒めて差し上げますわ。誰か、彼らの治療を」
厚化粧おばさんことオルタンシアは連れてきた集団に声をかける。
二人組を回収する魂胆なんてバレバレよ!
目元がピクッと動いたの、お見通しなんだからね!
「おー、手際が良いわね。ところで、あなたは彼らのこと知ってるの?」
「いいえ、存じませんわ」
「なんかさっき、彼らはあなたのことを知ってそうなことを言ってたような気がしたけど」
「……何が言いたいのか分かりませんが、私は帝国の貴族ですもの。知っていたとしても、なんら不思議ではありませんわ」
おし!
釣れた!
「またまた〜、一市民が他国の貴族の顔なんて覚えてるわけ無いじゃない」
「……そこの二人は帝国民ですし、帝国なら貴族の顔くらいは覚えておりますわ」
「なるほど、そうだったの。これは失礼したわね。ところで、なんでその二人組が帝国民だと分かったの?」
「あの青い制服は帝国の、それも大使館のものですわ。自国の貴族であり、使節団として来た私のことを知っているのは当然のことですわ」
「あれれ〜、おっかしいわ〜? 私には帝国の青い制服には全然見えないけど、なんで断定できたのかな〜」
「何を言って……ば、バカな!?」
おし、焦ってる焦ってる!
実は濃霧の魔法で出した霧を利用し、見た目を変える魔法で服の色や形を徐々に一般市民のものに見えるよう変えていったのよね。
「まるであの二人が帝国の大使館の人間だって知ってないと、辻褄が合わない気がするわね〜」
「そ、そうね、よく見たら二人とも大使館に勤めている部下だったわ! 今日はたまたま違う服だったみたいね。まったく! ほら、さっさと彼らを回収なさい!」
「ダメよ。ダメダメよ? 彼らは容疑者のため引き渡せないわ!」
「な、何の容疑者かしら? 適当なことを言えば、妖精とてただじゃ済まないことくらい分かってまして!?」
「分かってるわよ、そんくらい。容疑だけど、そりゃもうこのステージの破壊工作よ。使ったロープだってバッチリ残ってるし。あれ? 大使館の制服を着た彼らがあんたの手下だったわよね。大丈夫かしら? 王国の学校に手を出す意味を」
「え? な、な、なぜ服が……!?」
そりゃ私が見た目を変える魔法だけゆっくりと解除したんだし。残念だったわね!
「くっ……! デイジー! 聞こえてるでしょう!? そこに倒れてる二人をさっさと連れてきなさい! 私の言うことは分かりますわね!?」
魔法と暴論で強引にこじつけたけど、相手がアホで良かったわ!
勝手にヒスって自爆してボロ出してくれたわ!
やっぱ行き当たりばったりでも何とかなるもんね!
「大丈夫よ、デイジー。この厚化粧おばさんの言ってることなんて気にしなくて。安心なさい。どうにかなってるでしょ? それに、私がどうとでもしてあげるから!」
「うん……!」
「なんてったって、私はあんたのお姉ちゃんだもの!」
「うん!!」
良かった。
デイジー、元気でたみたいね。
さーて、どうやって料理してやろうかしら!




