第25話 旧友の再会、そして伝説のパンツ
「あー……モブってのはもっとこう、全体的に平坦であるべきでしょ? 健康優良児目的でAP注ぎ込んでたのに、ステージ映えするヒロイン体型になるなんて聞いてないわよ!」
───
【森の仕立て屋さん】での注文は終えたので、お次は【月の明かり】よ。
と言うわけでやってきたんだけど、ぱっと見は個人店ってほど小さくはないけど大型店ってほどでもない、そこそこ広い一軒家のようなお店だった。
看板は【月の明かり】って書いてあるので間違いない感じ。
それにしても、さっきの【森の仕立て屋さん】と同じように、このお店も外から見ただけでも魔道具満載な感じ。たぶん学校よりも多いんじゃないかしら?
妖精の私じゃなきゃ見逃しちゃうね。
「ここが【月の明かり】ですわ。アクセサリーだけではなく、おしゃれな魔道具も取り扱っている老舗ですわ!」
「素敵なお店ですね!」
二人が気づいてない辺り、目立たせなくしてるっぽいのかしら。
まあ高価なものだったらドロボーに遭っちゃうかもだし、仕方ないか。
お店の中は、アクセサリーがキレイに並べられていたり、ドライヤーとかの簡単な魔道具が並べられていたりと、見栄えが良くかなりオシャレ。値段はピンキリだけど、庶民がちょっと贅沢として買えるような値段設定のものが多いかな?
「これくらいのお値段なら、いくつも買えそうね」
ステージ衣装に合うアクセサリーだけじゃなく、私もデイジーに何か普段用として買ってあげようかしら?
「お客様、申し訳ございませんが、当店では原則一人一つまでがルールです。多くの人に手に取ってもらいたいので、ご了承下さい」
「ほーん、面白いルールね」
「そうですわ、ガーベラ。私のように公爵家だろうと、王家だろうと、それは覆せないのですわ」
「へぇ〜凄いお店なのね」
王族でも守らないといけないルールってどんだけよ。
「さて、そこのあなた。わたくしは来店の予約をしていたアデルハイトですわ。わたくしが来たと店長にお伝えになさって」
「承知しました。しばらくお待ちください」
あ、それはいいのね。
「てんちょー! アデルハイト様たちがいらしましたよー!」
って奥から声が聞こえてるけどいいんかい!
少しすると、奥から少女(?)が出てきた。
「あら、アデルハイト。アンタ大きくなったわねえ。学生生活はどう? 元気かしら?」
「はい、アイリーン様。わたくしは元気いっぱいですわ。アイリーン様はいつ見てもお変わり無く素敵ですわね」
「ありがとう」
どうやらこのアイリーンとか言うドワーフっ娘が店長らしく、アデルハイトの知り合いみたい。
早速、アデルハイトは簡単に私たちを紹介しつつも、【森の仕立て屋さん】で描いてもらった衣装デザインを見せ、デイジーに似合うアクセサリーを見繕ってもらう。
「うーん、素材がいいから何をつけても似合いそうね。でも、そこの妖精ちゃんとオソロになるような物がいいのよね?」
「はい! お姉ちゃんにあやかったアクセサリーが欲しいです!」
「いい子ね〜。こんな可愛い子に妖精のお義姉さん! むはー! これはインスピレーションが湧いてくる! テンション上がるわ!」
興奮しながらどんどんアクセサリーのイラストを書きまくるちびっ子。
どうやら生粋の職人みたいね。
ちょっとこっちを見る目が気持ち悪い時があるけど、まあデイジーに可愛いアクセサリー作ってくれるのなら文句はない。
「アイリー、おひさー」
そんな風に思ってると、唐突に気軽な挨拶が聞こえてきた。振り返るとそこにはネコミミ娘が。
「フラン、今は良いところだからちょっと待ってて!」
「はーい」
私服と言うことは遊びに来たのかな?
「フラン、この前ぶりね」
「やっほー、ガーベラ。まさかこんなところで会えるなんてね」
ほんとよね。
デイジーに挨拶したり、アデルハイトを紹介したり、それだけじゃなく色々と楽しくおしゃべり。
「そっか、建国祭の出し物でデイジーが歌うことになったんだね。アイリのあの様子を見てると、凄いアクセサリーができるかもね」
「はい! とっても楽しみです!」
「ところで、フランシェスカさんは、アイリーン様と親しいのですわね」
「うん、私の大親友だよ」
「え!? そ、そうですの!? わたくし、フランシェスカ様と呼んだほうが良いでしょうか?」
「止めて止めて。一応、私は平民だから気にしなくて良いよ。それより、フランって呼んでくれたほうが嬉しいな」
「そ、そうですのね。分かりましたわ、フラン」
ほーん、相手が公爵令嬢って分かってるのに、全然臆さないし、態度も変わらない。でも、横柄なわけじゃない。色々と顔が広いし、コイツって本当にコミュ力が高いわねえ。
「そうそう、ガーベラ。ライブは本当に大変だし、デイジーに無茶させちゃダメだよ」
「もちろんよ! 私の可愛いデイジーに無茶はさせないわ! とは言ってもそれで失敗したら目も当てられないけど。私のプロデューサーとしての腕なら間違いないわ!」
なんせ今回は一切手を出さず、ノーAPで上手くいく未来しか見えないもの。
計画通り
「ところで、フランは何か買うもんでもあったの?」
「あー、ガーベラがいるならまあいいか。ここに来た用事なんだけど……実はガーベラに頼まれていた品がようやく完成しそうだから、それの様子見に来たんだよ」
「え、ホント!? な、なんでこのお店で!? って、ああー、なるほど、このお店だからね」
「さすがガーベラだね。防犯的な意味もあるから皆にはナイショだよ」
「分かってるわよ!」
普通の人間じゃ分からないだろうけど、お店の至る所に魔道具が使われまくってるあたり、相当ヤバいのは間違いない。これ、たぶん許可なく侵入しようものなら私ですら絶対に無事じゃ済まないレベルだと思うわ。このお店でイタズラすんのやめとこ……。
「で、私のパンツはどこ!?」
「言い方!」
仕方ないじゃない!
このワンピースと同じような肌触りの超高級品下着、ずっと欲しかったし!
「あぁー、なるほど。そのワンピース着てるからもしかしてとは思ってたけど、持ち主の妖精ってアンタだったのね」
ドワーフっ娘はデザインを終えたみたい。
話の流れから、どうやらこのワンピースもこのお店が関係しそうなことは分かったわ!
「そうよ! この究極ワンピースを着ちゃったら、他の服に満足なんてできないわ。下着ならなおさらよ! というわけで、全財産をはたいても買う価値があるパンツお願いします!」
貯金の大半はワンピース買うお金で消えちゃったけど、まだまだ口座には入ってたはず。ワンピースよりも小さなパンツならそこまで高くないでしょ!
そう思ってた時代が私にもありました。
値段を見てびっくり!
「なんでパンツ1枚でこんな高いの!? このワンピースと殆ど値段が変わらないんだけど!?」
「いや、逆に小さすぎて難しいのよ。それに必要な素材が超貴重。そんな訳で、フランからの依頼じゃなきゃ絶対に作らない代物よ。だから値引きは無し。まあその代わり余った素材でブラもつけてあげるからきっちり払いなさいな」
「ツケでお願いします」
この日から膨大な費用を払い終えるその日まで、私は【月の明かり】専属冒険者になった。




