第21話 予定外の増援は、だいたい守備範囲外である
「あー……。絶体絶命のピンチに駆けつけてくれたのはありがたいのよ? でもね、なんでよりによって一番面倒な王族ストーカー(お荷物)なのよ!」
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「アデルハイト、無事か!?」
ローベリアが放ったと思われる魔法の刃により、三匹いる怪音波の角鹿のうち、一匹の角の一本が断ち切られた。
「ええ、なんとか無事ですわ」
怪音波の角鹿たちはローベリアという新手を警戒しているのか、様子を見ている。
あぶなー!
危うく切り札の一つを切るとこだったわ。
切り札の内容とは、ズバリ、周りの被害を気にせずブッパするってこと。
でも、それをやってたら助けに来ようとしていたローベリアまで巻き込まれて、下手したら死にかねなかったのよね。
「ありがと、ローベリア! 助かったわ!」
「問題ない。俺のデイジーに何かあっては困るからな」
おめーのデイジーじゃねーわよ。
「早速で悪いんだけど、アデルハイトたちを連れて撤退してくんないかな?」
「何を言う。ハインリヒと俺が揃えばこの程度の魔物、恐れるに足らず」
「師匠、私からもお願いしたい。今度は不覚は取らない」
駄目だこいつら……早くなんとかしないと……!
「いやだから……もう! ああ、囲まれちゃったじゃない!」
せっかく撤退させるチャンスだったのに!
これ以上お守り対象を増やさないで!
王族に怪我でもされたら余計に面倒でしょ!
とりあえず、お荷物は増えたけど、鹿の一匹は音系の攻撃力が激減したからなんとかなりそうね。
さーて、それじゃあさっさと打開しなきゃね!
「ガ、ガーベラ! また何か来る!」
正気に戻ったオーブがガサガサ音を立てる草むらを指すと、熊がこんにちは。
「ぎええぇぇーーー! 今度は熊! し、しかも火吹き熊ぁ!?」
めっちゃガクガク子鹿のように震えてるオーブ。
いかにもモブっぽい反応に花丸あげたいところだけど、そんな場合じゃないわね。
「落ち着きなさい! あいつは味方よ!」
なんでこんなところにいるのかは、この際どうでもいいわ!
「バナ助! ちょうどいいわ! 加勢して!」
「グア、グアグァ。グアァグアグア(おう、もちろんだ。ちょうどガキどものために食材を探してたから手間が省けたぜ)」
バナ助の飲み込みが早くて助かるわ。
「グアグアグァ。グアアグァ。ググアグァ(他のところは心配すんな。先生や冒険者どもがなんとかしてる。あと猫獣人が元凶を叩きに行った)」
「りょーかいよ!」
まあ私が他のところまでどうこうするつもりはないけど、心配事が減るのは良いことだわ。
あのモヒカン、スキンヘッド、トゲトゲな世紀末冒険者は消毒してそうだし、イケオジの先生なら遅れを取らずに生徒たちを守ってくれそう。
それに何より、フランが動いてくれてるなら、もう鹿レベルのおかわりの心配は無さそうね!
あいつはクソ強いし、不審なものがあったら対処してくれるでしょ。
行き当たりばったりだけど、時間稼ぎしたかいがあったってもんね!
計算通りよ!
ほ、ホントだかんね!
「っしゃーんなろー! よくもやってくれたわね! ここからは反撃よ!」
三匹の鹿について、私が一匹、バナ助が一匹、デイジーたちが一匹を相手取れば余裕でしょ!
デイジーに注いでるAPも体感まだ持ちそうな気がするし、問題ない問題ない!
と言うわけで、
「覚悟はいいかしら? 私はできている」
怪音波の角鹿!
あんたが食材になるまで、攻撃するのを止めないッ!
「植物の弦を振るう魔法で牽制して、|草で足を引っ掛ける魔法《草結び》で動きを止め、木葉嵐の魔法、おまけに氷の槍で貫く魔法!」
「ギギピギピィィィーーーーー!!」
派手な強力な魔法のブッパは周りを巻き込むので、単体向きの魔法をひたすら撃ち込みまくる。
これでも中々倒せないあたり、やっぱりコイツの体力はオバケよね。
ちなみにバナ助はと言うと、
「ギウェピィィィーーー!!!」
「グガアアアァァァァアッ!!!」
ってな具合で怪獣大決戦の如く鹿とどつきあってる。
すごい迫力で、正直結構怖い。
鹿は必死に抵抗してるけど、バナ助に有効打は与えられない。
なぜなら、火吹き熊であるバナ助も例に漏れず超タフで防御力が高いから。鹿の角は勢いをつけた突進でもなければほとんど刺さらないのよね。
また、バナ助が吹く火は森を焼かないよう文字通り一点集中で吹き出すバーナーのようになっており、確実にダメージを与えている。
調理に使わない部位だけを燃やすなど気を使ってるけど、負ける要素は皆無ね。
最後にデイジーが主力となる学生チームだけど、こっちはこっちでカオス。
「はああぁぁ! ローベリア、いまだ!」
「ああ、分かった! ここだッ!」
「お二人とも、反撃が来る前に下がるのですわ! オーブ、魔術のタイミングを合わせるのですわ!」
「分かりました、アデルハイト様!」
「私がみんなを支えるわ! 私の歌を聞けー!」
凄くクライマックスっぽい。
ローベリアやハインリヒの剣技、アデルハイトとオーブによる魔術、デイジーによる魔法とフルボッコ状態だ。相手に『幻惑の雄叫び』を使わせないようタコ殴りしてる。
まあもっとも、鹿は角を一本失っており、『幻惑の雄叫び』はマトモに使えないし、使ったとしても一瞬フラッとする程度だろうけど。
後は突進させないよう牽制したり、突き上げや踏みつけの直撃を避けながら削るだけだ。
ちなみにデイジーは、歌でバフと自動回復という離れ技をやってのけている。
APによって迸る魔力がデイジーの体から溢れ、白と橙色を帯びた光の残滓がダイアモンドダストのように輝き漂い始める。
戦場で歌をリアルで聞くと、場違い感はあれども、思った以上にテンション上がって良いわね!
良い感じに流れがきてる!
乗るしかない、このビッグウェーブに!
明らかに優勢になり、あと一息で倒せる。
いよいよクライマックスだと思ったその矢先――
プツン
「あ」
え?
こんなところで、もしかする?
しちゃう?
デイジーから、私のAP、ってか、加護が無くなっちゃったりした?
私の加護さんや。
お願いがあるんだけど。
いやほら、迸ってた魔力って、デイジーのじゃん?
大気中に霧散する前に、リサイクルできない?
あー、いや、ダメ?
良い?
しょうがないにゃあ?
あ、そう。
走馬灯のように脳内で謎のコントが巡ったあと、デイジーの体からチート補正がスッと消え去り、AP切れによるペナルティが──




