第18話 薬草の森のピクニック(?)と、消えたドリル令嬢の笑顔
「あー……。デイジーの一般人化かつ田舎娘計画が上手くいかない……。今から入れる保険ってある?」
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馬車に乗り込んだ私たちは、何のトラブルもなく薬草の森へとたどり着いた。
いや、嘘。
トラブルあったわ。
外壁から薬草の森まで歩いて鐘一つ分の半分くらいの距離。馬車の速度も似たようなもんなので、つまりは鐘半分くらいの時間はある訳よ。
その時間にトラブルが起きたのよ。
ローベリアが、デイジーファンクラブ会員証を作成してたというトラブルが。
「デイジー、君のファンクラブ会員証のサンプルを作ったんだが、出来はどうだろうか」
ローベリアがおもむろに取り出すもんだから何事かと思ったら、会員証じゃないの!
しかもNo.0ってローベリア個人のカードにするつもり!?
「ちょっとローベリア! あんた何勝手なことしてんの! ファンクラブなんて解散させなさい!」
デイジーが歌姫扱いされてるなとは思ったけど、お前の仕業だったんかい!
厄ネタ作るな!
「何を言う。平民であるデイジーの身の安全を確保するという意味で、これほど分かりやすいこともあるまい」
「いやむしろ注目されて危ないじゃん!」
「逆だ。王家が後ろ盾となっているファンクラブの会員だと言うことであれば、身元が保証されているも同然。不用意に近づく者をこれで選別できるし、会員が守ってくれるだろう」
「ぐぬぬぬ……!」
た、確かに一理ある。
言い返せない!
……ん?
「と、ところでこの木と盾みたいなマークって何よ。まさか平民相手に家紋を付けるとか言わないわよね」
「まさか。ただのシンボルマークだ」
ふーん、ホントかしら。
それにしても、この盾ってどこかで見たことあるような……。
と思ってたら、デイジーが口を開く。
「ん〜〜……あ! この木の真ん中にあるマークって盾じゃなくて、もしかしてお姉ちゃんのパンツ?」
「違う。御神体だ」
「ちょっ! あんた、何やってんのおおぉーー!!!」
ふざけんなコラ!
こんなものは、こうよ!!
「な、何をする!」
「何をする! はこっちのセリフよ!!」
No.0の会員証は風魔法でズタズタになった。
抗議した結果、正式版のシンボルマークの御神体の部分は、デフォルメした妖精の羽(私の羽と同じ模様)になった。
まあこれなら許してやるか。
正式版も同じシンボルマークを使ったことが分かったら、毛根を死滅させる魔法をかけると脅しておいたから大丈夫よね。うん。
◆ ◆ ◆
そんなこんなで、くだらないことしてたら時間はあっという間にすぎ、薬草の森の入口に到着。
「薬草の森は王家とローゼンベルク家が共同管理する安全な場所だ。だが、奥へは行かないように」
ヒューゴ先生のイケボにより説明がされる。
まあそりゃそうよね。
お貴族様のお子様たちを抱えて無茶をやろうもんなら大変なことになるしね。
「それでは次にフランシェスカくんにお手本を見せてもらおう。ここまでで何か質問はあるかい?」
「先生、そんな僕たちと同じくらいの子が手本となるようなことかできるのでしょうか」
お!
早速質問が出たわね。
やっぱりあいつの年齢不詳っぷりが気になるわよね〜。
「オーブくん、彼女は王国の……」
「先生! 私から説明させて!」
「分かったよ。どうぞ」
何だかあいつにしては珍しく食い気味に被せてきたわね。
「ありがと! 私はこれでもミスリルの冒険者だよ。はい、これが冒険者のギルドカード。西の魔王国や北の帝国にも行ったことあるし、経験だってそれなりにあるよ。だから安心してね」
「ということだよ、オーブくん。彼女の実力は本物。それと真に信頼できる人物だ。様々なことを学ぶといいよ」
「そうなんですね! ありがとうございました!」
そんなわけで、フランがプロの冒険者として、水の重要性、火の扱い、獣避け、虫除け、拠点の確保など、サバイバルの基礎をデモンストレーションしていく。
長年森で生活してた妖精の私やデイジーにとっては、本当に今更な情報だけど、普通はそんなことまで知らないでしょうね。
フランってばクソ可愛いから、少しはデイジーのファンがこのネコミミ娘に鞍替えしてくれると良いんだけど……。
「さて、それでは班分けだ。第1班は、アデルハイトくん、ハインリヒくん、オーブくん、ガーベラくん、デイジーくん、以上5名だ」
「な、なに!? 先生、なぜ俺が第1班ではないのだ!?」
すかさず食って掛かるローベリア。
ぷぷっ、ハブられてやんの!
「ローベリアくん、あなたは王族として通常とは異なる環境に身を置き、派閥の垣根を超えて交流しなさい」
何だか色々と正論を言われ、すごすごと引き下がる。
身分が高いと大変ねえ。
ま、こっちはこっちでうまくやりましょ。
デイジーは森での生活に慣れてるとは言え、初めての場所だし、念のため少し様子を見ておこうかしら。
それにしてもツッコミ役のアデルハイト、自称弟子のハインリヒ、デイジーの目指すべき一般人のプロであるオーブと、見事に面白い班分けね。
ハインリヒが暴走しても、アデルハイトが防波堤になってくれるし、オーブはお手本だしカンペキ!
ちなみに、私はオーブのことを密かに尊敬してる。
だって、文武両方とも可もなく不可もなく、見た目も突出して良くはないけどバランスはとれており悪くなく、デイジーのファンというミーハーな一面はあるものの、ローベリアほどでもない。
さらに言うと、オーブ・モゥッフ男爵令息って、いかにもモブ貴族って感じ。
狙ってやらなきゃこうはならないのに、自然にこうなるのはもはや天性の才能よね。




