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乙女ゲーの妖精に転生したのでヒロインをモブに育てたい  作者: 星川 咲季
第2章 隠しきれない才能! 妹が学校のアイドルに
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第12話 過保護な護衛団(自称)と、胃袋を掴まれた学校




「あー……。デイジーの一般人(モブ)化計画がことごとく上手くいってないような……。私が目立ってデイジーに目が向かわないようにもしてたのになんで!?」



──────



 学校生活2日目の朝。


 デイジーと食堂へ向かうと、そこには頭の悪い光景が広がっていた。


 寮のベテラン料理長らしきオッサンが、バナ助の横でメモを取りながら「なるほど、その火加減もありなのか……!」と弟子のような有様をしてるんだもん。


 昨日はバナ助もバナ助で、王都の料理人は凄えな、学ぶことが多いなってグアグア言ってたし、目を輝かせてた。楽しそうに学んでるらしいし……互いを互いにリスペクトしてるんでしょう。


 そんなバナ助が作った特製モーニングが全生徒に振る舞われた。


「う、うまい……なんだこれは!」


「こんな素敵な朝食、食べたことないわ!」


 最初はギョッとしてるけど、朝ごはんを食べ始めるとあら不思議。なんか学生たちが感涙でむせんでいる。


 って、いやいや、厨房に熊がいるのよ!

 見えるでしょ!?

 熊に胃を掴まれる国立学校ってどうなのよ!


 まあ細かいことは気にしなくていっか。

 美味しいには変わりないし。

 教室へ向かう私とデイジー。


 なんだけど、少し段差があるだけで、どこからともなく男子生徒が飛んできて「危ない! 手を貸そう!」と騒ぎ出したりするやつもいれば、曲がり角で「教室はこっちよ。忘れ物はない?」と甲斐甲斐しく世話を焼こうとする女子生徒がいたりする。


 そして心なしかローベリアとハインリヒも、昨日の儚いデイジーが忘れられないのか、必要以上に過保護になっている、気がする。


 いやいや、昨日の属性測定や魔力測定でデイジー凄かったでしょ。

 そんなデイジーが、今は守らなきゃいけない存在として扱われるとか……いやいや、目立たず一流の一般人(モブ)な田舎娘を目指してるハズが、なんで貴族を含めた同級生たちからこんな注目集めてるの!?

 おかしいじゃろがい!


 まあいいわ。

 こっからでも巻き返せるでしょ。

 どうすればいいのか皆目見当つかないけど、行き当たりばったりで今までなんとかなってきたから、どうとでもなるわ!



◆ ◆ ◆



 そんなわけで、最初の授業が始まった。

 武術の授業だ。


 私たちからすれば森での生活をするには自衛のための力があって当然なので、武術は不思議でも何でもない。

 だけど、どうやら貴族の子どもたちである同級生はそうでもなかった模様。


「35年前では、武術の授業は選択式だったけど、魔物の大群暴走(スタンピード)があったことで、武術の授業は必須になったんだよ。将来、武に関わらない仕事に携わるとしても、最低限の自衛の力を身につけたり、武に携わる人がどういうことを気にしてるのか、興味があるのかを知る機会になるだろうね」


 なるほどね。

 まあ私はこの国出身じゃないから詳しくは知らないけど、確かに昔、サンライト王国は、魔物の大群暴走(スタンピード)の被害に遭ったって聞いたことはある。その教訓なのね。


「それじゃあまずはみんなの実力を見るので、1人ずつ順に打ち込んで来てね。ああ、もちろん今まで武器を扱ったことが無い場合や自信がない人は事前に教えてくれよ」


 この人、35年前とか時々言ってるからそこそこ年齢いってると思うけど、見た目はイケオジ。まだまだ現役そうな雰囲気だけど、年齢不詳よね。


「僕からは攻撃や反撃しないから安心してくれ。そうそう、自分で言うのも何だけど、僕はこれでもそこそこ強いから怪我をさせてしまうという心配はしなくていいよ」


 ふーん。

 あれ、私は人間の武器なんて遊びでしか使ったことないけど、どうすれば良いのかしら?

 まあいいや。獣人の友達に遊びと称してしごかれたし、遊びでも本気だったから自信はあるわ!


 ただまあ私はいいとしても、デイジーについては昨日の失敗を繰り返さないようにしなきゃ。


 APを少しでも使えばデイジーが無双しそうだし、少なすぎてAP切れしたらペナルティで昨日の二番煎じが目に浮かぶ。


 そんなわけで、今日はAPを使わない!


 ま、デイジーの地の実力を見れば、少しは守らなきゃオーラを払拭できるでしょ!

 ……できるよね?

 なんかちょっと不安になってきたかも……。


 ローベリアや特にハインリヒはさすがと言うか、私から見ても「やるじゃん」と思えるような内容だった。

 伊達に辺境の森にまで押しかけてくるだけはあるわね。

 ヒューゴ先生はそこそこな年齢なはずなのに、マジで危うげなく汗一つかかずに捌き切ってみせた。やっぱりイケオジがこんな強いとか絶対ネームドの攻略対象じゃん!


 ちなみに私の身長に合うサイズは爪楊枝のような木剣サイズになるので当然ない。というわけでマジックハンドの魔法により普通サイズの木剣を持つ。

 ちなみに私には木剣の良し悪しはさっぱりなので、使う木剣はテキトーよ!


 時には空中から、時には足元から、腕の可動域は関係なくブンブンと振り回す。妖精は小さいし飛ぶから、それだけで変則的になるのよ。


「妖精流剣殺法、アーススラッシュ!」


 地属性の魔法を込めた全力の斬撃!

 私はかつて勇者だった先生のことが大好きなので、その必殺剣をオマージュして技を放つ。

 ヒューゴ先生は受けるのはさすがにマズいと思ったのか、ヒラリと避け、空振った木剣は地面に激突して砕けた。地面にも穴が空いた。


「これはこれは……木剣にもかかわらずこの威力。さすがガーベラさんだ。それに妖精に剣技があるとは思わなかったよ。ただ、遊び半分で備品を壊すのはいただけないかな。穴は戻してくださいね」


「はぁ~い」


 ちょっと怒られちゃった。

 それに遊び半分ってのもバレてた。本気だったらマジックハンドの魔法で何本も木剣持てるしね。

 穴は土魔法で埋め、ついでに木剣は校庭の隅にある木の枝を魔法で加工して作った。

 それにしても、このヒューゴ先生は、元勇者の先生と雰囲気が似てるような気がして地味に私にもヤバい。やっぱり攻略対象じゃない!?


 まあ私のお遊びはこんなもんでいいわね。

 次はデイジーの番よ。


 周囲の同級生からは「無理しないで」とか「俺が選ぶよ」と甘やかされているけど、やんわり断る。

 そして訓練用の木剣を淀みなく選び、手に取るデイジー。

 テキトーに選んでるように見えるけど、あの子は自分に合った最適なものを選ぶのが上手なのよね。


 とてもゆっくりな素振りを何度かして確かめている。


「うーん、こんな感じかしら」


 一見、うまく扱えてないから遅いのかと思えるけど、そうじゃないのよ。あれは重心を確認したり、手に馴染むかを見てるのよね。

 そのへんは前世の謎知識によると、そーいうのが良いらしいってどっかのマンガにあったような気がしたので、デイジーにAP注ぎ込んでやらせたらあっという間に身についた。


 そして最後に一振り。


 フッ


 デイジーの剣風が、空気を切り裂く。

 うむうむ、5年間のスパルタ教育+APブースト特訓の成果ね。

 後方腕組み妹育成姉妖精はご満悦である。


「よし。では先生、行きまーす」


 綺麗で淀みない剣閃が走る。


「おっと!」


 先生はデイジーが素振りをしているあたりから真剣に見てるなと思ったけど、どうやら予想以上だったみたいね。


「えーい、てやあー」


 可愛い声に反して、とにかく正確無比な斬撃。

 妖精の私は小さく正確じゃなきゃ当たらないから身についた独学の剣術。ちなみに妖精は見た目に反してかなり頑丈だし軽いから、デイジーに木剣で叩かれたくらいなら吹っ飛びはするけどイテテで済むから安心よ。


 うーん、誰よりも鋭い踏み込みを見せてる気がする。

 さすがは私の妹。素晴らしいわ!

 なお、今回は披露してないけど、デイジーも妖精流剣殺法は使えるものとする。


「い、一体何が……! 昨日はあんなにフラフラだったのに……この身のこなしは……!」


 ……はっ!


 ああああっ!

 違う、そうじゃない!


 ハインリヒの呟きで気づいた!

 デイジーがあまりにカッコ可愛いから内心自慢げに後方腕組み妹育成姉妖精な気分を味わってたけど、ダメじゃん!


 可憐なのに、才能豊かなのに、その上で既に超強いって見せつけちゃってるじゃん!!


 ……ダメだわ。


 この子、AP使っても使わなくても、放っておくだけでヒロイン力がカンストしちゃうタイプなんだわ!








明日18時に更新予定です。

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『ネコミミ娘に転生したので楽しく気ままに生きたい』
※前作を読まなくても本作のストーリーには影響しません
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