↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/21

あらためて推し確だわさ♪くぅう♪

作戦決行の日の朝。

 私は高級宿の天蓋付きベッドの上で、シーツを握りしめながら密かに打ち震えておりました。


(ぶるっときたね!? 歳のせい!? まだまだAIネイティブやで!!)


 武者震いをセルフツッコミでねじ伏せ、そっと視線を横へスライドさせます。

 そこには――お気に入りのシルクのシーツにくるまり、無防備にすやすやと寝息を立てるリリス様とララァ様のお姿。

 リリス様の艶やかな黒髪が枕に広がり、ララァ様の白銀のネコ耳が心地よさそうにピクピクと揺れ……鎖骨にデコルテにワキ、そしてけしからんOPI!?

 そして二人の間には、昨晩つまみ食いした『魔導コンソメポテチ』の空袋。


(…………尊いッ!! 尊死からのご飯3杯いけるわ)


 前世の限界オタク時代、どれだけガチャに給料を溶かしても画面越しに拝むことしかできなかった、あの神絵師デザインの最高峰・SSRサキュバスたち。

 オタクにとって、推しからの「認知(存在を認識されること)」など宇宙創生レベルの奇跡。ですが、今やどうですの!?

 認知どころか――同じベッドでゴロゴロし、同じ布団の中でポテチを奪い合い、一緒に国家転覆のRTAを走るリアル相棒!


(これぞ究極の『推し確(確定演出)』! 前世の自分が見たら発狂して泡吹いて卒倒する光景ですわ!!)


 私が両手で口元を覆い、感涙にむせび泣きながら熱い視線を送っていると――


 ピクッ、とララァ様の耳が跳ね上がり、スッと片目が開きました。


「……にゃっ!? リリス、起きてにゃん! ディードがまた朝からヤバい目でこっち見てるにゃん!」

「……んぅ? なによ騒がしい……って、ひっ!? なにそのねっとりした生暖かい笑顔、ポテチあげないわよ……!」


 飛び起きたリリス様が、シーツを胸元まで引っ張り上げて露骨に後ずさりました。

 ララァ様などは、ベッドサイドに残っていた最後の一枚のポテチを慌てて両手で抱え込み、シャーッ!と威嚇してきます。


「わ、渡さないにゃん! これはララァが後で食べる分にゃん! ディードのあげないにゃん!」

「人聞きの悪い! 誰がポテチを奪うと言いましたの!? 推しが尊すぎて拝んでいただけですわ!」


 冷たいジト目でドン引きする推したちの塩対応。

 ええ、ええ、これです! このご褒美のような温度差こそ、最高のログインボーナスというものですわ!


「コホン! さあ、お二人ともお着替えあそばせ。昨日の計画通り――本日、聖国の重課金野郎どもへ『第一の鉄槌』をお見舞いして差し上げますわ!」


 


 正午。王都中央広場。

 平時であれば噴水を囲んで市民が憩うこの広場は今、異様な光景に包まれていました。


 ずらりと並べられた、数十個に及ぶ巨大な特製寸胴鍋。

 私が買収した王都商業ギルドの料理人たちが総出で火を焚き、木べらで豪快にかき混ぜているのは――お父様バフの放置マネーで買い占めた最高級の牛骨、香味野菜、そして私の神具から生成された【特製・超濃厚黄金コンソメパウダー】を限界濃度まで溶かし込んだ、特製スープです!


 ゴボゴボゴボッ……!


 煮えたぎる鍋から立ち上る、暴力的なまでの芳醇な肉の旨味と、香ばしい玉ねぎの甘み。

 さらに私は、風属性の魔導具をフル稼働させ、その匂い(飯テロ)を王都全域――とりわけ、広場のすぐ裏手に位置する『聖国軍・王都駐屯兵舎』へ向けてダイレクトに送風(空輸)させました!


 ――ズズゥゥゥンッ!


「な、なんだこの匂いはぁぁぁっ!?」

「く、首の後ろが疼く……!? 肉だ! 猛烈な肉とスパイスの匂いがするぞッ!」


 兵舎の窓から、飢えた獣のような目で顔を出す聖国兵たち。

 無理もありませんわ。聖国の教義は『質素・倹約・禁欲』。彼らが普段口にしているのは、石のように硬いライ麦パンと、味付けの薄い塩水のような野菜スープだけ。

 極限の味覚飢餓に喘ぐ彼らの鼻腔へ、現代日本の技術の粋を集めたジャンクの極み・濃厚コンソメが直撃したのです!


「き、貴様らぁッ! そこで何をしているッ!!」


 広場に怒声が響き渡り、白銀の重装鎧に身を包んだ聖騎士小隊が、槍を構えて殺到してきました。

 先頭に立つ小隊長が、血走った目で私を睨みつけます。


「白昼堂々、怪しげな油の匂いを撒き散らすとは何事だ! 我ら聖国の敬虔なる戦士が、このような下劣な肉の匂いに惑わされると思うたか!? 直ちに炊き出しを中止し、鍋を破棄せ――」

「まあまあ小隊長様、お堅いことは言いっこなしですわ♡」


 私はにこやかに微笑み、木製のスープ皿に熱々の黄金コンソメスープを注ぎ、揚げたての特製ポテトチップスを添えて差し出しました。


「毒見ですわ、毒見。市民の安全を守る聖騎士様が、口にも含まずに邪法と断じるのは不公平ではありませんこと?」

「ぐっ……!? こ、小癪な……! ええい、ならば我が舌で邪悪を証明して――」


 小隊長は眉間にシワを寄せ、警戒しながら木匙ですくい――ズズッ、と一口含みました。


 その瞬間。


 カチリ、と世界が静止したかのような静寂。

 次のコンマ数秒後――小隊長の瞳孔がカッと見開かれ、白銀の兜の隙間から、滝のような涙がドバドバと溢れ出しました。


「な……ん……だと…………ッ!?」

「隊長!? いかがなされました、隊長ッ!?」

「う……美味い……ッ!! な、なんだこれはぁぁぁッ!? 口に入れた瞬間、牛と野菜の圧倒的な旨味が舌の上で大爆発(ビッグバン)を起こし、五臓六腑へ染み渡っていく……ッ!!」


 小隊長は震える手で皿を抱え込むと、もはやスプーンも使わず、ゴクゴクゴクッ!と喉を鳴らして一気にスープを飲み干しました。

 さらに添えられたポテトチップスを口に放り込み、パリッ!と小気味よい音を響かせた瞬間――


「ぶふぉぉぉぉぉッ!? こ、香ばしい油と塩気……そしてサクサクの食感……ッ! 神よ……我らが今まで主への祈りと共に噛み締めていたあのパサパサのパンは……ただの石ころ、粘土の塊でしたのかぁぁぁッ!!」


 ドォォォンッ!! と膝から崩れ落ち、天を仰いで慟哭する小隊長。

 その神がかり的なリアクションを見た部下の聖騎士たちと重装兵たちが、我慢の限界を迎えて鍋へと殺到しました!


「お、俺にもくれぇぇぇっ!」

「一杯でいい、恵んでくれぇぇっ! 金ならある、いや魂でも何でも差し出すからぁぁぁッ!!」

「うおおおっ、美味い! 美味すぎるッ! これぞ真の奇跡、主の奇跡だぁぁぁッ!!」


 もはや統率も軍律も崩壊。

 屈強な聖騎士たちが全員涙を流して鼻水を垂らし、スープの寸胴鍋の前に綺麗に一列に並び直して「おかわり……おかわりを……」と懇願し始めました。


「……ねえディード」

 私の横で、リリス様が心底引き攣った顔で呟きました。

「あの兵士たち、完全に目がイッちゃってるんだけど……。あんた、スープの中にヤバい禁制品でも混ぜたの?」

「失礼ですわね、完全無欠の合法調味料ですわ! 禁欲生活で飢えた人間に、コンソメの旨味成分(グルタミン酸)の波状攻撃を仕掛けただけですもの♡」


 その横でララァ様は、炊き出し用のポテチを勝手につまみ食いしながら、得意げに胸を張っていました。

「ふふん! コンソメの美味さに気づくとは、人間にしては見る目があるにゃん! 今日からお前たちはララァのコンソメ親衛隊にゃん!」


 兵士たちが「ハハァーッ! 姫様ぁぁぁ!」とララァ様に平伏し、忠誠の対象が聖国からジャンクフードへと上書きされていく地獄絵図。


 ピロリン♪ と私の網膜ウィンドウに軽快なファンファーレが鳴り響きました。


【メインクエスト:『聖国教会派閥・内部崩壊作戦』フェーズ1クリア!】

【聖国軍王都駐屯部隊:胃袋買収率100%達成(全面寝返り完了)!】

【称号:『胃袋を掴む者(合法テロリスト)』を獲得!】


(ふふっ……これで聖国軍の末端戦力は完全無力化。さあ、手足をもがれた重課金ボスのマルティス枢機卿……貴方、次期フェーズでどう動きますかしら?)


 王都中に広がる香ばしいコンソメの匂いの中、私は勝利を確信して扇を優雅に鳴らしました。




ここまでお読みいただき


本当にありがとうございます!


「コンソメは正義」と少しでも思っていただけましたら、作品下部にある


・【ブックマーク/フォロー/お気に入り追加】

・【★評価(ポイント投票)】


をポチッと押していただけると、執筆の凄まじい励みになります……!

(皆様の応援のおかげで毎日元気に執筆できております!)


第20話で一旦完結!?へ向けて、前世のゲーム知識とチートを総動員してえたらないようにお届けしていきますので、ぜひ応援よろしくお願いいたします


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。