無課金接待も!?でしょうねー!
玉座の間で親バカ国王を黙らせ、周辺各国への『完全独立の公式御触れ』をもぎ取った後。
私はテクスチャ裏抜けで再び王城を脱出し、高級宿のスイートルームへと優雅に帰還いたしました。
ふかふかのベッドへダイブし、一息ついたその瞬間――時計の針が正午を指し、網膜ウィンドウからファンファーレのような電子音が鳴り響きました。ソシャゲ定番のデイリー更新時間ですわ!
【本日のデイリーログインボーナス受取完了!】
・無償魔石×100
・高級コンソメパウダー(神具強化用)×5
【祝・3日連続ログイン追加ボーナス!】
・『ガチャチケット(単発)』×1枚獲得!
【放置モード集計結果(お父様バフ適用中)】
・獲得資金:金貨+85,000枚(所持金カンスト間近!)
・獲得経験値:+120,000EXP(プレイヤーレベルUP!)
「ふふっ……今朝も不労所得が美味――」
ほくほくと緩みかけ、不労所得の甘美さによだれすらキラリと光りかけた私の口元が、次の瞬間――ピタリと凍りつきました。
ウィンドウの右隅にポップアップした、次期解放ワールド『聖国教会派閥・クーデター中枢』の敵戦力データ。そこに並ぶ桁外れの数値と推奨ステータスを見た瞬間、私のゲーマーとしての第六感が激しく警鐘を鳴らしたのです。
(…………ッ! でしょうねーーーーー!!!
運営が初心者を気持ちよくさせるための『無課金接待ボーナス期間』は、ここまでですわね!
ええ知ってましたわ!! ただ現実を直視したくなかっただけですわーーッ!!)
王城の雑魚モブや無能王子相手なら、初期配布チートの『夜闇の逆バニー』とお父様バフの放置マネーでゴリ押しできました。
ですが、次の相手は国家を裏から牛耳る『聖国教会派閥』。
理不尽な全体即死結界に、限定ピックアップのような凶悪な聖遺物を湯水のごとく投入してくる、いわば札束で殴ってくる重課金ギルドです。単純なステータスの殴り合い(正面衝突)を挑めば、どれだけ放置マネーがあろうとすり潰されるのは目に見えています。
脳裏に去来するのは、前世の深夜――。
新ガチャの完凸キャラでイキり散らす重課金勢に歯を食いしばりながら、有志Wikiを隅々まで読み漁り、当たり判定の1フレームのズレ、敵AIの思考ルーチンの穴をひたすら研究し尽くして、配布キャラだけでランキング上位に食い込んだあの狂気の日々……!
(……上等ですわ。札束でマウントを取ってくる重課金野郎どもを、無課金の知恵と執念で完封してハメ殺すのが、この私の生き甲斐でしたもの。――見てらっしゃい聖国。仕様の隙間を突きまくって、教団サーバーごと焼き尽くして差し上げますわ……ッ!)
スッ……と伏せられた瞳。
血走っていた熱は消え去り、極限の集中に入った私は、美しく冷徹な「孤高の攻略者」のキリッとした表情で、何もない壁の虚空を鋭く睨み据えました。
――ズズッ……ボリボリ。
「……ねえ、ララァ」
「にゃあ?」
「あの子、さっきから何もない壁をキリッとした顔で見つめてるけど……何にスイッチが入ったのかしら? 急に劇画調の顔になってて、ちょっと鳥肌立ってきたんだけど」
「わかんないにゃん……。さっきのポテチの揚げ加減にでも納得いってないのかにゃん? ディード、たまに狂気の顔するから怖いにゃん……お漏らしそうだにゃん」
ベッドの上でシーツにくるまり、特製コンソメポテチをボリボリ齧っていたリリス様とララァ様が、半歩引いた目でヒソヒソと囁き合っていました。
ですが、今の私の耳にそんな雑音は届きません!
「リリス様、ララァ様! ポテチを食べる手を止めて、作戦会議ですわ!」
「「えー……むりぽ」」
「『むりぽ』ですって!? あのですね……! 先ほど玉座で特使から吐かせた情報と、前世のエロゲーの記憶……これらを照合した結果、敵の親玉の正体が判明いたしました。聖国教会派閥のトップにして、強硬派の黒幕――マルティス枢機卿ですわ!」
そう、前世のファンディスク資料集で履修済みの裏設定!
マルティス枢機卿は、表向きは清廉潔白な聖職者を装いながら、裏では王国を属国化して軍事拠点を手に入れ、聖国本国の法王庁をも乗っ取ろうと企む野心家です。
「ディード、その枢機卿ってやつを殴り込みに行ってボコボコにするのかにゃん? 妾の魔圧ならワンパンよ?」
「いいえ、リリス様。重課金勢の拠点へ真正面から特攻するなど、無課金走者のすることではありませんわ。ここは――【教団まるごと同士討ち炎上チャート】で参ります!」
「同士討ち……?」
首を傾げるリリス様に、私はニチャリと口角を吊り上げました。
「ええ。マルティス枢機卿の裏金口座の暗証番号、密輸ルートの全記録、そして……本国法王庁の穏健派を暗殺しようと計画している証拠書類。これら全て、前世の隠しイベントで完全に記憶しておりますの。これを聖国本国の法王庁へ、特命告発状として特急便で送りつけて差し上げますわ」
つまり、聖国の本拠地(運営本部)に直接チクることで、本国から『異端粛清部隊』を派遣させ、黒幕と同士討ちさせるのです!
「さらにダメ押しですわ。聖国軍の末端兵士や下級信徒たちは、戒律によるパサパサのパンと味気ないスープで極度の味覚飢餓に陥っています。そこへ……我がカンスト資金を投入し、王都の商業ギルド経由で『奇跡の黄金スープ(超濃厚コンソメ)』とポテチの炊き出しを格安で大量バラマキいたします!」
「……っ!? ふぁゅっ!?コンソメの炊き出し……!?」
ララァ様が黄金の目を丸くし、ごくりと喉を鳴らして、じゅるりじゅるりと涎をこぼしました。
「ええ! 金と胃袋を完全に掌握された兵士たちに、果たして黒幕の命令が届くかしら? 信仰心をジャンクフードで上書きされた兵士たちは、もはや私の配下同然ですわ!」
「……あんた、本当に人間の令嬢なの? 悪魔の私よりよっぽど外道な手口を使うわね……」
リリス様が心底呆れたようにジト目を向けますが、それこそ最高の褒め言葉ですわ!
「ふふっ、これぞ無課金ガチ勢の知恵と執念ですわ。――さあ、聖国の重課金野郎ども。仕様の抜け穴で、足元からじわじわと崩壊なさいまし!」
【メインクエスト:『聖国教会派閥・内部崩壊作戦』開始!】
【第一フェーズ:王都全域での『コンソメ配給テロ』準備完了!】
私の不敵な宣言とともに、王都の街へ香ばしいコンソメの香りが満ち始めようとしていました。
ここまでお読みいただき
本当にありがとうございます!
「コンソメは正義」と少しでも思っていただけましたら、作品下部にある
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