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73話_魔国へ

 母のいた村からも出発し、魔国の王都の近くまで来た。


「さて、ここから先、二人には変装をしてもらう。と言ってもこのアクセサリーの角と尻尾を付けるだけだけどね。」

「はいはーい!私達にはないの?」

「俺らは姿を消せばいいんだから無くて良いだろう。」

「むう。付けたかったのに。」

「まあまあ、終わったら貸してあげるから。」


 セレスから悲しみの感情を感じるけど我慢して欲しい。セレスを宥めつつ、巻角と悪魔の尻尾のアクセサリーを受け取る。ライアスは鍬形みたいな角に蛇みたいな尻尾だ。ライラさんは短くて目立たない角に兎の尻尾を付けている。


「なんの魔族かな?」

「低位魔族に名称は無いよ。雑種だからね。親の種類も関係なくて一切両親の特徴を受け継がない子もざらさ。」

「王様に近付くなら高位の魔族の方が良いんじゃないか?」

「本当はそうしたいところなんだけどね。奴らは自分達の血筋に誇りを持ってる。部外者が変装すると一発でバレるのさ。」

「低位の魔族でも王様に近付けるかな?」

「あんたらなら大丈夫さ。結局の所実力が全てだからね。力を示し続けるだけで向こうから接触してくるよ。」


 血筋よりも実力の方が大切なのか。私達にとっては都合良いけど身元の保証とかどうするんだろうか。


「言ったろ、そんなもの(身元)よりも実力が大切だって。」


 脳筋過ぎない?


「ま、と言うわけであたし達のやる事はシンプルだ。魔国に侵入したらやる事は二つ。魔族じゃないとバレないこと。そして、闘技大会に片っ端から優勝すること。オーケー?」

「「了解!」」


 後半はともかく問題は前半だね。バレたら処刑されるんだ注意しないと。


 ―――


 準備を終えた私達は少しドキドキしながら門を通る。門番がじっと見てきて焦ったけど手を振ると気さくに手を振り返してくれた。案外いい人かもしれないな。


 王都の中に入ると色んな意味で期待を裏切られた。世紀末のような場所をイメージしていたけどそんなことはなく、むしろブルーム王国よりも綺麗に整備されてるのでは無いだろうか。


「こんなに綺麗なの?」

「ちょっとどころじゃなく意外だな。」


 コソコソ話してるとおばちゃんのような魔族の人が近付いてきた。


「あんたたち。田舎から来たのかい?それだと驚くよねえ。この街並みは新しい王様の指示なんだよ。街中で暴れるのも禁止。店で暴れるのも禁止。物を壊すのも禁止なんだと。禁止事項が多くて参っちゃうね。」


 暴れたり壊したりするのが普通だったのか…。


「はい。王都に来たのは初めてなんですけど…。私達がいたところとは程遠くて驚いちゃいました。」

「あんたたち。どんな田舎から来たんだい。今どき敬語なんて使う奴はおらんよ。そんなんじゃ舐められちまう。気をつけな。」

「そっか。ありがとう。でも、そんな禁止事項ばかりで不満はでなかったの?」

「うんうん。まだ硬いけどその調子だね。不満はもちろんでたさ。ただね、何人束になっても新王には勝てなかった。今までの国王とは一線を引く強さだよありゃあ。」


 そこまで強いとなるとやはり魔王が新しい王様なのかな?


「反乱勢力はまた集まったりしてないの?」

「いや、ここが不思議なところでな?一度制圧された奴らは何故か新王に服従するんだよ。一匹狼みたいな奴からよく暴れる悪ガキまで全員さ。その心酔具合から実は魔王様なんじゃないかって噂も流れるほどだったよ。」


 やはり可能性は高いか…ん?


「だった。…過去形ということは今はその噂は消えたの?」

「そうなんだよ。魔王に関する別の噂が流れ始めてねえ。今でも国王様が魔王様だって言ってる奴らが居るけどもう少ないね。」


 今の国王が魔王じゃない可能性が高いのか。もう少し探っても良いかな?


「別の噂ってどんな話?」

「それがねえ。魔王様が覚醒したって噂さ。そこから今の国王様は魔王様が覚醒するまでの間、代わりに統治を任された腹心じゃないかって噂に変わっていったんだよ。」

「ん?でも魔王様と代わった訳じゃないんだろう?」

「あんたはせっかちだねえ。そんなんじゃモテないよ?」


 おばちゃん、強し。それにしても覚醒したって。すでに魔王は遺跡に行った後なのか。


「魔王様は裏であたしらを導いてくれているのさ。実は魔王様の腹心の一人が憎き神霊と神霊の契約者とやらに殺されちまってね。警戒して前に出るのをやめたんじゃ無いかって話だよ。」

「なんだか臆病な魔王様だな。部下を表に立たせて自分は安全な場所にいるとか。」

「あんたら本当に魔族かい?魔王様のやる事にケチ付けるんじゃないよ!そういう事は思っても口にしちゃあいけないよ。袋叩きにあいたいのかい?」


 あ、臆病だと思ったりするんだ。おばちゃんはどの種族でもおしゃべりな人が多いんだな。でも優しい人で良かった。


「おばちゃんありがとう!もう行くね!」

「ああそうかい。あんたらの住んでた田舎は常識がズレてるみたいだから言動には注意するんだよ。ああ、それと。国王様なんだけどね。私闘を全面的に禁止した代わりに毎日闘技大会を開催してくれたんだ。あんたらも力に自信があるなら参加してみるといいよ。飛び入り参加もできるからね。じゃ、くたばるなよ。」


 欲しかった情報をほとんどくれたおばちゃんはそのまま去っていった。


「さて、一度宿に行って情報を整理するかい?…まさか一人目で欲しい情報が集まるとは思わなかったけどね。」


*****

Tips 魔族の位

 純粋な魔族が高位、雑種の魔族が低位として扱われる。純粋な魔族は同じ種族の中でも最高位、高位、中位に分かれている。雑種の魔族には低位しか居ない。この位は血液の濃さが指標となっているため、低位の魔族が高位の魔族よりも強い場合もある。しかし、最高位だけは特別で、血も濃く力もずば抜けて強いため、歴代の魔王は最高位の者から出ている。

サクラ「別れの挨拶物騒だったね。」

セレス「それだけ治安が悪いんだよ。」

サクラ「暴力禁止令の意味無くない?」

セレス「…前よりは減ったんじゃないかな?たぶん…。」





次話は明日の17時投稿予定です。


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