56話_魔族
「桜姫ともあろうお方が不甲斐ないわね。」
襲撃のせいでパレードが中断され、王宮へと戻った私達。私に嫌味を言うのはもちろんガーベラだ。
「捕まえた瞬間自害するとは思わないでしょう?」
「それでもどうにかするのがプロとしての気概ではなくて?」
「別にプロじゃないんだけど…。」
「なにかおっしゃいまして?」
「イエ、ナンデモアリマセン。」
パレードの終盤で襲撃された私達だったが、セレスのおかげで敵の場所が分かりすぐに攻勢にでた。捕らえるのは簡単だったのだが、一人目を捕まえた瞬間、他の敵が捕虜を殺し、残った五人全員が自害したのだ。
「まあまあ、一人だけですが無事に捕まえることができたのですし、サクラさんを責める必要はないでしょう。」
「ライアスさんはさすがですわ。ですが、それとサクラさんが不甲斐ないことは関係ありませんわ。」
うん。襲撃犯の十人のうちライアスが一人だけ自害させずに捕縛したのだ。
「いや、回復魔法を使えないと捕らえるのは無理だったからな。サクラに捕らえられなくてもしかたないだろう。」
正確には、一人が自害した時点でもう一人が自害しないように回復魔法を過剰にかけつつ捕まえたらしい。ちなみにセレスに豊穣の神を使って蘇生薬を創ればいいのかとも思ったけど生命の蘇生に関わるのは禁止されているため諦めた。どうやら母に禁止されているらしい。
「それにしてもアービシアではなく魔族が襲撃者でしたか…。」
「裏でアービシアに繋がった可能性も否定できないが、王族や契約者を抹消するチャンスと思って仕掛けてきたのかもな。」
「むしろ繋がってる可能性が高いかもよ?」
そう、襲撃犯の正体は魔族だった。現在、アースフィアに七つある種族のうち唯一敵対している種族で神霊ではなく魔王を信仰している。魔族から出てくる神霊の契約者は例外で人と寄り添う者が多いらしく正体を隠して人族の生活に紛れ込むそうだ。そういえばレオナードも文化祭に混じっていたね。
「なんでそう思う?」
「んー、まずは前提として、繋がる方がアービシアにとっても魔族にとっても都合がいいと思うんだよね。」
いわゆる利害関係の一致からの互いに利用しあう仲というわけだ。
「都合がいい?」
「アービシアは戦力を増やせる。魔族は人族の情報が手に入る。ほらね?Win-Winでしょ?」
「スタンダードを起こせるような人が戦力を求めているんですの?」
「あぁ、ガーベラは知りませんでしたね。サクラさんとセレシア様のおかげでアービシアの戦力はすでに壊滅しているんですよ。」
ちょっと違うけど?…そうか、セレスが敵の味方をしていたってことを隠したいのか。咄嗟に嘘をつくとは。シルビア、恐ろしい子!
「それで、今までもパレードはしていたけど襲撃されることはなかった。なのに今回攻めてきたのは情報が手に入ったからかなって。」
「題目はともかくパレードを行う時期はいつも決まってますからね…。情報源がアービシアと考えると突然パレード中に攻めてきた事実に辻褄が合うということですね。」
「ま、こってりと絞ればわかるだろ。」
「どうでしょうか。すぐに自害を選ぶような連中です。ちゃんと情報を吐くか…。」
ちょんちょん
ん?セレスが私の足を突いてる。何その動作。可愛い!
悶えていると再度テシテシしてきた。よく見ると手に木の実を持っている。
「これは?」
「それ食べると嘘をつけなくなるよ!あと、聞かれたことには素直に答えるようになるの!」
えっぐい自白剤ですか…。
「シルビア。」
「ええ、聞いていました。活用させてもらいますね。」
シルビアに木の実を渡す。これで情報が手に入るだろう。
「どうしてこの木の実を作ってくれたの?」
「さっきはサクラのお願いを断っちゃったから…。代わりにならないかなって。」
しゅんとした顔のセレスの頭をなでる。
「気にしなくてよかったのに。でも、ありがとうね。」
「えへへ。」
うんうん。やっぱり笑ってないとね。
―――
「いろいろと協力してくれてありがとう。おかげで助かったよ。」
場所は変わらず王宮の一室。シルビアに木の実を渡してからしばらく談笑していると陛下がやってきた。すかさずガーベラがカーテシーをする。ワンテンポ遅れてカトレアちゃんもカーテシーをした。私とライアスはお辞儀だけだ。
「「サクラ(さん)!?」」
そうだよね、普通、陛下とあったら相応の礼儀をもって接する必要があるよね?
「ああ、二人は良いんだ。公式の場ならともかく、非公式の場で神霊様の契約者に頭を下げないで欲しくてね。僕からお願いしたんだよ。」
そう、前回、王宮から帰るときにフランクなのをあきらめる代わりにって陛下から頼まれたのだ。正直どうかと思うが仕方がない。
「いろんな情報を掴んだよ。サクラ君の予想通りアービシアと魔族は手を組んだそうだ。今は太古の遺跡で攻め入る準備をしているようだよ。冒険者ギルドに緊急クエストとして依頼するつもりだけど先に言うね。サクラ君。ライアス君。アービシアの捕縛と魔族の殲滅をお願いできるかな?」
「魔族は殲滅なんですか?」
「うん。わざわざ攻め入ったりはしないけど、攻めてきても生きて帰れることを知ったら何度も攻め込んできちゃうからね。情報は欲しいけど、どうせ下っ端しかいないだろうし、それならもう捕まえてる魔族と持ってる情報に大差ないだろう。」
たしかにノーリスクなら何度も攻め込めるな。それにしても幹部は来てないのかな?
「魔族は人嫌いだろう?手を組んだ相手とは言え、そんな人間のいる場所に幹部以上のものは来ないと思うよ。」
確かにその通りか。
「承知しました。その依頼、受けさせてもらいます。」
*****
Tips 怠惰の大罪
セレスが神霊として持っている固有スキルの一つ。怠けることに特化したスキル。その怠惰は時をも巻き込み、過程をも省く。努力する過程を飛ばして一瞬で技能を身に着け、考える過程を飛ばして知りたい情報をすぐに知ることができる。ただし、考える過程を飛ばすだけのため、全く知らない情報を知ることはできない。ただし、忘れているだけの情報や、無意識領域で知っている情報であれば問題なく知ることができる。加えて、ステータスにマイナスの変化が生じない。とても強力なスキルである一方で、肉体的、精神的な成長ができず、すぐに眠くなってしまうデメリットがある。セレスが良く寝てるのはこのスキルのせい。
ロータス「パレード中忘れられてた気がするよ。」
サクラ「そ、そんなことは…。」
ジーク「ちゃんと守ったの。ただ、ライアスには陛下を守るよう言われなかったの。」
ライアス「ジーク!?」
次話は明日の17時投稿予定です。
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