32話_親善試合終了
本編に戻ります。
<ライアス視点>
向こうの方でサクラと楓が相対している一方で俺とシルビアのペアはクリストフとルノアのペアと相対していた。
「サクラ殿は某とやりあうのではなかったのでござるか!?」
「いえ、元々サクラは楓さんとぶつける予定でしたよ。」
「いいのか?あんなんでも楓は強いぞ?作戦ミスだと思うけど。」
「大丈夫ですよ。サクラの強さは。良く分かっているので。」
シルビアに同感だな。模擬戦から一週間、この戦いの前にもサクラとは二対一で何回か戦ったが結局一度も勝てなかった。
「おいルノア、そんなんじゃ相手の思うつぼだぞ。」
「はっ。まさかサクラ殿の術中だったとは。危なかったでござる。」
「いや、絶対に違う。あいつはそんなこと考えられるやつじゃないだろう。」
サクラの抗議が聞こえる気がするが無視だ。
「向こうの決着がつく前にこちらも始めましょうか。あちらはすぐに決着がつくと思いますし。」
シルビアはにっこりと笑って告げる。
「うん?あの子そんなに強いのか?」
「強いに決まってるでござる!忍を愛し、理解している者は強いと相場が決まってるでござる。」
「ええ、それはもう、恥ずかしながら私達二人掛でも勝てないくらいには。それに二人とも刀を使いますので。強者の勝負は長引いても達人の勝負は一瞬でつきやすいですから。」
そう言いつつ雷を剣に纏い準備するシルビア。ルノアの発言は完全に無視されている。俺も炎魔法でシルビアの剣を強化する。ここまで強化すればクリストフ自慢のハンマーとかち合っても壊れないだろう。逆にここまでやっても向こうのハンマーが壊れるところが想像つかないのは恐ろしい。シルビアは掠っただけで致命傷になるんじゃなかろうか。
そういえばルノアは何処に行った?と思ったところで嫌な予感がして後ろに下がる。目の前に黒い物体が通過した。
「勘が良いでござるな。」
ルノアが苦無を投げてきていたらしい。わずかに香った匂いを嗅ぐとしびれ毒が塗ってあるらしい。
「さすが忍。秘伝の麻痺毒もお手の物ってか?」
「おぉ、お主も忍を愛するものであったか。」
「あんたたちと同類扱いするな!」
「くっ、精神的ダメージを負ったでござる...。」
泣きまねをしつつ煙玉を出して姿を眩ます。そんなことしてもこっちは匂いで場所が…っ、この煙玉臭い!
「ふっふっふ。視覚と嗅覚を封じさせてもらったでござるよ?これで某の居場所が分からないでござろう。」
「なめるな。獣人は耳も優れてるんだよ。」
「よーく知ってるでござるよ?というわけでほいっ。」
キーン。
「うおおぉぉ。」
これはうるさい。先に視覚と嗅覚を封じて聴覚に集中させたところで音爆弾とは。ご丁寧に高周波帯で仲間には影響が出ないようにしてるし。でも、
ヒュッ
避けられたか...。すばしっこいから隙を突いてけりをつけるつもりだったが失敗した。
「な、なんで大丈夫なんでござるか!?」
「わざわざ言うわけないだろう!」
忍者相手でこの手の絡め手を警戒しないわけがないだろう。サクラに教わった魔力感知を使って聴覚に集中させていなかっただけだ。
「って、きゃぁ!!」
お、シルビアが隙を突けたみたいだ。これでルノアは離脱した。
「おいお前ら、女の子相手に二対一やるとは卑怯じゃないのか?」
「戦いに卑怯もなにもないだろう?クリストフ先輩がきっちりとシルビアを押さえておかなかったのがいけないんだよ。」
シルビア対クリストフでは、シルビアが攻撃してクリストフがしっかりと受けきるといった、ぱっと見動きが無かったけどかなり高度な駆け引きがされていた。そして...。
「向こうも勝負がついたみたいですね。」
サクラが楓を倒しこっちにやってきた。一応クリストフの意志を確認する。
「どうします?続けますか?」
「おう、先輩の意地みせてやらぁ。」
ここからは一方的だった。シルビアが牽制し、俺がバフをかけ、サクラがとどめを刺す。元々シルビア一人と拮抗していたクリストフと、俺たち三人掛での対決ではある意味当然の結果だったのだ。
―――
<サクラ視点>
ルノアさんと戦えなかったのは心残りだけど無事親善試合が勝利で終わった。全員が動けるようにライアスが回復魔法を全員にかけて控室に戻る。
正直な感想を言うと三龍生は思っていた以上に強かった。観客から見るとあっさり決着がついたように感じたかもしれないが、実際のところ初見殺しが上手くハマったから早く決着がついただけだ。負けるとは思わないが苦戦してもおかしくなかっただろう。
「それにしても、冷気で相手の体を鈍くするとか怖いですね。」
そう、私は楓さんと戦いながら氷華の冷気を薄く流しわずかに相手方の動きを鈍らせていた。そのおかげでルノアさんの苦無の鋭さが無くてライアスは躱せたし、クリストフさんの動きが鈍くなり、シルビアはライアスのヘルプに行けたのだ!もちろんふたりはライアスの炎魔法で冷気対策をしていたから問題なく動けていた。
一方で私の方もシルビアの雷魔法の一部を貰って楓さんの居合の対処に使い、ライアスの炎魔法で攻撃力を強化して居合をしていた。
つまり、一見すると一対一と二対二の勝負だったが、実際には三対一と三対二といった構図で戦えていたため勝てたようなものなのだ。
「今回のMVPは私かな?」
「憎たらしいドヤ顔だが否定ができないのがむかつくな。」
失礼君二号がまた失礼なことを言っているが許してあげよう。なぜなら私はMVPだから!
「あはは、実際、サクラがいないと勝てない試合でしたからMVPはサクラでしょう。とりあえずお疲れ様でした。着替えたら一度訓練場に戻って挨拶に行きましょう。」
さすが王太子、よく分かってる。
―――
着替え終わり私達は訓練場に戻る。先に三龍生の三人が戻ってきていた。
「今日の勝者たちが帰ってきたでござるな。拙者らはすでに挨拶は終えてるのでござる。一言よろしくお頼み申す。」
先に始めていたらしい。楓さんが進行しているみたいだ。
「では私から。観客の皆様応援ありがとうございました。今日の親善試合は見た目以上に高度な駆け引きがあり見ごたえがあったと思います。正直サクラさん頼みのところがあったので私も精進していきたいと思いました。」
「次は俺だな。今回はあまり良いところを見せられなくて申し訳ない。次の機会があれば俺が魅せつけてやるから首を洗って待っとけ。」
「いや言い方よ。私達三人の中で勝手にMVPになりました。今日の試合は運が良かった場面も多かったので実力で勝てるように頑張っていきたいです!応援ありがとうございました!」
周りから歓声が上がる。こうして無事に親善試合は終わったのだった。
*****
Tips 忍者
忍者。その本質はしのぶもの。目立たないのに目立つ。気付かれないのに有名である。そんな忍者はみんな(サクラ)の憧れ。天空島にいると言われているがその真偽は明らかではない。
サクラ「声援の中に“はるひめ”ってよく聞こえたんだけど何か知ってる?」
カトレア「…サクラのことよ。」
サクラ「………え?」
カトレア「サクラのことよ。」
サクラ「...。」
カトレア「き、気絶してる...。」
次話は明日の17時投稿予定です。
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