閑話_クリスマスの共犯者
戦いの途中ですがクリスマスの特別編です!
本編とは関係ないので読み飛ばしても問題ありません。
ど、どうしてこうなった…。
私は床に落ちた真っ赤な帽子の上に膝をつく。
カトレアちゃんの魔の手が私の顔のすぐそばまで向かってきている。
完璧な計画だったはずなのに...。心の中でそう思いながら私は一人、冷や汗をかくのだった…。
―――
時は今朝まで遡る。
この世界には無いが今日はクリスマス!ということで元日本人として都合のいい神様と楽しいイベントが好きな私ことサクラ・トレイルはサンタさんの真似事をすることにした。
サプライズで用意したい気持ちと不要な物を渡したくない気持ちに挟まれた私は、母にプレゼントを買うと言ってカトレアちゃんを呼び出した。
「んで、どこに行くの?」
「母さまにプレゼントを買いに行くの。何買うか考えたいから付き合って。」
「今日はローズさんの誕生日だったかしら?」
「母さまの誕生日じゃなくてクリスマスだよ!」
「なにそれ?」
うーん。キリストって人の誕生を祝う日って言っても分からないよね。
「とりあえずプレゼントを送る日にしました!」
「いつもの奇行ね…。まぁ良いわ。安物でいいから私にも買ってくれるなら付き合うわ。…正直ローズさんならなんでも喜ぶと思うけどね。」
「それでも良いものあげたいからね。もちろんカトレアちゃんにもプレゼントあげるよ!何かお揃いにできる物買うね!」
カトレアちゃんという心強い仲間を引き入れた私は作戦が順調に進んでいることに内心笑みを浮かべた。
―――
お昼に2人で買い物に行く。カトレアちゃんの反応を気にしつつプレゼントを探した。
夕方になるまでショッピングを楽しんだ私達はお揃いのマグカップを買って寮へと帰る。
母へのプレゼントには快適に眠るための枕を買い、冒険者ギルドに依頼をだして手紙と一緒に母のところまで輸送して貰った。
―――
夜になり、クリスマスのイベントの本番が始まる!
そう!今宵、サクラことサンタさんはカトレアちゃんの部屋に忍び込むのだ!!(プレゼントを枕元にこっそりと置くだけです。)
入寮してからもちょくちょくお互いの部屋に遊びに行ったりしたことはあるが寮の規則として夜は自室にいなければならないため真夜中にカトレアちゃんの部屋に忍び込むのは初めてなのだ。(プレゼントを枕元にこっそりと…以下略)
昼のショッピングの時にカトレアちゃんの反応を観察し、カトレアちゃんが喜ぶプレゼントを探るため。反応の大きかったこの髪留めを選んだから準備は万端だ。だけど本番はここから、いかに気付かれずにカトレアちゃんの部屋に忍び込むか。とても厳しい任務になるだろう。(プレゼントを枕元に…以下略)
こうして極秘任務に従事した私は夜中、みんなが寝静まった頃にドアから外に出て寮の廊下を歩く。サンタ帽をかぶって髭を付け、念の為サングラスまで付けてるため廊下で誰かに見られても私だとは思わないだろう。誰に見られても私が怒られることはない完璧な計画なのだ!(プレゼントを…略)
無事にカトレアちゃんの部屋の前に着いた私は中の気配を窺う。正直よく分からなかったが培ってきたスパイの勘が言っている。カトレアちゃんは寝ていると!おそらく今が千載一遇のチャンスだろう。この瞬間を絶対に逃すわけには行かない!(プr...略)
扉を施錠する魔法に干渉して鍵を開ける。音が立たないように注意しつつ中に入っていく。ラッピングした櫛を扉や壁にぶつけないようにしてゆっくりと…ゆっくりと...。
完全に体が部屋の中に入り扉を閉める。こっそりと鍵をかけなおしてカトレアちゃんのベッドの方を向いて…。
そう、この瞬間に私は悟ってしまったのだ。今回の完璧な計画がすべて崩れ落ちてしまったことを...。(略)
「や、やぁ。僕はサンタさん。不審者じゃないよ...。」
「誰がサンタよ。あなたはサクラでしょう?」
そう。私の目の前でカトレアちゃんが仁王立ちしていた。しかも変装も見抜かれているらしい。
「サ、サクラッテダレノコトカナー。ボクはサンタさんだよ。そのサクラって子はシラナイカナー。」
「声が裏返ってるわよ。何よ変な帽子被って。驚かしに来たの?」
カトレアちゃんに帽子を取られそうになり防ごうとしたが失敗して床に落ちてしまった。
「ほら、その髪、やっぱりサクラでしょ。何してるのか吐きなさい。まだ認めないなら私にも考えがあるわ。」
抵抗しようとしたら影に拘束されてしまった私は帽子の上に膝をつく。カトレアちゃんの影魔法だ。私の抵抗もむなしく最後の砦だった髭とサングラスを取られてしまう...。極秘任務の失敗が確定した瞬間だった。
「カトレアちゃん...。ひどい...。せっかくのサプライズ計画だったのに...。」
「なによこの茶番は...。」
―――
拘束を解いてもらってから椅子に座る。ここは正直に話して櫛を今渡すか、誤魔化してから隙をみて櫛を部屋に隠して...。
「今素直に話せばサクラが部屋を出たことを言わないで上げるわ。私の部屋に来たことがもしばれても私が呼んだ共犯になってあげる。でも、もし誤魔化したら...。賢いサクラちゃんなら言わなくても分かるよね?」
はい。降参です。賢いサクラちゃんは白旗を上げるタイミングを間違えないのだ。外出がばれただけでもトイレ掃除一週間なのに、部屋に押し掛けたことがばれたら一か月間もトイレ掃除をしなくてはいけなくなる。それだけは回避したい。
―――
「・・・・・。かくかくしかじか...。という完璧な計画でした。そしてこれがプレゼントの櫛です。お納めください。」
「はぁ...。」
「カ、カトレアさん?」
今日の計画をすべて白状し、櫛を献上しようとしたらため息をつかれた。
「どこが完璧な計画よ!朝も不自然だったし、ショッピング中もずっとこっちを見てくるし。ショッピングからの帰り道もずっとそわそわしていたし、何か企んでたのはバレバレだったわよ。」
「そ、そんな。最初からばれてたなんて...。」
「さすがにプレゼントを貰えるとは思ってなかったけどね。...。まさか同じことを考えていたなんて…、サクラの影響を受けすぎかしら?」
後半は小声で聞こえなかったが同じことってなんだろう?
「はい、これ。髪を漉く用の櫛よ。サクラに合うと思って買っちゃったの。お揃いにできないと思って別で渡そうと思ってたんだけど...。まさかサクラも私に櫛を買ってくれるとは思ってなかったわ。きゃっ!」
思わず照れてるカトレアちゃんに抱き着く。
「ありがとう!とっても嬉しい!せっかくだし早速使おうか!そして今まで以上にふっかふかになった尻尾をモフるのだ!」
「はぁー、せっかくサクラが良いことしてくれたと思って嬉しかったのに自分の欲に率直なだけだったの?台無しよ!!」
「冗談だよー。喜んでほしくて買っただけだもん。」
「実のところは?」
「な、七三くらいかな?もちろん七が喜んで欲しかった方だからね!」
「「あはははは」」
思いっきり笑いあった私達は互いの髪を漉きあって、カトレアちゃんの尻尾を漉いて、ふかふかになったモフモフに包まれつつ眠りについていった...。
翌朝部屋にいなかったことがばれた私は共犯者となったカトレアちゃんと一週間のトイレ掃除をすることになりました...。
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Tips? 七龍学園入寮規則 第七項 夜間の外出を禁ず
寮生活をする生徒は二十二時から翌六時までの間、各々の部屋に在室する必要がある。
やむを得ない事情があり外出する必要がある場合、学園に事前に申請する必要がある。無断で外出した際には罰として一週間の寮のトイレをすべて掃除しなければならない。また、他生徒の部屋に無断で入室した場合、罰の期間を一か月とする。無断でない場合、部屋主の生徒を共犯者として扱い、共犯者は主犯の生徒と共に一週間のトイレ掃除をしなければならない。
シルビア「先日、女子寮で不審者を見かけたとの通報がありました。不審者は白い髭を生やしており、真っ赤な姿をしていたそうです。注意してください。」
カトレア「...。サクラ、これって...。」
サクラ「聞こえなーい。私には何も聞こえなーい。」
次話は今日の17時投稿予定です。
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